【欧州・海外サッカー 特集】2026年ワールドカップ出場を決めているイングランド代表。しかし、トーマス・トゥヘル監督が答えを出さなければいけない課題も多く残っている。
2026年ワールドカップ欧州予選を突破し、本大会出場を決めたイングランド代表。予選の成績は8戦全勝、22得点無失点と完璧な成績を残している。主将ハリー・ケインも「史上最高のチームだ」とし、「僕らは優勝候補の一角として本大会へ挑む。それは受け入れなくちゃいけない。新監督と共に素晴らしいものを築き上げた1年を経て、2026年へ向けて前へ進んでいくだけだ」と胸を張る。
確かに今のスリーライオンズにはポジティブな雰囲気が漂っており、彼らが予選で見せたパフォーマンスを見れば、1966年大会以来となる優勝も現実的な目標かもしれない。
しかしその一方で、大会までの7カ月の間に解決しなければいけない問題も、確かに存在するのだ。
トゥヘルは就任から約1年間で、イングランドのメディアは基本的にジュード・ベリンガムを中心に回っていることを学んだかもしれない。それはプレーするか否かに関わらず、だ。10月のメンバーから外れたこと、そして11月はその起用法がメディアの話題の中心であり続けた。
そんなベリンガムはセルビア戦は途中出場となったが、アルバニア戦では先発に復帰。印象的なプレーを見せている。しかし最も注目されたのは、交代を命じられた後の反応だった。明らかに不満げな表情を見せており、即座にメディアによって様々な見解が報じられている。
トゥヘルは選手の反応について問われると、「確認する必要がある」とコメント。あまり話題を大きくすることを望んでいない。その一方で、「我々は基準、献身、そして互いへの敬意を重んじる。誰かが腕を振り回しているからといって、我々の決定を変えることはない」と述べ、チームが最優先であるという自身の信条を繰り返した。
競争心を全面に出すベリンガムの扱いについて、トゥヘルはピッチ内外の両面でまだ答えが出せていないのかもしれない。それでもそのポテンシャルやメディアの注目度を考えれば、真っ先に着手しなければいけない課題となりそうだ。
アルバニア戦でイングランド代表での通算得点数を「78」まで伸ばし、国際大会におけるゴール数であのペレを超えたケイン。今回の予選でも8試合中6試合でネットを揺らし、トゥヘル体制発足後では9試合で9ゴール。総得点の34%を占めている。絶対的なエースストライカーであり、今のスリーライオンズは彼中心に回っている。
しかしその一方で、疑問は大きくなるばかりだ。「もしケインが負傷したらどうなってしまうのか?」、この答えは未だに出せていない。
イングランドはケインへの依存度が高まり続けており、ガレス・サウスゲート前監督時代には背中の負傷の影響で精彩を欠いていたにも関わらず、EURO2024でも全試合で起用している。もちろん、キャリア最高の状態にある彼を信頼するのは当然だが、バイエルン・ミュンヘンでの1シーズンを経てワールドカップを戦うときには疲労が蓄積している可能性が高い。彼の代役を準備することは、間違いなく必要になるだろう。
イングランド代表OBコナー・コーディは先日、『BBC』で「ハリー・ケインの不在など考えたくないよ」と語っていたが、それはトゥヘルも同じだろう。今回の招集でも、オリー・ワトキンスが負傷離脱した後、代わりのストライカーを招集しなかった。フィル・フォーデンの“偽9番”を試していたが、ケインをいかに休ませるかは今後の大きな課題になりそうだ。
ジョン・ストーンズは負傷から回復後、イングランド代表の過去4試合に先発出場している。来年6月までフィットネスを維持できれば、おそらく彼が守備陣の軸となる。問題は、彼とコンビを組むのが誰になるかだ。
ダン・バーンはアルバニア戦で何度か守備面での弱点が露呈し、主要大会での経験不足も気になるところ。一方でマーク・グエイは、EURO2024でも安定したパフォーマンスを見せており、クリスタル・パレスでもハイレベルなプレーを続けている。11月はケガのため不在だったが、現状では彼がポジション争いをリードしているだろう。
その他、エズリ・コンサはグエイが不在だったセルビア戦でアピールに成功。本大会メンバーに選出される可能性は高い。またアルバニア戦に出場したジェレル・クアンサーは、現状では第4の選択肢となっている。
サイドバックに関しては、トゥヘルが最も頭を悩ませているポジションかもしれない。
初陣となった3月のアルバニア戦でゴールを奪い、9月と10月の活動でも起用された19歳のマイルズ・ルイス=スケリーだが、アーセナルではリッカルド・カラフィオーリの後塵を拝す形で出場機会が減少。今季は未だプレミアリーグで先発できていない。その一方で、マンチェスター・シティで躍動するニコ・オライリーが11月の活動で代表デビュー。確かな存在感を発揮した。ルイス=スケリーの状況が変わらなければ、おそらくオライリーが左サイドバックの1番手だ。
一方で右サイドバックでは、負傷もあってレアル・マドリーでなかなかコンディションが上がらないトレント・アレクサンダー・アーノルドが直近3回連続でメンバー外に。ティノ・リブラメントも膝をケガしている。リース・ジェームズは信頼できる選択肢だが、彼の負傷歴を見るとやや不安は残る。トゥヘルはジェームズの健康、そしてアレクサンダー=アーノルドの奮起に期待しているかもしれない。
3月以来となる代表復帰を果たしたフィル・フォーデンだが、評価は様々だ。セルビア戦ではエベレチ・エゼのゴールをアシストし、アルバニア戦でも輝きを放つなど、いずれも途中出場で確かな存在感を示した。だが一方で、マンチェスター・シティの主力選手が両試合でベンチスタートになったことは、大きな注目を集めている。
トゥヘルは今月の招集で、フォーデンとベリンガムについて「中核的な役割」と明言していたため、フォーデンの先発がなかったのはサプライズだ。一方で、ケイン、フォーデン、ベリンガムの同時期用は「現時点では無理」と明確にしている。何よりもバランスを重視する指揮官の言葉通り、3人がピッチに揃ったのはアルバニア戦の22分間のみである。
ここから読み取れるのは、現時点でフォーデンはケインとベリンガムより優先度が低いということ。一方のフォーデン自身は、途中出場など意に介さずに好プレーを続けている。途中出場で“ジョーカー”的な役割として彼が出てくれば、どんなチームにとっても脅威になるだろう。しかし、このまま先発を外れることになれば彼の状況に関する質問は止まないだろう。
EURO2024では左サイドの選択肢が限られたことで機能不全に陥ったが、今このポジションの選択肢は豊富だ。マーカス・ラッシュフォードはバルセロナで調子を上げており、エゼは過去3試合の途中出場でいずれもゴールをマークした。アーセナルでも主力として輝いている。また、ケガで今回の招集を逃したアンソニー・ゴードンも、10月の試合では確かな能力を発揮している。
ラッシュフォードの復活により、左サイドのポジション争いは激化している。おそらくトゥヘルの好みとしては、ラッシュフォードとゴードンが先発を争い、エゼはより中央のポジションでも試されながら途中出場で試合の流れを変える役割を担うことになるだろう。前回のEUROでは機能不全に陥ったこのポジションに豊富な選択肢を持てることは、大きなプラスになりそうだ。