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【連載】「1ゴールでもポジティブ」なミランと「嫌なムードを払拭した」インテル | 元日本代表監督アルベルト・ザッケローニのセリエA探究 第21回

読了時間 8分
2021-09-06-zaccheroni (C)Getty Images

今週末からセリエAが再開しますね。その前に、開幕節をおさらいしておきましょう。あくまで個人的な視点になりますが、気になったポイントをいくつか挙げていきます。

まず目を引いたのが、ゴール数の多さ。開幕全10カードで計30ゴール。1試合平均で3つのゴールが生まれました。サッカーの醍醐味はなんと言ってもゴールシーンですから、今後への期待を抱かせる数字と言えるでしょう。

これは各チームが攻撃的なスタイルを貫いている何よりの証拠です。プレシーズンマッチでも多くのゴールが生まれましたが、その傾向が本番でもはっきり表れました。

私がセリエAで指揮を執っていた頃は、アタッカーの個人能力に頼る単調なサッカーが主流でした。しかし最近はほとんどのチームが、前線に人数をかける攻撃的なスタイルを標榜しています。

戦術のバリエーションもここ数年でグッと増えました。9割近いチームがまったく同じような守備的サッカーを展開していたのは、もはや遠い昔の話になりましたね。

いまやスモールクラブの監督でさえ、自陣で守備を固めることはほとんどしません。それぞれの特徴を生かしたポジティブなサッカーを見せようとします。

時代とスタイルの移り変わりが、開幕節での大量得点につながった。そう言い切るのは決して間違いではないでしょう。

カルチョ(イタリアサッカー)はここ数年で劇的な変化を遂げています。攻撃的なスタイルを好む私にとっては、何より待ち望んでいた状況ですよ。

ピオリが採り入れた新戦術

2021-08-23-milan-stefano pioli-serie A

もっとも印象に残ったチームをあげましょう。サンプドリアとのアウェーゲームで1-0の勝利を収めたミランです。

得点数の多さに触れておきながら、いわゆる堅い展開になったゲームの勝者が印象に残りました。言うまでもなく、サンプドリアの守備がしっかりしていました。麻也(吉田)がフル出場したチームは、しぶとい守備で一歩も引きませんでしたね。

私が驚いたのは得点数ではありません。ミランのプレースタイルに変化が感じられたところです。

昨シーズンまでのミランは、鋭い切り替えから敵陣でボールを奪い返し、ショートカウンターを繰り出すのが最大の特徴でした。

それがサンプドリア戦では従来のパターンに加え、自陣から前線へ縦パスを素早くつなぐシーンが幾度となく見られたのです。

サンプドリア対策だったのか、それとも監督であるステファノ・ピオリが今シーズンから導入した新たな試みなのか。それを見極めるには、今後の戦いを注視していく必要があるでしょう。

もっとも、個人的にはピオリが意図的に採り入れた新戦術と感じました。パリ・サンジェルマンに移籍したジャンルイジ・ドンナルンマの後釜として加わった新守護神、マイク・メニャンの存在が大きく影響している。そう見て取れたからです。

リーグアン王者のリールから移籍してきた26歳のこのフランス人は、高い身体能力はもちろん、足元の技術にも優れた優秀なゴールキーパー。サンプドリア戦の序盤でも、彼の両足から放たれた正確な前線へのロングフィードで幾度となくチャンスが生まれていました。

一見、中盤をはぶいた省エネサッカーのように感じ取れるかもしれませんが、おそらくそうではないでしょうね。メニャンの正確なキックという特徴を生かし、攻撃オプションを増やす。ピオリには明確な狙いがあったはずです。

若い力が爆発したミランは昨シーズン、チームとして大きな飛躍を遂げました。序盤では首位にも躍り出ましたね。2010-11シーズン以来のスクデットは残念ながら逃しましたが、最終的に2位という好成績で終えています。

