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【連載】ローマで「守備的」のレッテルを剥がすジョゼ・モウリーニョ | 元日本代表監督アルベルト・ザッケローニのセリエA探究 第22回

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2021-09-13-zaccheroni (C)Getty Images

ボールをつなぐサッカーを前面に

前回の当連載では開幕節を振り返り、気になったポイントをいくつか挙げました。今回は第2節の情報も踏まえて、サプライズを起こしたチームを掘り下げていきます。

まずはポジティブな方から。触れるべきチームはローマです。

ご存じの通り、ローマは今シーズンからジョゼ・モウリーニョ新体制で戦っています。新しい指揮官がやって来たチームというのは、往々にして、選手に新たなモチベーションが生まれるもの。指揮官交代で戦術やシステムに手が加えられることも多く、それによりトレーニングでの集中力がグッと増す。こうしたプラス作用が期待できたりします。

その想定できる要素を差し引いても、新生ローマは予想をはるかに上回るパフォーマンスを披露しました。

ホームでの開幕戦でフィオレンティーナを3-1で破ると、2節はアウェーで昇格組のサレルニターナに4-0で快勝。これほど最高のスタートを切るなんて予想していなかったので、良い意味でのサプライズになりました。

特に2試合で7得点を奪った攻撃力に、驚いたファンも多いのではないでしょうか。モウリーニョはディフェンシブなサッカーを展開する監督。世間的にはそういったイメージが先行していますからね。

ただ、今のサッカー界にそんな過去のレッテルなど意味はありません。開幕2節の全20カードで生まれた計60得点という数字が示すように、セリエAは攻撃的なサッカーが主流です。

モウリーニョもそんな時代の流れにきっちり対応している。ローマを見てもボールをつなぐサッカーを全面に押し出していますから、そう言い切っても問題ないでしょう。

とはいえ、ローマが優勝争いに加わる存在になりえるかと問われれば、そこには疑問符が付きます。

少なくとも同じく開幕2連勝を飾った他の4チーム、ラツィオ、インテル、ミラン、ナポリと比べると、戦力的には少しレベルが落ちる。それが私の見解です。

チェルシーから加入し、すぐに攻撃の軸として存在感を見せたタミー・エイブラハムにしても、出場はまだ2試合に出場しただけ。正当な評価を下すには時期尚早です。

イングランド代表歴もあるこの23歳は、開幕戦で2アシスト、第2節ではセリエA初ゴールをマーク。上々な滑り出しを見せましたが、シーズンを通してこの活躍が続けられるかは未知数です。

決して下馬評の高くないローマを、はたしてモウリーニョはどこまで引き上げられるのか。まさに彼の腕の見せどころとなるでしょう。

メニャンの特徴を活かす新戦術

2021-0727-Mike Maignan-AC Milan

続いて目を引いたのは、ミランです。開幕2連勝を飾った5チームの中では唯一、監督交代がなかったチームですね。

ステファノ・ピオリ監督の続投により当然、さらなるレベルアップは期待されていました。

昨シーズンまでのミランと言えば、まず最終ラインからアタッキングサードにボールを運び、そこからボールをつないで崩すスタイルが特徴でした。

今シーズンはその確立された従来のパターンに、さらなるアップデートが加わりました。少ない手数で一気にゴール前に迫る、縦に速い攻撃スタイルがプラスされたのです。

前回の連載でも触れましたが、新守護マイク・メニャンの存在が大きく影響しています。リーグアン王者リールからやって来たこのフランス人は、高い身体能力に加え、足元の技術に優れたゴールキーパーです。

ピオリはその特徴を決して見逃していません。メニャンの両足から放たれる素早い正確な前線へのフィード。この飛び道具が攻撃の新たなスイッチとして加わり、相手にとっては予測不能な状況がより多く生まれています。

