今季も開幕から激しい戦いが繰り広げられるプレミアリーグ。現地時間1日~3日にかけて第10節が開催されるが、この第10節を終えて各メディアのヘッドラインを飾りそうな話題を予想してみる。
文=トム・マストン
厳しい批判を浴びていたアルネ・スロットは、カラバオカップのクリスタル・パレス戦では大半の主力を休ませた。結果としてアンフィールドで0-3と完敗。若手選手中心のメンバーで挑んだことにより、事実上この大会を「諦めた」とも指摘されている。直近公式戦7試合で6敗。彼の立場は危うくなっている。
今この状況を打開するには、とにかく勝利を掴むしかない。しかし1日には調子を上げる難敵アストン・ヴィラと対戦し、さらに4日にはチャンピオンズリーグでレアル・マドリーと激突する。そして9日には、マンチェスター・シティとの一戦だ。11月のインターナショナルウィークまで、対戦相手は非常に厳しい。今のリヴァプールでは、今後10日間で7敗目、8敗目、9敗目を喫しても不思議ではない。
スロットは解決策を模索し、フランクフルト戦では4-4-2を採用、パレス戦では3-4-3も試していた。今夏の超大型補強でスカッドは豪華になったが、バランスが崩れて未だ最適解を見いだせないでいる。
残念ながら、今後の日程や今の状態を考慮すれば、リヴァプールの苦境は続く可能性が高い。圧倒的な強さでプレミアリーグを制覇してから6カ月、ついに「解任」という言葉がメディアで踊り始めるかもしれない。
そして“ビッグ6”の指揮官で批判されているのはスロットだけではない。クラブワールドカップ優勝で絶賛されたエンツォ・マレスカも、その期待が大きかった分、厳しい批判に直面している。前節は好調サンダーランドに劇的勝利を許し、9位まで順位を落とした。カラバオカップではなんとか勝利したものの、決して前向きになれる内容ではなかった。
そんな中で、チェルシーは宿敵トッテナムと対戦する。2019年の開場以降、トッテナム・ホットスパー・スタジアムでの8試合では6勝、直近の2勝はいずれも4ゴールだ。得意とするスタジアムでの一戦は「特効薬」になるかもしれないが、両者の直近のパフォーマンスを見ると楽観はできないだろう。
この試合の重要性や過去の両者の対戦を見れば、再び荒れた展開が予想される。すでに今季3人の退場者を出しているチェルシーは、無事に11人で試合を終えられるだろうか?もし再びレッドカードが出てしまえば、指揮官がチームのコントロールを失っていると判断されてもおかしくはない。
リヴァプールとチェルシーが苦戦している一方で、不調に喘いでいたマンチェスター・ユナイテッドが3連勝。一気に6位まで順位を上げ、チャンピオンズリーグ出場権争いに名乗り出た。
そしてこの間、ブライアン・エンベウモは3ゴール1アシスト。爆発的な推進力と献身的な守備、アマド・ディアロとの関係性などチームへの影響力を考えれば、6500万ポンドという移籍金は安価にすら見えてきている。
次の相手は、18位に沈むノッティンガム・フォレストだ。未だ守備が整理できていないチームを相手に、エンベウモは水を得た魚のように躍動するだろう。ここでも圧倒的な成績を収めれば、「エンベウモこそシーズン最高の補強選手」との声が上がり始めることになりそうだ。
一方マンチェスターのもう1つのチームは、アーリング・ハーランドという絶対的なエースの驚異的な得点力で緩やかに復活し、荒れた序盤戦でここまで5位と好位置につけている。しかし、第10節は決して簡単な試合にならないだろう。そう、相手は彼らを上回る2位に浮上したボーンマスだ。
開幕戦こそリヴァプールに敗れたが、現在8試合無敗中。夏の移籍市場で正守護神に主力
DFを4人中3人も失ったにも関わらず、アントワーヌ・セメンヨや期待の19歳FWイーライ・ジュニア・クルーピが躍動中。そして、アンドニ・イラオラは“本物”であることを十二分に証明している。
マンチェスター・シティの一方的な展開になる可能性は低く、ボーンマスが敵地で1ポイントを掴んでも全く不思議はない。そしてそれ以上の結果を残せば、ジョゼップ・グアルディオラの後任候補と噂されるイラオラの名前はさらに注目されることになりそうだ。
開幕9試合で7勝1分け1敗、16ゴール3失点。今のプレミアリーグでは一つ頭抜けた完成度を誇り、隙がなく安定した戦いで勝ち点を積み重ねていくアーセナル。リヴァプールの苦戦によって得た最大のチャンスを着実にものにしており、それは第10節も続くことになるだろう。
確かにバーンリーも連勝中と調子を上げつつあるものの、両者のスカッド層や近年見せてきたレベルの差は明らか。世界最高レベルの守備陣が失点を重ねることは想像できず、この試合でシーズン7度目のクリーンシートでの白星を挙げることになりそうだ。
ミケル・アルテタと選手たちは第10節を終え、マンチェスター・シティとリヴァプールに9ポイント差以上をつける可能性もある。こうなれば、多くの識者から「今季の優勝はアーセナルで決まりだ」との声が上がることになるだろう。
一方で順位表の下を見れば、17位に沈むフラムと未だ勝利がなく最下位のウォルヴァーハンプトンが対戦する。
フラムは昨季上位チームを次々に撃破し、欧州カップ戦出場権争いに絡むなど奮闘。今季もトップハーフに食い込むことが期待されていた。しかし、開幕9試合で8ポイント。今週のカラバオカップでも、3部のウィコム相手にPK戦まで追い込まれている。一方のウルブズは、2シーズン連続で開幕9試合勝利なし。特に今季は昇格組3チームすべてに敗れるなど、危機的状況だ。それでも、バーンリーやチェルシーとの試合では反撃の姿勢を見せたことは明るい材料だ。
苦しい状況が続く両チームだが、この一戦に勝てば希望が見えてくる一方で、敗れればこのシーズン序盤で降格の危機に瀕するだろう。今季を左右する重要な一戦になるかもしれない。