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ベリンガムでも、フォーデンでも、パーマーでもない!ワールドカップでイングランド代表の10番を背負うべき23歳

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【欧州・海外サッカー 特集】9月21日、10人のサンダーランド相手に1-1の引き分けに終わったアストン・ヴィラは降格圏に沈んでいた。しかし、この窮地を救ったのは、イングランド代表で最も期待される23歳だった。

直近2シーズンのプレミアリーグを4位、6位で終えるなど、ウナイ・エメリ体制で上位を争うようになったアストン・ヴィラ。しかし、2025-26シーズンは大苦戦。開幕から5試合勝利がなく(3分け2敗)、10人のサンダーランドに勝ちきれなかった一戦を終えて降格圏にまで沈んでいた。

しかしあれから3カ月、今ではヴィラは優勝候補の一角へと変貌を遂げている。あのサンダーランド戦後、11試合でなんと10勝。アーセナルも撃破するなど、第16節終了時点で首位と3ポイント差の3位につけている。

そんなチームの躍進の立役者となっているのは、間違いなくモーガン・ロジャーズだ。特に直近のウェストハム戦、リードを許している状況から奪った2ゴールは圧巻だった。2点目の稲妻のような一撃は、シーズンベストゴール候補に間違いなく入るゴールである。もちろん彼の活躍はこの試合に限らず、今季リーグ戦16試合で8ゴールに直接関与しており、ヴィラの主役の座に君臨している。

この活躍はもちろん、イングランド代表指揮官にも大きな影響を与えている。トーマス・トゥヘルは来年のワールドカップへ向け、ジュード・ベリンガムやフィル・フォーデン、コール・パーマーといったライバルを抑え、ロジャーズに10番を与えるべきかもしれない。

 

逆境と急成長

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ロジャースは2024-25シーズン、ヴィラで8ゴール10アシストを記録してPFA年間最優秀若手選手に輝いた。エメリ体制のヴィラには欠かせない存在である。だが今季開幕直後の不振では、最も批判を浴びた選手でもある。ヨーロッパリーグのボローニャ戦で今季初勝利を収めた際、パスを送った直後にはホームサポーターから嘲笑を込めた拍手すら浴びていた。その後、『スカイスポーツ』のインタビューで率直に自身の状況を語っている。

「昨季の僕はサプライズだったかもしれないけど、今やみんなが僕や僕のプレースタイルを知っている。相手は僕を止めようとしてくるんだ。次のレベルに進んだが、それにどう対処するかが課題だね。優れた選手でも、成長する努力をしなければ、見抜かれてしまうんだ」

この23歳にして驚くほど成熟した考えこそ、ロジャーズがトップレベルに君臨する理由だろう。スター選手としての責任を自ら引き受け、トップ下以外にも左ウイングやストライカーでプレーしながら、相手守備陣の「急所」であるライン間でボールを引き出し続ける。『Genius Sports』によると、今季のプレミアリーグで最もライン間でボールを触っているのはロジャーズだ。

こうしたメンタリティと進化には、エメリも手放しで褒め称えている。先日の会見で指揮官はこう語った。

「最も重要なのは戦術面での働きと適応力。今や得点を重ねて輝いているね。彼は常にプレーし、仕事をこなし、あらゆることに並々ならぬ献身を見せてきた。そして今、ゴールが生まれ始めている。彼はますます調子を上げているよ。驚くべき速さで成長し、パフォーマンスを高めている。本当に素晴らしい選手だね。彼の身体能力は圧倒的だ。自らの行動を説明し、全てを実践で示すというメンタリティを備えた、偉大な選手である」

「ナックルボール」

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これまで迫力満点のボールキャリーや精確なコントロールが高く評価されてきたロジャーズだが、今季はロングシュートのスペシャリストとしても称賛を集めている。10月にはトッテナム戦でロケットのようなシュートを突き刺し、先月にはリーズ戦でまるで「ナックルボール」のようなFKを叩き込んだ。

ボールの中心を正確に捕らえるだけでなく、コンパクトな振りから繰り出される予測不可能な弾道の一撃は、限られた数人しか持てないシュート技術だ。そしてこのシュート技術をプレミアリーグで最初に有名にした人物は、あのマンチェスター・ユナイテッドのレジェンドである。アーセナルOBセオ・ウォルコットは先日、『BBC』の「マッチ・オブ・ザ・デイ」でこう語った。

「(クリスティアーノ)ロナウドを思い浮かべてほしい。時間とスペースを与えられ、遠距離からシュートを打てば、相手は危機に陥る。ボールを自在に操れるんだ。ロジャーズも同じことができるんだよ」

ロジャーズに伝説的なクリスティアーノ・ロナウドの姿を思い浮かべるウォルコットは、さらにこうも続けている。

「彼は代表メンバー入りするだけじゃないね。ワールドカップでのスタメンは確実だ。100%ね。彼は全てをこなす。単なるゴールスコアラーというだけじゃないんだ。10番の候補者は全員が素晴らしいと思うけど、誰か1人は代表入りを逃すことになる。でも、私としてはロジャーズが絶対に先発すべきだ。非常に知性的な選手であり、相手の守備体系の弱点を即座に見抜くタイプの選手だよ」

トゥヘルの信頼

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そんなウォルコットの意見に、トゥヘルも首を縦に振っているのかもしれない。

1月の就任以降、トゥヘルは10試合中6試合でロジャーズを先発起用した。8月~10月の間にジュード・ベリンガムが不在だったこともあるかもしれないが、ワールドカップ予選のセルビア戦(5-0)やラトビア戦(5-0)ではハリー・ケインの背後で先発し、さらにウェールズとの親善試合(3-0)でもスタメンに入った。重要なゲームでは、必ず彼がチームシートに名を連ねている。

