ライアン・ガルシアは日本時間10日に、15カ月少々のブランクから復帰し、139ポンド（約63kg）契約でエマニュエル・タゴエと対戦する。この試合の模様はDAZNから全世界に生中継される。
皆が待ち望んだリング復帰を控えたガルシア。親切にも、自身の舞台裏をDAZNに見せてくれた。
ボクサーは一般人と全く異なる生き物だ。普通の人がしないようなことを毎日やっているし、ロープをくぐるたびに自分の人生を危険に晒している。人間は頭や体を殴られて大丈夫なようにはできていない。体重を減らすことは、実際の試合で打撃を受け止める時の感覚に大きく影響する。
公式計量まで72時間弱となった時点でガルシアはすでにウェイトを作れており、ライト級の体重制限である135ポンド（約61.2kg）まで減らすこともできそうなほどであった。減量期間でなくともあまり朝食を多く食べないガルシアだが、水曜日も普段と全く同じであった。
「ヨーグルトを食べたよ」ガルシアは『DAZN』に語った。
「減量期間じゃなくても僕は朝食をたくさん食べないんだ。昨日の夜はステーキとアスパラガスを食べたし、コーヒーを3杯飲んだ。水もたくさん飲んだよ。昨日（火曜日）にはウェイトをを作れていたからね。昨日には139ポンドになっていた。多分、135ポンドまで減らそうと思えばできるんじゃないかな。自分の体は今とても強くて、最高の状態だと感じている。もしかするとこれまで最高の仕上がりなんじゃないかな。今ならパンチで壁を突き破れるかもしれないよ」
試合当日に向けた準備のためにホテルで待機している時にも、ファイターごとにルーティーンは様々だ。ガルシアに会う前、彼は腹筋のトレーニングをしていた。なお、ギリシャ神話のアドニスのような見た目の秘密は明かされなかった。
「ソースに秘密があるんだ。教えられないね」とガルシアは冗談交じりに言った。
ガルシアは、試合がある週の辛さから離れ、楽しむためにテレビゲームをするのが好きだ。イチオシのゲーム本体はニンテンドースイッチ。だが、今回はゲーム機は荷物に入っていないのだという。代わりに、ガルシアは弟であり親友のショーンに矛先を向ける。二人の間には仲睦まじいやり取りが生まれる。
「彼が忘れたものについてこれ以上深入りしたくはないんだ」長い沈黙の後、ガルシアはこう言った。「けど、もういいんだ。彼はまだ野獣だからね」
「弁解するとね、僕は『スイッチはどこだ？』って（ライアンに）確認したんだよ。そうしたら『全部ルイ・ヴィトンのバッグに詰めたよ。コントローラーも全部ね』って言ったんだ。僕は右側を見たら、彼が言ったとおりの場所に入ってたんだ。よし、もう全部入ってる。心配ないな、ってなったんだ」ショーンはに釈明した。
もうひとりのガルシアのチームメンバーがこの会話に入ってきた。床に置いてあったナイキのカバンを指差し、ファスナーを開ける。
「見て確認しておかなきゃいけなかったんだよ。1、2、3、4（秒）。はい、入ってない。4秒あればできるだろ」
ニンテンドースイッチを持っているときは、自由な時間に気を紛らわすことができる。
「マリオゴルフだね。これをやるんだ」とガルシア。「僕らはマリオカート、マリオゴルフ、スマッシュブラザーズが大好きだ。全部お気に入りトップ5に入るだろうね」
マリオのシリーズで有名なキャラクターといえば、マリオ、ルイージ、ピーチ姫、クッパ、キノピオだ。だがこの23歳にとって、選ぶキャラは一人だけ。彼と似ているからだという。
「マリオ」とガルシアはぶっきらぼうに言う。「バランスの取れたキャラクターだ。ゲームではいつも平均的な性能だね。けどより高いレベルで操作できれば、トップを取ることができるんだ。だから僕にとってはそれが一番いいんだよ」
「僕自身も高いレベルに行くことができる。バランスがいい。スピード、パワー、当て感、全部ある。だから僕は次のレベルに行くよ」
会話をしている間、ガルシアには全員のチームメンバーがついていた。チームは15人で構成されている。部屋にいると、チームとは何なのかはっきり理解できる。みんなが冗談を言い合い、まるで家族のようにお互い笑い合っている。互いのことを深く思いやっており、ライアンにとって必要なものを全て整え、本番に向けて100%の準備をすることに注力している。気を紛らわすためのテレビゲームがなかった今回、ガルシアは自分を見つめ直す機会に恵まれた。