ピオリが新オプションにトライできたのも、昨シーズンに確立した自分たちのスタイルに自信を持っているからでしょう。

ゴール数こそわずか1でしたが、開幕戦のミランからはかなりポジティブな印象を受けました。今シーズンはより大きな期待が持てそうです。

カウンター一辺倒だったインテルが

I giocatori dell'Inter esultano contro il Genoa

その他の対戦カードに関しても、順当な結果が多かった印象があります。連覇を狙うインテルは、ホームのジェノア戦で4-0の快勝を収めました。

ご存じのとおり、11年ぶりのスクデットをもたらした監督のアントニオ・コンテが今夏にインテル去りました。

ただ、開幕戦を観た感想では、コンテがこの2年間で植え付けた勝利への強い執念は、脈々と受け継がれている印象です。

そしてプレー面では、新たな試みも垣間見えました。新監督としてラツィオからやって来たシモーネ・インザーギが、カウンター一辺倒だった昨シーズンまでの攻撃に、パスという新たなエッセンスを加えたんです。

鋭いカウンターに加え、パスでつなぐ新たなスタイルの導入。この2つを上手く併用できれば、インテルはもう一段階上のレベルに到達することが可能でしょう。

とはいえ、インテルにとって何よりも大きかったのは、開幕戦で勝てたことでしょうね。

このオフにチームを去ったのは、何も監督のコンテだけではありませんでした。アクラフ・ハキミがパリ・サンジェルマンへ、そしてロメル・ルカクがチャルシーへと相次いで移籍しました。

2人の主軸を失い、チーム内には小さくない不安が渦巻いていたはず。そんな嫌なムードを払しょくするためにも、開幕戦での勝利はいわば必須でした。その中での4-0という快勝です。勝点3以上の重みがあったのではないでしょうか。

エイブラハムがいきなり活躍の理由

2021-08-22-tammy Abraham-Roma-Serie A

ミラン、インテルと話してきましたが、昨シーズンの上位7チーム、いわゆるセッテソレッラ(7姉妹)での接戦が今シーズンも予想できます。

インテル、ミラン、アタランタ、ユヴェントス、ナポリ、ラツィオ、ローマの7チームですね。この中で唯一、躓いたのがアウェーでウディネーゼと2-2で引き分けたユヴェントスです。

躓いたと言っても、シーズン初戦をドローで終える。これはどんなに強いチームにも起こりえること。しかも監督が代わったばかりですから、なおさらです。それほど心配する必要はありません。

ジョゼ・モウリーニョが新監督に就任したローマも良いスタートを切りました。ホームでフィオレンティーナに3-1ときっちり勝利を収めています。

その中で際立った活躍を見せたのが、チェルシーから新しく加わったタミー・エイブラハム。イングランド代表歴もあるこの23歳は、加入直後だったにもかかわらずいきなり先発し、2アシストの活躍を見せました。

チェルシーでは控え扱いだった彼が、いきなり活躍できるセリエAのレベルはどうなのか。そんな疑問を抱いたファンもいるでしょう。

たしかにそういった見方もできるかもしれません。ですが冒頭でも触れたように、今は攻撃的なサッカーがセリエAの主流です。

しかもディフェンダーのマークは以前ほど厳しくありません。そういった背景も、エイブラハムが移籍後いきなり真価を発揮できた理由として挙げられるかもしれませんね。

もちろん、この活躍は彼の高い技術、実力があってこその話しです。

エイブラハムのような楽しみな若い逸材も加わり、より多くのゴールシーンが期待できる今シーズンのセリエA。決して見逃せませんよ!!

インタビュー:アルベルト・コスタ
翻訳・構成:垣内一之

訳者プロフィール/1998年にイタリアに移住し、約8年間、中田英寿、中村俊輔、柳沢敦ら日本人選手を中心にセリエAを取材。2006年のドイツ・ワールドカップ後に帰国し、現在は日本代表、Jリーグを中心に取材を続けている。

アルベルト・ザッケローニのセリエA探究

● 第19回 ユーヴェの新シーズンを占う「アッレグリ監督の再任に賛成だ」
● 第20回 古巣ミランへの提言「ジルーとイブラの共存は可能だ」

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