ロジャーズも指揮官の信頼に応え、ウェールズ戦でイングランド代表初ゴールを記録。セルビア戦ではキーパス5本(ノニ・マドゥエケへのアシスト含む)をマークし、最多のドリブル成功数を誇っている。その結果、11月にようやくベリンガムが復帰した際にも、ロジャーズが10番のファーストチョイスに君臨。ホームで再び迎えたセルビア戦(2-0)でも先発している。トゥヘルはこの試合前、10番を争う2人についてこう語っていた。

「単に選手をピッチに立たせるためだけにベストポジションを探すよりも、全員を最適なポジションに配置して競争させる方が良いかもしれない。現時点では2人の間で競争が起きている。彼らは友人同士だから、友好的な競争にもなり得るね」

「2人を同時に起用できるかって? できるよ。ただし、異なる戦術の中でだ。現時点で我々の戦術を変えるつもりはない」

ベリンガムとの比較

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一方のベリンガムは、アルバニア戦で先発出場を果たした。しかしトゥヘルは、これはヴィラのエースを「休ませる」ためであり、ロジャーズが「控え」となる「資格」はないと語っている。イングランド代表指揮官は、選手のネームよりもチームとしての機能性を重視する発言を繰り返しており、彼の中ではバランスを考慮した際にロジャーズを先発させた方が良いと考えているようだ。

確かに経験値という意味ではベリンガムのほうが上であり、ロジャーズの持つ身体的長所や得点力も兼ね備えていると言えるかもしれない。だが、ピッチのあらゆる場所でボールを触りたがるレアル・マドリーMFは、より自由を与えられた時こそ真価を発揮する選手である。しかしトゥヘルは、10番における「規律」の重要性に度々言及しており、その意味ではロジャーズの方が適正が高い。エリオット・アンダーソンやデクラン・ライスが試合のテンポを作ろうとしている場面や、サイドでブカヨ・サカが突破を図ろうとしている時に、彼らのスペースを奪ってしまうようなことは決してないだろう。

ロジャーズの主な役割は、絶対的エースであるケインの能力を最大限に引き出し、トゥヘルが切望する最終ライン付近での流動性とペースをもたらすことだ。ボールの有無にかかわらず、ケインの背後を走って彼のスペースを作り、さらにプレスをリードする。自身のエネルギーと攻撃性を賢く活用し、イングランド代表をよりダイレクトなチームへと変貌させ、どんな相手も圧倒できる戦力を融合させているのである。

ライバルの状況

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彼ら以外にも、イングランド代表の10番を争う才能は多く存在する。

おそらく、ゴール前に限った決定的な能力で言えば、コール・パーマーは最も際立っている。先日のエヴァートン戦(2-0)でも、トゥヘルが見守る中で彼の代名詞とも言えるような冷静なフィニッシュを沈めていた。だが彼の問題は、これが今季4度目の先発出場であったということ。チェルシーのエンツォ・マレスカ監督も試合後、パーマーが依然として痛みを感じており、週に2~3試合をこなすことはまだ不可能だと認めている。ワールドカップ開幕まであと6カ月という時期に、これは理想とは程遠い状況だ。

アーセナルで才能を発揮するエベレチ・エゼも有力な候補であるが、ミケル・アルテタ監督は頻繁に彼のポジションを動かしており、また絶対的なレギュラーというわけでもない。トゥヘルを納得させるために必要な10番としてのプレー機会を安定してられない可能性もある。

一方で、現時点でロジャーズとベリンガムとポジションを争う最有力候補は、フィル・フォーデンだろう。マンチェスター・シティで直近4試合6ゴールを奪い、PFA年間最優秀選手に輝いた2023-24シーズンの姿を取り戻しつつある。なにもない場所からすべてを生み出すこともできるアタッカーだ。だが彼の場合は、ロジャーズのような身体能力を持たないこと。そして、イングランド代表としてのこれまでの主要大会で不安定で結果が残せていないことが気がかりだ。さらにトゥヘルは、“偽9番”が「最も適している」と主張しており、アルバニア戦でもケインに代えて同じポジションで起用した。指揮官の頭の中では、エースのスーパーサブとして考えているかもしれない。

「あのシャツは彼のもの」

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60年ぶりのワールドカップ制覇を狙うイングランド代表にとって、現時点で最も適した10番はロジャーズだろう。独自のスキルセットはチームを動かす上で完璧に適合しており、また守備面でも大きな強みを発揮する。

9月、元マンチェスター・ユナイテッド主将ロイ・キーンは『ITV Sports』でロジャーズをポール・ガスコインに例え、「相手が捕まえたと思った瞬間に抜け出す。あの瞬間的な動きはガッザを彷彿とさせる」と評した。イングランド出身アタッカーへの賛辞として、これ以上の言葉はないだろう。

そしてイングランド代表OBピーター・クラウチは今月初め、『TNT Sports』で断言した。

「彼のプレーは素晴らしいね。あの背番号(10番)は彼のものだよ。あらゆる要素を兼ね備えている。我々には多くの才能がいるが、彼の現在のプレーぶり、そしてトゥヘルが明らかに彼を高く評価していることは明白だ。今の調子を維持し続ける必要があるだけだね」

おそらく、イングランド代表の10番争いは世界最高レベルだ。たった1つのポジションを、プレミアリーグを代表する選手たちが争っている。しかし今、この競争は23歳MFの手にすべてが委ねられている。今のプレー水準を維持できれば、それだけでケインの“右腕”になることは確実だろう。来年北米の地でイングランド代表サポーターが「Coming Home」と声高に叫ぶ時、その主役として10番を背負うのは、ロジャーズになっているかもしれない。