開幕2試合を観る限り、新戦術もすっかりチームに浸透している印象。しかも昨シーズンの高いパフォーマンスレベルを維持しています。実はそれこそが一番の驚きでした。

強いて課題を挙げるなら、従来のスタイルと新オプションの使い分けでしょうか。

というのも、ピオリが求める従来のビルドアップは、サイドを主要経路とするのが大きな特徴。その中で大きな役割を果たしているのが、左サイドバックのテオ・エルナンデスです。

ただ今シーズンは新たな縦のオプションが加わった影響で、テオの縦への推進力を生かし切れていない。そんなシーンも散見されます。

2つのスタイルを状況に応じていかに使い分けるか。試合を重ねる中で戦術がより磨かれれば、ミランはさらに高いレベルへとたどり着くことも可能でしょう。

良い形で奪えないユーヴェ

dybala-juventus

一方でネガティブな驚きにも触れなくてはいけません。序盤から躓いたユヴェントス、となるでしょうね。

王座奪回を目標に掲げる今シーズンのユーヴェですが、ウディネーゼとの開幕戦を2-2で引き分けると、ホームにエンポリを迎えた第2節ではまさかの0-1の敗戦。序盤から転んでしまう格好となりました。

2試合で勝ち点わずか1という結果ももちろんですが、より心配なのは、むしろゲーム内容です。ユーヴェらしさがまったく感じられず、低調。選手たちはみな苦悩の表情を浮かべていましたから。

なかでも深刻な状況なのが中盤です。アンドレア・ピルロが率いた昨シーズンのチームもそうでしたが、今のミッドフィルダー陣はプレーエリアがあまりにも狭すぎる。

アーロン・ラムジー、アドリアン・ラビオ、ロドリゴ・ベンタンクール、ダニーロ…。全員が全員です。ゆえに、中盤で良い形でボールを奪えずに、効果的な攻撃に繋げられない。負の連鎖です。

エンポリ戦などは中盤が完全に機能不全に陥り、最前線のパウロ・ディバラが位置を下げてボールをもらいにくる始末でした。

ディバラはペナルティーエリア付近で力を発揮する典型的なアタッカーです。そんな彼が、中盤まで下がって攻撃の組み立てに参加するなんて…。まったくのナンセンスです。

問題は至ってシンプル。誰が勝たせることのできる存在なのか。それを今一度、確認して整理すべきでしょう。

試合に勝つためには、ゴールが必要。当然ですね。では、チーム内で得点を決められる選手は誰なのか。そこにつきます。

ジョルジョ・キエッリーニ? レオナルド・ボヌッチ? ダニーロ? ラムジー? 違いますよね。クリスティアーノ・ロナウドが去った今、より大きな期待がかかるディバラ、そしてアルバロ・モラタ、フェデリコ・キエーザといったアタッカー陣です。

彼らの力を最大限に引き出すための布陣、プレースタイルは何がベストなのか。そう逆算していけば、自ずと答えが導き出されるはずです。

中盤に言及すれば、広いエリアをカバーし、ゴール前にボールを運ぶ〝働き蜂〟のような存在が絶対に不可欠。当然、監督であるマッシミリアーノ・アッレグリはその辺りはきっちり把握していることでしょう。

今後どう修正を加えてチームを立て直すのか。百戦錬磨のアッレグリだけに、ここからどのような復調に導くのか逆に楽しみです。

2021-22シーズンのセリエAはまだ始まったばかり。ユーヴェの巻き返しを含め、今後もきっとまだまだ多くのサプライズが生まれるでしょう。

インタビュー:アルベルト・コスタ
翻訳・構成: 垣内一之

訳者プロフィール/1998年にイタリアに移住し、約8年間、中田英寿、中村俊輔、柳沢敦ら日本人選手を中心にセリエAを取材。2006年のドイツ・ワールドカップ後に帰国し、現在は日本代表、Jリーグを中心に取材を続けている。

アルベルト・ザッケローニのセリエA探究

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