5月半ば、FCバイエルン・ミュンヘンの守備陣には警鐘が鳴り響いた。ダヨ・ウパメカノは数週間前に起こした膝の問題のためFIFAクラブワールドカップへの参加が危ぶまれていた。続いて、センターバックとしてウパメカノとともにプレーするキム・ミンジェも慢性的なアキレス腱の問題により無期限の離脱を余儀なくされることが発表された。
チームにとっては非常に大きな痛手だった。他にも2人のディフェンダーが大会に出場できないことがすでに確定していたためだ。複数のポジションをこなす伊藤洋輝は中足骨骨折のため、快速サイドバックまたはウイングのアルフォンソ・デイヴィスは十字靭帯断裂のためそれぞれ離脱している。
世界大会の舞台となるアメリカへと旅立つ前に、チームは不安定な状況に置かれた。しかし、新加入のヨナタン・ターが見事にその穴を埋めてくれた。バイヤー・レヴァークーゼンとの契約満了を目前に控え、クラブワールドカップ参加に向けて少額の移籍金で加入した選手である。
ドイツ代表のターはここまで安定したパフォーマンスを見せ、ピッチ内外両方で影響力を及ぼしている。補強は大成功であり、彼の獲得に支払った金額はまさにバーゲン価格だったと言えそうだ。
29歳の彼が馴染むまでまったく時間は必要なく、新たな環境にスムーズに溶け込むことができた。「最初の数日から素晴らしかった。チームのおかげで完全に自分の家のように感じさせてもらえた。みんなとても歓迎してくれて、接しやすくて、全員がもう同じ波長になっている」と彼は語った。
ターはオークランド・シティFCを10-0で粉砕した大会初戦でデビューを飾り、CAボカ・ジュニアーズを2-1で倒した試合でも再び90分間フル出場で印象的な活躍を見せた。彼が重要な存在であることが早くも示されたのはSLベンフィカ戦の前半だった。新加入の長身センターバックを休ませたバイエルンは守備陣が落ち着かず、序盤にビハインドを背負ってしまう。最終的にチームは試合をひっくり返すことができなかったとはいえ、60分になろうとするところでターが投入されてからはすぐに守備を引き締めることができた。
元ハンブルク、デュッセルドルフ、レヴァークーゼンのターは4-2で勝利したCRフラメンゴ戦でも堅実なパフォーマンスを披露し、次はまだ始まったばかりのバイエルンでのキャリアで最も厳しい戦いに備えようとしている。欧州王者パリ・サンジェルマンとの激突である。過去6カ月間を通して猛威を振るい続けてきたPSGの攻撃陣が全力で襲いかかれば、相手守備陣は世界のサッカー界でも他に例がないほどの苦難に直面することになる。
経験豊富なターにとっても最初の厳しい試練となるかもしれないが、バイエルンの新加入選手として自らの価値を証明するチャンスになるのはまさにこういう試合だ。プレーの面だけでなくリーダーシップを発揮する部分も含め、これまでの経験を存分に活かして大一番にふさわしい戦いを見せられることを彼は望んでいる。
「僕に与えられた役割はクラブから説明されている」。今後バイエルン守備陣の中心として指揮を執る選手になっていくと考えているかどうかを尋ねられると、ターはそう答えた。「だが自分でそれを勝ち取らなければならない。僕は努力することを楽しめるタイプで、どんなことも与えられて当然とは考えない」
自らもセンターバックとしてプレーしていたバイエルンのヴァンサン・コンパニ監督は、ターにはデジレ・ドゥエやフヴィチャ・クヴァラツヘリアらを抑え込むだけでなく、長期的にもクラブの守備ユニットをより強く、より堅固にしていく力が備わっていると確信している。「加入した選手がすぐに心地よく感じられるのは大事なことだ。彼には本物のリーダーシップスキルがあり、ピッチ上で非常に声を出すタイプのディフェンダーだ」。過去にアンデルレヒトやバーンリーも率いた指揮官はそう語る。
コンパニのもとで仕事ができることは、彼がレヴァークーゼンからバイエルンへ移るという一大決心に間違いなく大きく影響した要因のひとつだった。ベルギー人監督は現役時代にハンブルクでもプレーし、当時地元の少年だったターは同じ町のライバルクラブであるアルトナで下積み時代を過ごしていた。
「僕はハンブルク生まれで、もちろん彼のキャリアは追いかけていた」と、ターはコンパニについて語る。「選手としても彼は素晴らしいリーダーだった。初めて話をしてすぐに、一緒に仕事をすることで多くのものが得られるとわかった。素晴らしい印象を受けたし、彼のもとで向上し続けていくことができる」
ターが自身の成長を次のステップへ進め、アトランタで土曜日正午にキックオフを迎える大一番でPSGの爆発的な得点力を抑える力になることができれば、バイエルンのファンにとっては最高に喜ばしいことだろう。ターのパートナーは、コンディションを取り戻したウパメカノが再び務める可能性が高い。ベンフィカ戦で復帰を果たしたウパメカノはフラメンゴ戦でも2試合連続で先発していた。
キム・ミンジェも回復へと向かっており、出場はなかったもののラウンド16のフラメンゴ戦でベンチメンバーに復帰。バイエルン守備陣がきわめて手薄となった2カ月ほど前の混乱は、完全に過去のものとなった。
一方で、序列に変化が生じてきた部分もある。韓国代表ディフェンダーやその他の候補者たちがバイエルン守備陣の新たな要を引きずり下ろすのは容易なことではないかもしれない。