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【連載】一つに纏まっているミランと強みをすべて失ったユヴェントス | 元日本代表監督アルベルト・ザッケローニのセリエA探究 第23回

読了時間 8分
2021-09-27-zaccheroni (C)Getty Images

ケアとロマニョーリの相性は…

セリエAの第4節で、名門の直接対決が早くも実現しましたね。9月19日のユヴェントス対ミランです。

開幕1分け2敗と苦しいスタートを切ったユーヴェに対し、3連勝と最高の滑り出しを見せたミラン。対照的な状態でぶつかった一戦はご存じのように、1-1のドローで終了しました。

今回はこのビッグマッチを振り返りながら、両チームの今後を占ってみましょう。

まずはミランから。試合の入りが良くなかったですね。これまでの勢いに少しブレーキがかかっていた、そんな印象さえ受けました。実際、開始早々の4分には、カウンターからアルバロ・モラタに決められ、先制を許しています。

では、スタートで躓いた原因は何か。その1つはステファノ・ピオリ監督がフォーメーションをいじったことでしょう。私はそう分析しています。

というのも、ピオリは最終ラインを組み替えてこの試合に臨みました。センターバックのフィカヨ・トモリを右サイドバックに移し、アッレシオ・ロマニョーリとシモン・ケアをセンターで組ませたのです。

そのケアですが、ベストコンディションはありませんでした。彼のプレーを観れば、それは誰の目にも明らか。その証拠に、前半35分には筋肉系のトラブルで交代を強いられています。

ただ、ケアの体調云々だけが問題ではないと言えます。私の考える問題点は、センターバックのコンビネーションです。

あくまでも個人的な見解ですが、ケアとロマニョーリの相性は残念ながら良くない。ともにスピードに欠け、互いを補い合えるパートナーとは決して言えません。

モラタに決められた失点シーンは、まさに2人の相性の悪さを露呈した格好となってしまいました。ここ最近、ミランがあのようにいとも簡単に速攻から失点を喫した記憶はありませんよ。

慣れ親しんだケアとトモリ、またはトモリとロマニョーリの組み合わせだったなら……。もしかしたら防げた失点だったかもしれません。

試合の入りで少しバタついてしまったのは、普段と少し違った選手の配置が影響した。私にはそう映りました。

スクデット争いに絡むと確信

Pioli e Tomori esultano per una vittoria del Milan

個人に目を移せば、フランク・ケシエの状態の悪さが気になりました。序盤に首位に立つなど躍進を遂げた昨シーズンのミランで、大きな原動力となっていたのがこのコートジボワール代表MFです。

豊富な運動量に、強靱なフィジカル。それこそ昨シーズンのミランの中盤は、彼の存在なくしては成り立たなかった。しかし、今シーズンはケガで出遅れた影響もあり、まだ昨シーズンのパフォーマンスにはほど遠い状態です。

左サイドバックのテオ・エルナンデスも、まだベストな状態にはなさそうですね。その影響もあってか、同サイドでコンビを組むラファエウ・レオンも最後までゲームに入り込めなかった印象がありました。

彼ら2人が主戦場とする左サイドからの仕掛けは、ミランの大きな武器です。ユーヴェ戦ではその強みが発揮されず、攻撃の組み立てにも苦労したのではないでしょうか。

もちろん、ポジティブな面もたくさんありましたよ。その1つが、劣勢を跳ね返した反発心。選手は誰一人として最後まで諦めませんでした。

そして後半31分にアンテ・レビッチのゴールで追いつき、最終的に勝ち点1を奪取。これはかなりポジティブな結果と言えます。

チームが一つに纏まっている何よりの証拠でしょう。昨シーズンに積み上げられた自信が、今シーズンにもしっかりと繋げられている印象です。

それこそケガで出遅れたケシエ、ケアらの状態が上がってくれば、チームの勢いもまたグッと増してくるはず。今シーズンもスクデット争いに絡むのは間違いない。ユーヴェ戦のミランを観て、そう強く確信しました。

中盤がまったく機能していない

続いてユヴェントス。こちらは逆にかなり深刻な状況と言えます。まず選手のプレーからは、まったく自信が感じられない。

ユーヴェは伝統的に、ピッチ上で見せる憎たらしいほどの“傲慢さ”も強みの1つ。しかしながら、ミラン戦に臨んだチームはその片鱗さえ覗かせませんでした。

幸先よく先制した後はゲームをコントロールすることに精一杯。選手からはほとんど伝わってきませんでしたよ、「絶対に勝つ」といった執念が。

技術的な観点で見れば、中盤がまったく機能していない。優勝請負人として2年ぶりにカムバックを果たしたマッシミリアーノ・アッレグリ監督ですが、そんな彼も今、中盤に関してはかなり頭を悩ませているのではないでしょうか。

選手起用も含め、解決策さえまだ見つかっていない印象です。その最たる例がアドリアン・ラビオ。ミラン戦では中盤の左サイドで起用されましたが、慣れない位置でのプレーに、最後まで何をすれば良いのかまったく理解できていない様子でした。

そういった戦術的な問題ももちろんありますが、立て直しが急務となるのは、やはりメンタル面でしょう。

アッレグリは5年の在籍で一度もスクデットを逃さなかった第一次政権下では、メンタル面でかなり強固なチームを築き上げました。しかし、彼がチームから離れていたこの2シーズンの間に、その鋼のメンタルがほとんど崩れてしまった印象です。

アッレグリはどのような“荒治療”を施すのか

2021-09-23 Juventus Allegri

苦しいスタートを切ったことも影響しているのでしょうが、それにしても今のチームは自信を完全に失っています。

アッレグリはまずメンタル面で立て直しを図ること、そしてチームに再び強いスピリットを植え付けることが必須でしょう。

ミラン戦後、アッレグリは「交代でミスを犯した。(失点前に)ディフェンシブな選手を入れるべきだった」とコメントしています。

私からすれば、それは見当外れ。追いつかれた原因は、何も交代策のミスではありません。選手のメンタルの問題です。

チーム全体がポジティブな思考でないときは、試合中もズルズルとラインが下がってしまうものです。そんな苦しい状況で、大きな役割を求めたいのが経験豊富なベテラン勢。今のチームで言えば、レオナルド・ボヌッチ、ジョルジョ・キエッリーニといった選手ですね。

ただそんな輝かしいキャリアを誇る彼らでさえも、今は頭がクリアな状態でプレーできていない。これでは勝利するのも困難を極めるでしょう。

クオリティ、パーソナリティ、傲慢さ…。今のユーヴェは、これまでチームのベースとなってきた強みをすべて失ってしまった印象さえ受けます。

百戦錬磨のアッレグリとはいえ、立て直しは決して簡単な作業にはならなさそうですね。今後、どのような“荒治療”を施すのか。彼の手腕に疑いの余地はありませんから、お手並み拝見といきましょう。

インタビュー:アルベルト・コスタ
翻訳・構成: 垣内一之

訳者プロフィール/1998年にイタリアに移住し、約8年間、中田英寿、中村俊輔、柳沢敦ら日本人選手を中心にセリエAを取材。2006年のドイツ・ワールドカップ後に帰国し、現在は日本代表、Jリーグを中心に取材を続けている。

アルベルト・ザッケローニのセリエA探究

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