【欧州・海外サッカー 特集】リヴァプール(プレミアリーグ)で一時の危機を乗り越えたかに見えたアルネ・スロット監督。しかし、彼には休む暇はないようだ。
「FAカップやリーグカップ、親善試合、あるいは練習試合でさえ、そんなことはすべきではないと思う」。アルネ・スロットは12日のFAカップ3回戦バーンズリー戦後、自陣ゴール前でバックヒールに失敗したドミニク・ソボスライについてこう語った。「奇妙な選択だよ。私なりの意見はあるが、それは胸にしまい、ドムと話し合うつもりだ」
ソボスライの恥ずべきミスの後、単純だと思われた試合がリヴァプール守備の欠点とローブロック相手の突破力が試される試合へと一変した。そしてそれは、後半に投入されたフロリアン・ヴィルツとウーゴ・エキティケのおかげで、かろうじて合格点を得たに過ぎない。
最終スコア4-1は間違いなくリヴァプールを過大評価するものであり、スロット監督への懐疑的な見方を和らげることは全くなかった。むしろ今シーズン終了まで、彼の手腕はさらに厳しい監視下に置かれるだろう。というのも、リヴァプールのこの不甲斐ない試合の数時間前、多くのファンがユルゲン・クロップの後任として望んでいた人物が、再び監督候補として浮上したのだから……。
クロップが2023-24シーズン終了後にリヴァプールを去ると発表した際、後任はシャビ・アロンソだという期待は高まっていた。“イスタンブールの奇跡”の経験者は指導者キャリアを素晴らしい形でスタートさせ、そしてレヴァークーゼンでは無敗での国内二冠を達成したばかりだったのだ。
おそらく、新監督を必要としていたすべてのクラブが彼を欲しがった。特に選手として在籍したリヴァプール、バイエルン・ミュンヘン、レアル・マドリーは熱心にアプローチしている。しかし、彼はレヴァークーゼン残留を決断。これにより、リヴァプールとバイエルンは別の指揮官を招聘することになる。そうしてシャビ・アロンソは、昨年5月にカルロ・アンチェロッティの後任としてレアル・マドリーの指揮官に就任することを受け入れたのである。
もうその時には、リヴァプール関係者は誰も彼の復帰を切望はしていなかっただろう。スロットはチャンピオンズリーグで彼のレヴァークーゼンを4-0で圧倒し、アンフィールドでのセンセーショナルなデビューシーズンをプレミアリーグ独走優勝で締めくくっている。シャビ・アロンソのマドリー指揮官就任が発表された2日後、スロットはプレミアリーグ最優秀監督に選ばれていた。
しかし、それから半年の間で、状況は劇的に変化してしまった。
マドリーが「世界最高の監督の一人」の復帰を称賛してから8カ月も経たぬうちに、クラブはアロンソとの契約を「双方合意により」解除したと発表した。しかし、本当の意味での「合意」など微塵もなかった。アロンソは選手たちの権力によって、クラブを追われたのだ。
昨年10月、シーズン最初のクラシコには2-1で勝利した。しかし、途中交代を命じられたヴィニシウス・ジュニオールがアロンソへの怒りを爆発させる事態に。さらに、ロッカールーム内の重要人物たちも指揮官の要求や態度に苛立ちを溜め込んでいたようだ。結局、常に指揮官よりも選手を重視してきたフロレンティーノ・ペレス会長が決断を下している。あの時から早期解任は避けられないものとなっていた。
その意味で、アロンソが現代フットボールにおける革新的な若き指導者であるという評価は、不当に損なわれることはないだろう。少なくとも、リバプールのファンにとってはそうだ。彼らは選手時代のアロンソを崇拝し、監督としての彼を熱望していた。マドリー内部での不和が最初に報じられた時点で、アロンソがリヴァプールに温かく迎え入れられるという噂も浮上している。特に当時のリヴァプールは、11月22日のノッティンガム・フォレスト戦で公式戦12試合中9敗目を喫していた。1954年以来のワースト記録に、スロットは押しつぶされそうになっていたからだ。
それから数カ月で、リヴァプールの成績は改善されたと言っていい。しかし、内容まで良くなったとは決して言えない状況だ。
バーンズリー戦での勝利により、リヴァプール公式戦無敗記録は11試合に伸びた。しかし、チームは依然として精彩を欠き、プレーに真の流動性や突破力が欠けている。低い位置で構える守備陣を突破する手段を見出すことに未だ苦しんでおり、これがプレミアリーグ直近9試合で5分けしている理由だろう。
先週のアーセナル戦でのドローは正当に評価された。特にプレミアリーグ首位チームを相手に、アウェーで後半の大半を支配したからだ。しかし、アーセナル戦ではボール支配率が高かったにもかかわらず、リヴァプールはまたしてもそれを生かしきれなかった。これが両チームの差「14」という現状を表している。
