【欧州・海外サッカー 特集】世界最高のスター選手たちがしのぎを削るプレミアリーグ。そんなイングランド最高のリーグで、“最高のMF”はどの選手なのだろうか。
おそらく、現在のプレミアリーグは実質「欧州スーパーリーグ」だ。豊富な資金力を武器に各クラブが世界中のスーパースターたちを次々に獲得、どのクラブでも誰もが羨むような選手がプレーしており、毎週のように豪華スターの競演を楽しむことができるリーグである。
そんなプレミアリーグにおいて“最高のMF”はどの選手なのだろうか? ここではアタッカー気質の10番タイプは外し、中盤の底でチームを支える選手たちにフォーカス。過去2シーズンのパフォーマンスを総合的に評価し、トップ10を紹介する。
昨年からイングランドでも大きな注目を集めたスペイン代表MFだが、プレミアリーグ到着から圧倒的な実力を見せつけている。今夏に幼少期から過ごしたレアル・ソシエダを退団してアーセナルに加入すると、あらゆる場面で世界最高レベルのパフォーマンスを発揮し続けているのだ。
圧倒的なゲームメイクセンスや適切なタイミングでの攻撃参加に加え、抜群の読みで次々にボールを奪取。すでにプレミアリーグを代表するMFに君臨し、今季を通じて傑出したレベルを見せている。念願のタイトルを目指すアーセナルにとって、欠かせない重要な存在だ。
チェルシーというクラブは、資金を投入すればあらゆる問題を解決できることを長年に渡って証明してきた。2023年1月、ワールドカップ覇者に投じた移籍金は1億680万ポンド。当初は懐疑的に見られたこの移籍も、今では文句を言える人間がいないはずだ。
移籍直後はプレミアリーグのリズムにやや苦労したものの、約3年が経過した今、そのハイペースなリーグで思う存分に実力を発揮。特にエンツォ・マレスカ体制では試合を決める決定的な役割も担っており、リーグ戦だけで10ゴール8アシストを記録している。
苦戦が続く昨季王者だが、ひとり気を吐いているのがソボスライ。おそらく、唯一昨季以上のパフォーマンスを見せている選手だろう。チームのビルドアップからフィニッシュフェーズまで積極的にゲームに絡み、抜群のキック精度でFKまで叩き込む。さらに不慣れな右サイドバックにも完璧に適応し、アルネ・スロットに欠かせない存在になった。
ここまで全大会で3ゴール5アシスト。持てる力すべてでチームに貢献し続けている。だからこそ、周りの選手たちは彼の活躍に応えたい。
2021年にタイムスリップして「4年後にグラニト・ジャカはサンダーランドでプレーし、世界最高のMFの1人になっているよ」と言えば、あなたは変人扱いされてしまうだろう。それだけこのスイス代表の復活劇は目を見張る物がある。
アーセナルではファンからブーイングを浴びるほど苦しんだ時期もあったが、レヴァークーゼンを無敗優勝に導いて絶対的な自信をつけると、今夏にプレミアリーグへと帰還。サンダーランドではすべての攻撃が彼を経由する。文字通りチームの“心臓”だ。ブラックキャッツの快進撃は、彼なしではありえない。
ニューカッスルは今夏、1億2500万ポンドでエースの売却を強いられた。それでも、このキャプテンをキープできたことの方が重要だ。2022年1月にリヨンから加入して以来、全大会で172試合に出場。ほとんど休むことなくピッチで戦い続けている。
彼にはパス、ドリブル、得点関与(25ゴール29アシスト)、そして守備と、弱点が全く見当たらない。ニューカッスルはおそらくプレミアリーグで最もインテンシティが高いクラブ(特にホームでは)だが、それは彼がいるからである。
2023-24シーズン、彼は真の意味で年間最優秀選手の1人だった。今季はケガに苦しめられてはいるが、依然としてプレミアリーグ最高のプレーメーカーである。
以前は完全な10番タイプだったが、アーセナルでは状況を見て中盤深い位置から試合を作る役割も担っており、そのパスセンスやムーブでチームを支え続けている。そしてファイナルサードでは、唯一無二の魔法を放つ。それでいてハイプレスの指揮を執り、強烈なキャプテンシーで牽引する。今季はケガ続きなのが非常に残念だが、またすぐに魔法のような瞬間を見せてくれるはずだ。
正直に言えば、3-4-3の中盤底では彼の本領を発揮できないだろう。しかしたとえ不慣れなポジションでも、彼のクオリティは否定できない。不振に苦しんだチームを最終的にプレミアリーグ15位、ヨーロッパリーグ決勝に導いたのは彼であり、オールド・トラッフォードで休みなく働き続ける彼の姿勢とメンタリティは全チームメイトが見習わなければならない。
常にプレミアリーグのチャンスメイクランキングでトップに名を連ねるブルーノ・フェルナンデスだが、彼に今最も必要なのは、より安定してそのチャンスをゴールにつなげてくれる選手だろう。
1年前にバロンドールを手にして以降も、前十字靭帯断裂やその他のケガに悩まされ続け、ほとんど試合に出場できていない。だが彼がいなければいないほど、マンチェスター・シティにおける存在の重要性が明らかになる。
守備、ゲームメイク、ゴール関与と彼には文句のつけようがなく、ほぼ完璧なMFと言えるはずだ。問題は、重傷明けにかつて見せていた世界最高レベルにもう一度戻せるかということ。未だ不安定な戦いが続くチームには、彼の存在が必要不可欠だ。
カイセドがトップになるべきだと主張する人は当然いるだろうし、その点に文句をつけることは難しい。
これまでもチェルシーにはクロード・マケレレ、エンゴロ・カンテなど中盤で“掃除屋”が躍動してきたが、カイセドは彼らに匹敵する存在になりつつある。さらにビルドアップへの参加や豪快なミドルシュートなど、攻撃面でも大きな武器を持っている。試合への影響度は、プレミアリーグでも群を抜いているだろう。
チームメイトであるGKロベルト・サンチェスは先日、カイセドについて「あのポジションで世界最高の選手。彼以上がいる? 怪物だよ。50-50のデュエルでも毎回勝つし、ボールを持っても落ち着いている。そして常に一定で、選手としても人間としてもブレがない。物静かだけど努力家で、いつも進化しているね」と話している。それには1点の異論もない。
現プレミアリーグ“最高のMF”は、デクラン・ライスだ。彼こそが頂点に立ち、他の選手達の基準と模範になるべき存在である。このままアーセナルが悲願の優勝を達成すれば、サポーターが待ち望んで恋い焦がれ続けた「パトリック・ヴィエラの後継者」として歴史に名を残すことになる。
ウェストハムでもリーグ屈指の存在だったが、アーセナル加入後は主に攻撃面での進化が著しい。抜群の推進力での持ち上がり、タイミングを見たボックス内への飛び出し、強烈なミドルシュート、そして圧倒的なセットプレーキックの精度……アーセナルではすでに26アシストだ。彼のキックがプレミアリーグ全体のセットプレー革命を引き起こしている。そしてアシストだけでなく、レアル・マドリーを打ち砕いた圧巻の直接FK2発は、プスカシュ賞にもノミネートされるほどだ。
2023-24シーズンから2シーズン連続でPFA年間ベストイレブンに選出された唯一のMFであり、彼が積み上げてきた実績は絶対的なものだ。そしてイングランド代表でも、ハリー・ケインと同等の存在と見なされている。
来年のバロンドールを手にしていても、能力的には全く問題ない。あとはタイトルだ。