パリ五輪イヤーである新シーズンは、日米で熾烈な代表争いが行われる。29日に沖縄県の琉球ゴルフ倶楽部で開幕するJLPGAツアーのシーズン初戦「ダイキンオーキッドレディス」。日本ツアーから五輪切符を虎視眈々と狙う山下美夢有が、V候補最有力として出場する。
五輪は世界ランクを基にした五輪ランクで各チーム上位2選手が代表に選出される。しかし世界ランク上位勢が多いチームへの優遇として同ランク15位以内に入る選手が複数いるチームは最大で4選手を選出できる仕組みだ。
山下の世界ランクは現在22位。前回の東京五輪が行われた2021年末の同ランクは64位だったが、2年連続で国内ツアー5勝をマーク。ランクを急浮上させている。
3季連続で国内の年間女王を狙う22歳は、パリ五輪で日の丸を背負うことへの意欲を隠していない。オフシーズンのイベントでは取材対応があるごとに「絶対にパリに行きたい。上位に入りたい」と語っていた。
そんな山下のライバルと目されるのが古江彩佳だ。前回の東京五輪の代表争いでは、熾烈な争いの末に本大会で銀メダルを獲得した稲見萌寧に競り負け、悔し涙を流した。その後に米ツアーに主戦場を移し、安定感ある戦いぶりを披露している。
五輪イヤー最初に発表された世界ランクで日本勢のトップ2は畑岡奈紗(17位)と山下(19位)だった。古江は24位と巻き返しが求められる位置にいた。
しかし米ツアー開幕2試合連続で4位に入り、配分の高い米ツアーの世界ランクポイントを加算。たった2週間で山下との”代表圏内”を逆転した。現在の日本選手のランク順は畑岡(17位)、古江(20位)、山下(22位)、笹生優花(26位)となっている。
笹生より下のランクの選手にもチャンスは十分に残されているが、畑岡や古江、山下の安定感を見ていると大きくランクを落とすことは考えにくい。ランクを急浮上させるにはポイント配分の高い米ツアーや海外メジャーで優勝、国内ツアーで勝ちまくるなど飛躍的な活躍が求められる。
そして山下にとって最も厄介なのが、代表を争う相手の多くが米ツアーを主戦場にしているということだ。過去の五輪代表”ラスト一枚”の争いでは、国内ツアーを主戦場にする選手が多かった。リオ五輪では宮里美香が米ツアー組として大山志保と渡邉彩香と争ったが、最終的には大山と渡邉の一騎討ちになった。また東京五輪を争った稲見と古江も当時は日本ツアーを主戦場にしていた。
今季5大メジャーの全出場に意欲を燃やす山下だが、シーズン開幕前に古江に世界ランクで逆転を許したように米ツアーの方がシーズン開幕が早いなど主戦場によって描く五輪ルートは違う。世界ランクポイントの配分も異なるため、山下にとってランクの変動が読みにくい状況が続き、”見えない敵”とも戦うことになるだろう。安定感のある古江、爆発力のある笹生と魅力が異なる2人と争うのも注目ポイントだ。
一方で国内ツアーの試合に出場することで安定して上位に入ってきた経験があるため、ポイントを着実に加算しやすい立場にいるとも言える。日米を舞台に繰り広げられる代表争いは、過去最大に熾烈と言えるだろう。
そして、さらに熾烈な代表争いを繰り広げているのが韓国だ。現在の世界ランクでは6位にコ・ジンヨン、9位にキム・ヒョージュ、15位のエイミー・ヤンまでが代表圏内。その一歩下の16位にいるのが、日本ツアーのレジェンド・申ジエだ。
2022年に80位まで下がった世界ランクを浮上させたのは昨年。日本のシーズン開幕前にオーストラリアで行われた「ビックオープン」で久々にトロフィーを掲げると、国内開幕戦で復活優勝。ケガで苦しんだ数シーズンのプレーがウソのように本来の輝きを取り戻し、「全米女子オープン」で2位に入った。
1年間で五輪代表が見える位置まで世界ランクを上げた35歳は、連覇を狙った国内ツアー開幕戦を罰金を払って欠場。同週開催で世界ランクをより上げやすい米ツアー「HSBC女子世界選手権」の出場を選んだ。
海外メジャーを制し、世界ランク1位に上り詰めた申にとって、新たなモチベーションになる五輪。若い韓国選手との代表争いは熾烈だが、なんとしてでも切符をつかみたい気持ちは強いはずだ。
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