レアル・マドリードのカルロ・アンチェロッティ監督が、MFフェデ・バルベルデのユーティリティー性を称賛している。
ボックス・トゥ・ボックス型のボランチとして、世界トップクラスともされる輝きを放つバルベルデ。しかし右サイドバックとしても、世界でも指折りの選手になれる才能を有しているのかもしれない。
これまでも右サイドバックとして好パフォーマンスを見せてきたバルベルデだが、4日のチャンピオンズリーグ決勝トーナメント1回戦ファーストレグ、本拠地サンティアゴ・ベルナベウでのアトレティコ・デ・マドリード戦(2-1)はまさに圧巻だった。
攻撃面での貢献度合いは、もちろん凄まじい。開始4分にFWロドリゴが先制点を決めた際には、糸を引くようなスルーパスでゴールをアシストしたが、まるでサイドバックと中盤の選手を兼任しているかのような振る舞いを見せる(サイドチェンジ含めパスの種類は非常に豊富である)。そのほか、テクニカルではないものの圧倒的な推進力のドリブルによって、一人でビルドアップ(攻撃の前進)を成立させられるほか、シュート性の高いクロスを遅れることも相手にとって脅威となる。
右サイドバックのバルベルデは攻撃だけでなく、守備力も抜群だ。相手選手がボールを持って攻めてくるとき、本職ではないために前に出て行くか残るかの判断を迷いそうなものだが、彼はセンターバックやボランチとの位置関係をしっかりと把握しながら、常に最適解を選択している。またその長い足のリーチを生かして、甘いコースのパスはすぐにカット。極め付けは、トランジションの守備だ。アトレティコはレアル・マドリードの左サイドから攻め入り、サイドチェンジによってフィニッシュを狙っていったが、右サイドを全速力で駆け上がりフリーになろうとするMFサムエウ・リーノを、スピードで上回るバルベルデが決して逃すことはなかった。もしバルベルデが対応していなかったら、アトレティコは明確な決定機を迎えていたはずだ。ちなみに、ここ最近筋肉系の問題で3試合を欠場したバルベルデは、クラブ関係者によれば「70%」のフィジカルコンディションでアトレティコ戦に臨んでいたそうである……。
アンチェロッティ監督はバルベルデの圧倒的な活躍ぶりに、本当に言葉を失っていた。試合後会見で、次のように語っている。
「フェデについて、私にはもう口にできる言葉が残っていない。彼は凄まじい奮闘を見せてくれた。ファンタスティックだ。3試合ぶりの出場だったが、チームに対してあまりに見事な貢献をしてくれたね」
MFルカ・モドリッチ、DFダニ・カルバハル、MFルーカス・バスケスに次いで在籍年数が古く、アトレティコ戦ではキャプテンマークを巻いたバルベルデ(この試合がレアル・マドリード通算300試合目の出場だった)。レアル・マドリードに対して大きな愛情を持つことを常々公言してきた同選手だが、まるでピッチに複数人いるかのように何役もこなす圧倒的な貢献ぶりに、クラブも感謝をしなくてはいけないだろう。
取材=江間慎一郎