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【インタビュー前編】ACAFPが描く選手強化プラン。欧州強豪クラブを歴任した強化責任者が語るMCOの枠組み活用とは

【インタビュー前編】ACAFPが描く選手強化プラン。欧州強豪クラブを歴任した強化責任者が語るMCOの枠組み活用とはDAZN
【欧州・海外サッカーニュース】東フランダース地域のデインズ市をホームタウンとするフットボールクラブ、KMSKデインズ。MF宮本優太が所属しているクラブの全5回特集。第4回目はデインズの経営権を持つACAフットボール・パートナーズ(ACAFP)でチーフ・フットボール・オフィサー(CFO)を務めるアドリアン・エスパラガ氏のインタビュー内容をお届けする。前編では欧州で増加傾向の複数のクラブが共通のネットワークやリソースを活用するマルチクラブ・オーナーシップ(MCO)の可能性に迫る。

取材・文=舩木 渉
写真=KMSK Deinze

MCOは「経営的にも利点の多い、理にかなった手法」

欧州とアジアを繋ぐプラットフォームに。シンガポールを拠点とするACAフットボール・パートナーズ(ACAFP)は、2022年にベルギー2部のKMSKデインズ、2023年2月にスペイン4部(当時)のトレモリーノスCFの経営権を取得してマルチクラブ・オーナーシップ(MCO)でのクラブ経営に挑んでいる。

マンチェスター・シティが核となるシティ・フットボール・グループ(CFG)をはじめ、複数のクラブが共通のネットワークやリソースを活用するMCOの実例は近年増加の一途をたどる。ブライトン&ホーブ・アルビオンの傘下に入ったロイヤル・ユニオン・サン=ジロワーズや、レスター・シティ傘下のルーヴェンなどベルギーにもMCOの波は押し寄せている。そんな中、ACAFPは「アジア発」のMCOとして欧州に乗り込んだ。

では実際、彼らはMCOの枠組みをどう活用しているのだろうか。経営面、選手獲得、チーム強化など具体的なメリットと方針を探るべく、ACAFPでチーフ・フットボール・オフィサー(CFO)を務めるアドリアン・エスパラガ氏に話を聞いた。

「MCOの増加は欧州における傾向です。経営的な視点で見ると、MCOによって複数クラブを連動させると組織内の損益分岐点を作りやすい構造ができます。一方、スポーツ的な視点では、ネットワークの中でそれぞれの選手にふさわしい環境を提供することができます。

選手それぞれのキャラクターに合った選択肢を用意できれば、最高のパフォーマンスを引き出すことができます。そうなると選手の市場価値が高まり、クラブにとっての利益も大きくなります。MCOは選手のポテンシャルや特徴に応じた環境を確保するための仕組みを作れるだけでなく、経営的にも利点の多い、理にかなった手法だと思います」

スペイン出身の同氏は、これまでマラガでチーフアナリストやテクニカル・ディレクターを務めた他、トッテナムでは南欧担当スカウト、ベティスやレスター、ボルドーではシニアスカウト兼アシスタント・スポーツ・ディレクターとして強化部門の中枢を担った。

そんなエスパラガ氏は、デインズの経営権取得を機にACAFPのプロジェクトに加わった。まずはデインズのスポーティング・ディレクターに就任し、2023年2月からはグループ全体でフットボール部門の陣頭指揮を執るACAFPチーフ・フットボール・オフィサーを任されている。

「魅力に感じたのは、一つのクラブの成長だけにフォーカスしないプロジェクトの規模でした。デインズはACAFPのプロジェクトの中の一部に過ぎず、我々には中長期の計画があります。それを聞いた時に、ターゲット設定やそこに至るまでのプロセスが非常に賢く設計されていると感じました。やはりフットボールというのは長い時間をかけないと結果が出ない。1、2年で飛躍的に成長して何かを成し遂げるのは不可能だというのを、自分の経験の中で目の当たりにしてきたんです」

ACAFPが進める中長期的な計画――現在MCOを構成するのはデインズとトレモリーノスの2クラブだが、今後さらに輪が広がっていくことが見込まれる。その上でエスパラガ氏は「それぞれのクラブにビジネス的にもスポーツ的にも違う役割がある」と語る。

「我々は、選手育成という点において関わるクラブを4つのレイヤーに分けています」

エスパラガ氏によれば、「4つのレイヤー」は以下のような分類になっているという。

レイヤー1:欧州トップリーグに所属するクラブ

レイヤー2:経営権を100%取得しているクラブ(例:KMSKデインズ)

レイヤー3:経営権を100%取得している下部クラブ(例:トレモリーノスCF)

レイヤー4:経営権は取得していないが資本業務提携を結んでいるクラブやアカデミー(例:アルビレックス新潟シンガポール、PVFアカデミーなど)

これらのレイヤーをピラミッド型ではなく同心円上に配置することで、選手だけでなくその他の人材や情報などの共有を活性化させようとしている。特に「選手の価値を高める」という観点において、ACAFPの枠組みはより効果を発揮するだろう。

「我々は関わってくれるすべての選手に、彼らのパフォーマンスを最大限に引き出すための正しい道筋を用意したい。全く違うサッカーを展開するリーグから欧州へやってくる若手選手の成長に最適なプロセスを提供するため、トレモリーノスのようなクラブも持っています。