スロットは試合後、これまで否定的な意見が飛んでいたプレーに対して、このアーセナル戦では好意的な評価が続いたことに「少し驚いた」と語った。
「他チーム相手に60~70%のボール支配率を記録しても、人々は退屈だと感じる。だが今回は『良いパフォーマンス』と評価された。今回もほとんどチャンスを作れなかったが、これが現在の我々の姿だ。支配的なボール保持は可能だし、ビルドアップの方法も理解している。だが明らかに、いくつかの点で苦戦している」
「セットプレーもその一つだ。しかし、最終ラインでの正確なパス選択と決定的なプレーの実行力、この点は他チームの水準にはまだ達していない。だからこそ我々は日々、改善に向けて取り組んでいるのだ」
少なくとも月曜日の試合では、攻撃的な脅威を見せつけた。しかしそれは、バーンズリーが後半に試合をひっくり返せると本気で信じ始めたため、終盤にヴィルツとエキティケが生きるスペースが生まれたからに過ぎない。また先制点も、鋭いパスワークからではなく遠距離からの思い切ったシュートによるものだった。
スロットはこの試合の後、『TNTスポーツ』で「得点自体は満足している。見事なゴールだった。しかし2-0から失点したことで、終了5~10分前まで苦しい展開が続いた。つまり、得点の質は高かったが、ボール支配率に見合ったチャンス創出が不十分だったということだ」と素直に認めている。
この点は指揮官を評価すべきだ。だが、リヴァプールは繰り返し同じ問題に悩まされているという点に関しては、決して良い印象を与えていない。
確かにポジティブな要素は存在する。それは主に新加入選手たちによるものだ。序盤こそ苦しんでいたが、今ではほぼ全員が徐々にチームにフィットし始めている。
ヴィルツはバーンズリー戦で一度チャンスを逃したが、その後トップコーナーへのゴールを決めたことで、過去5試合で3得点目を記録。彼とエキティケが互いにゴールを演出する姿は、将来への確かな希望を示している。この2人がプレミアリーグで最も脅威的なコンビになる可能性は決して誇張ではない。
また、フリンポンもコンディションを取り戻したことで、右サイドを縦横無尽に駆け上がることが可能になった。さらに心強いのは、ミロシュ・ケルケズがアーセナル戦でブカヨ・サカ相手に今季最高のパフォーマンスを見せたこと。長く苦しんだ彼にとって、これは大きな自信になるはずだ。
新加入選手たちが存在感を示し始めたのは良い兆候だ。しかし、スロットには解決すべき課題が山積している。
アレクシス・マクアリスター、ライアン・フラーフェンベルフ、コーディ・ガクポといった主力選手の個々のコンディションやフィットネスは依然として懸念材料であり、コナー・ブラッドリーが最悪のタイミングでシーズン終了となったことから、ソボスライとカーティス・ジョーンズは今後も右サイドバックという不慣れなポジションでプレーすることになりそうだ。また、モハメド・サラーが最高のパフォーマンスを取り戻すために、スロットはさらに関係性に注意を払わなければならない。
さらに、全体的な一貫性と安定性の欠如は大きな課題だ。スロットも公に認めているように、今季のリヴァプールは試合を通じて完全なパフォーマンスを発揮できていない。その理由として、緊迫感とインテンシティの欠如、両ボックス内におけるセットプレーの弱さの2つが挙げられる。
しかし最も懸念すべき問題は、未だ明確な戦術パターンが見つけられないこと。昨季王者を率いる監督が何を試みているのか、その具体的な形が鮮明に示されていない。スロットは自身のスタイルは変えていないと語るが、他チームはローブロックとロングボールでリヴァプールのプレスを回避しつつ、攻撃の脅威を無効化する戦術を採用。これに対するアンサーをまだ示していないのだ。
スロットのチームに予測不可能性を高め、新たな次元へと引き上げるために巨額の資金が投入されたのは確かだ。しかし結果として、大半の試合は退屈なものになってしまった。リーグ連覇の可能性が実質的に消滅した今、ファンにとってパフォーマンスは勝ち点と同じくらい重要である。
そのため、今後数カ月間はスロットの将来にとって極めて重要になる。もちろんチャンピオンズリーグやFAカップなどカップ戦の結果も期待されるところだが、忍耐強いリヴァプールファンは進化の証を、つまり来季は再びプレミアリーグ優勝に挑戦できるという確信を見せてほしいと願っている。多少リーグ戦の成績が振るわなくても、ワクワクするリヴァプールが帰ってくれば、来季への希望が見えれば、世界最高の雰囲気を作り出すアンフィールドはついてきてくれるだろう。
しかし、彼らは絶対に“退屈なフットボール”だけは許さない。特に今、最も刺激的で愛される代替案が再び市場に出てきたのだから――。