チーム・ガルシアの面々は両親のヘンリーとリサを筆頭に、前回のルーク・キャンベル戦からほとんど変わっていない。新メンバーはシェフのジオや、スパーリングパートナーであり友人、そしてトッププロスペクトの一人でもあるニキータ・アバビー。そして有名な伝説のトレーナー、ジョー・グーセンらだ。彼らが加わった上に、すでに見知った人たちがチームを固めているため、ガルシアはこのチームが自身の成功や目標のための最良の組み合わせだと考えている。
「最高のチームを持ったよ」とガルシアは熱心に語る。
「ニキータが新たに加わったことで、チームに違った雰囲気が加わった。チームに活気をもたらしてくれたね。いいエネルギーがあるから、キャンプで近くにいてくれるといいことがあるんだ。彼は最高の仲間だ。僕がやったことは何でもやった。僕がコーチとトレーニングをやっていると、どんなことでも一緒に参加したがるんだ。だからいつでも一緒にトレーニングしていたね。僕のやることは何でもやりたがったし、いつも僕の側にいたよ。たとえば12時にランニングしていると、『なんで誘ってくれなかったんだ。俺も行くよ』と言うんだ。そして僕の周りにもう一人増えるんだ。そんなこと、これまでなかったよ」
「普段トレーニングしているときはいつも一匹狼だからね。周りに人がいるのが好きじゃないんだ。最初はニキータも僕の近づけなかった。父が僕を説得したのが最高の決断だったね。それからは、ただただいい感じだった。すべてのことには理由がある。ニキータはチームの一員として最高だし、いつでもチームにいてほしいと思っているよ」
「今では兄弟みたいに練習しているよ。このチームには僕にとって全てが整っている。お母さんはどんな試合でも来てくれる。お父さんは間違いなく僕の礎になっている。弟のショーンのことももちろん忘れてないよ。リングに入れば天才なんだ。彼はとても賢くて、僕と同じ脳を持っているようだ。ボクシングのことを熟知しているんだ。間違いなく彼はいつか最高クラスのトレーナーになると思うよ。毎年毎年彼はどんどん上手くなっていくだろう」
「とても結束したチームを作れている。警備員のルーク、ルーペ、ジオだ。ジオはもうひとりのシェフと別れたあと入ってきてくれた。彼はクライアントを抱えていて、とても忙しい人なんだ。だから彼がやってきてすぐに仕事を引き受けてくれて、やるべきことをたくさんやってくれたことはとても名誉なことだった。彼に感謝しているよ。チームの強い基盤を作ることが大事なんだ」
ガルシアが話している間、彼の髪の毛を気になって仕方がなかった。ツヤがよく、完璧なヘアスタイルで、トーク中全く動いていなかったのだ。髪の毛をずっと見つめていないで、ガルシアの発言に集中するのは難しかった。こんな形で髪型をキープするのは、どうやってやるんだろう？
「マーロウのポマードさ」ガルシアは自慢気に言った。
「たっぷり使うんだ。みんな知らないだろうけど、ローションは髪の毛の質感を良くしてくれるし、ツヤも出してくれるんだ。これは僕の秘密だね。あまり多くの情報を出したくない。けど、髪に少しローションを足すのが一番いい方法なのは間違いないよ」
我々は公開練習に向かったが、ガルシアはあまり量をこなさなかった。タゴエはここから何かの着想を得て、土曜日（現地時間）の夜に向けて何か対策しようということはできないだろう。それどころか、ガルシアはトレーニングを見に来たファンにサインをしたり、一緒に写真を撮ったりしていた。だが、その前のガルシアとタゴエのフェイスオフでは、危うく殴り合いに発展するところまで発展していた。
ガルシアは、タゴエと言い合ったまま立ち去ろうとしていたようだった。誰かがガルシアを落ち着かせ、なんとか事態を収拾させようとしたが、この23歳は受け入れなかった。
「何がやりたいんだ」ガルシアはタゴエに向かって叫んだ。
「今すぐでもできるぞ。やる気はあるのか？自分を見てみろ。自分を見てみろよ」
「黙れよ」ガルシアはさらに続けた。
「今すぐ何をやるって？すぐに終わるぞ。約束しようか」
幸運なことに、結局は何も起きなかった。ガルシアは最高のパンチを試合当日まで温存し、ボクシング界の次なるビッグスターへの道を歩み続ける。
ボクシング 配信予定 | DAZN番組表
| 日時（日本時間） | カード | 詳細 |
|---|---|---|
| 4月10日（日） 10:00 | ガルシア vs.タゴエ | ライト級12回戦 |
| 4月17日（日） 3:00 | ベン vs.ヘールデン | WBAコンチネンタル・ウェルター級タイトル戦 |
※配信予定、及び出場選手は変更になる場合あり
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