そして、保有している選手の市場価値を最大限に引き上げることに重きを置いています。彼らが持つ最高のパフォーマンスや特徴を引き出すことで、市場価値を最大限まで高めた上でより高いレベルのクラブへ羽ばたかせることができる。我々は違う特徴を持ったクラブ同士をつなぎ、ネットワーク内のすべての選手が利益を得られるような仕組みを、我々の文脈の中で作ろうとしているのです」

MCOの基幹クラブとなるデインズは2年以内のベルギー1部昇格を目指している。一方でトレモリーノスは1シーズンでのスペイン4部復帰昇格を目指しながら、デインズで出場機会の少ない若手選手、欧州のサッカースタイルや強度への適応が必要な選手に実戦機会を提供する場になる。そして、トレモリーノスで経験を積み価値を高めた選手がデインズへ戻ってチームに貢献するという循環も作ることができる。これこそがMCOの利点である。

「2年以内にベルギー1部へ昇格すること」

2023-06-19-deinze-acafp-cfo-02(C)KMSK Deinze

[(C)KMSK Deinze]

今季はこれからの成長を加速させるために基盤を築くことに心血を注いだ。小野寛幸CEOら経営陣がMCOのネットワーク拡大や投資に尽力する中、エスパラガ氏はスポーツ部門の責任者としてデインズの改革に着手した。

「組織としてより強くなっていくためには、施設、人材など、たくさんの要素を伸ばしていかなければなりません。例えば我々が参画するまで、デインズにはコンディション管理担当のコーチや分析担当がいなかったので、必要な人材を採用してデータサイエンスを活用できる体制を作りました。さらに選手たちが使うジムも改築しています。

フルタイムのスタッフがいなかったスカウト部門も充実させようと努力しています。これらはすべて、選手たちが最高のパフォーマンスを発揮するため、そしてクラブが次のステップへ進むための準備と投資です。

今シーズンは移行期として大きなリスクを冒しましたが、一年間でさまざまなインフラを整備することができた。次の2年間で1部昇格を争うまでに成長できる手応えを感じています。我々には大きなポテンシャルがある。移行期を乗り越えてチームとしての基礎を築ければ、次のステップとして1部昇格を達成できると信じています」

デインズはシーズン序盤に大きくつまずいて昨年9月下旬に白石尚久監督を解任したものの、10月下旬のマーク・グロジャン監督就任以降は一気に持ち直した。前体制下の10試合で2勝しかできなかったチームが、新監督に率いられて12試合で7勝を挙げたのである。最終的にレギュラーシーズンは9勝3分10敗の勝ち点30で12クラブ中8位につけ、下位6クラブによる残留プレーオフでも6勝1分3敗と安定した成績を残して早々と2部残留を確定させた。

来季、デインズは中長期計画の「次のステップ」へと進もうとしている。ACAFPのMCOを成功へ導くためには、基幹クラブとなるデインズの成長が不可欠となる。では、スポーツ部門の舵を取るエスパラガ氏は、人口約4万人の小都市に本拠地を置くローカルクラブをどのように強化し、大きくしていこうとしているのだろうか。

「フットボールの世界では、今日の試合で勝てなければ、次の日にはクラブを去らなければならないかもしれません。とはいえ、我々は短期的な目標と中長期的な目標をうまく組み合わせる必要があります。短期的な目標は、2年以内にベルギー1部へ昇格することです。そのうえで次の5年間を使って1部に定着し、欧州カップ戦出場を目指したいと考えています。

また、私はACAFPの取り組みを、きちんとしたビジネスモデルとして成功させたいと思っています。我々の成功によって、他のところにも活用できるような仕組みを作り、サッカー界が発展していくような成果を確立したいです。

もちろん目先の結果も追い求めなければなりませんが、ここにいるスタッフは皆プロフェッショナルで、目標を達成できると信じています。彼らと一緒に大きなことを成し遂げられるという確信があったからこそ、ACAFPのプロジェクトに加わりたいと思いました。デインズの1部昇格とMCOの成功、この2つを追い求めることが今の私の生きがいです」

ACAFPは「アジア発」という強みを活かし、急成長を続ける東南アジアでの新たな才能の発掘などにも積極的だ。MCOの発展により国内での存在感を高めるだけでなく、国際的な成功も収められれば、ローカルクラブでも欧州を飛び出してグローバルな市場を開拓できるという実例を作ることができる。壮大な夢だが、決して実現不可能ではないとエスパラガ氏は胸を張った。

「しがらみなく新しいことに挑戦できるデインズのような小さなクラブでこそ、ACAFPの価値を発揮できると思います。我々が各分野のプロフェッショナルの知見をクラブに持ち込むことで、できるだけ早くベルギー1部に昇格したいです。

将来的にデインズが欧州カップ戦に出場することも十分に可能でしょう。むしろ、なぜ不可能だと言えるのか。これまでにもいい例があります。三笘薫選手がプレーしていたユニオンはMCOの枠組みに入りながら2部から1部に昇格してすぐ優勝争いに絡み、今季はUEFAヨーロッパリーグを戦うまでに成長しています。我々にも同じことができないはずがありません」

後編に続く…

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