1995年、バロンドールは史上初めて欧州の選手以外にも授与対象が拡大された。これにより、フットボール界で最も権威ある個人賞へと発展している。
これまで欧州以外では計17選手が受賞。アフリカの伝説ジョージ・ウェアに加え、ロナウド、リバウド、ロナウジーニョ、カカのブラジル代表4選手、そして史上最多8度の受賞を誇るリオネル・メッシらが世界一の称号を手にしてきた。また欧州からは、5度の受賞を誇るクリスティアーノ・ロナウドに加え、ジネディーヌ・ジダン、ルイス・フィーゴ、マイケル・オーウェン、パヴェル・ネドヴェド、アンドリー・シェフチェンコ、ファビオ・カンナバーロ、ルカ・モドリッチ、カリム・ベンゼマ、ロドリと歴史に名を刻む名選手たちが受賞している。
そしていよいよ、2025年のバロンドール受賞者が22日に決定する。そんな授賞式を前に、今回は「バロンドール一度も受賞したことない最高の選手トップ10」を紹介する。
4カ国で11個ものリーグタイトルを獲得し、今世紀ではメッシとC・ロナウドに次ぐゴール記録を誇る。彼より多くのトロフィーを掲げた選手は過去に6人しかいない。
しかし、イブラヒモヴィッチのバロンドール投票での最高順位は、PSG在籍時の2014年の4位。様々なクラブで歴史を作ってきた元スウェーデン代表FWだが、やはり最後までチャンピオンズリーグで優勝できなかったことが影響したようだ。それでも、同大会では124試合48ゴール、異なる6つのクラブでネットを揺らした史上唯一の選手である。
そのプレーはもちろん、強烈なパーソナリティと彼にしかできない発言ですべての人間を魅了したイブラヒモヴィッチ。本人が言うように、たとえバロンドールを手にしていないとしても、正真正銘のレジェンドであることは変わらない。
1994年から2010年にかけてレアル・マドリーで550試合出場228ゴールを記録。1997-98、1999-2000、2001-02シーズンのチャンピオンズリーグ制覇には欠かせない人物であり、フットボール界最大のクラブにおける史上最高の選手の1人だ。
彼が最も受賞に近づいたのは2000-01シーズン、ラ・リーガ6度目の優勝とチャンピオンズリーグ得点王に輝いた。しかし、僅差でリヴァプールで三冠を達成したマイケル・オーウェンにその栄誉を譲っている。結局その偉大なキャリアで一度もバロンドールを手にできなかったことは、彼が最後まで正当な評価をされなかったことを意味しているのかもしれない。
全世界のディフェンダーが憧れ、恋した偉大な「イル・カピターノ」。イタリア代表のチームメイトであったアレッサンドロ・デル・ピエロが「偉大な選手はいるし、ワールドクラスの選手もいる。だが、その域を超越する者たちもいるんだ。パオロは完璧なサンプルだよ」と断言した。おそらく、歴史上最も完成されたディフェンダーであり、今後も彼以上の選手は生まれないかもしれない。
ミランでの25年間で、5度のチャンピオンズリーグ制覇と7度のセリエA優勝を達成。さらにイタリア代表では。ワールドカップとEUROの両方で準優勝している。バロンドールを複数回受賞していても何ら不思議ではない選手だった。しかし信じられないことに、3位に入ったのもチャンピオンズリーグを優勝した2003年の一度だけである。
おそらく、史上最高のクラブチームと代表チームの“心臓”だった選手。バルセロナでの17年間でチャンピオンズリーグ4回、ラ・リーガ2回優勝し、スペイン代表ではEURO連覇とワールドカップ制覇を達成している。2009年~2012年にかけてバルセロナとスペイン代表は圧倒的な強さを誇り、その中心である彼も当然のように世界中で評価された。バロンドール投票でも毎年のようにランクインしたが、メッシが受賞する一方で、常に3位に終わっている。少なくとも、一度は彼に栄誉が渡っても良かったのかもしれない。
確かにメッシのようなゴールは生み出せなかったかもしれないが、「試合を支配する」という点において彼の右に出る選手は歴史を振り返ってもほとんどいない。2015年にバルセロナを去った際、アンデル・エレーラが「彼のような選手は二度と現れない。バルセロナとスペイン代表のスタイルは、彼によって形作られたのだ」と語ったが、これがすべてを意味するだろう。
チャビとは異なり、一度もバロンドール投票でトップ3に入ったことがない。これは同賞の歴史において最も不可解なことの1つだ。2010年代において、ルイス・スアレス以上に見応えがあり、予測不可能な選手はいなかった。
2013-14シーズンには当時のプレミアリーグ記録である31ゴールを奪い、リヴァプールを優勝争いに導いたが、その年の最終候補30名にすら入らなかった。2014年ワールドカップでジョルジョ・キエッリーニに噛みつきさえしなければ、C・ロナウドやメッシと肩を並べる存在だったかもしれない。その後移籍したバルセロナでは、デビューシーズンで25ゴールを奪い、歴史的な三冠に貢献。次のシーズンには、公式戦59ゴールを叩き出した。だがやはり、メッシの影から完全には抜け出すことができなかった。
少なくとも2度は受賞すべきだった。2020年、バイエルン・ミュンヘンで55ゴールを記録し、歴史的な三冠を達成。同年の最有力候補であったことは間違いない。しかしコロナウイルスによるパンデミックの影響で、バロンドール自体が残酷にも注視となった。翌シーズンはそれを上回る62ゴールを叩き込んだが、メッシにその座を譲っている。
バイエルンでの8シーズン中、5シーズンでブンデスリーガ30ゴール以上を記録。バルセロナ加入後も147試合で101ゴール。さらにポーランド代表としても、歴代最多85ゴールを奪っている。継続性という意味では、おそらく史上最高のストライカーだ。だがしかし、彼は不運にもバロンドールに愛されなかった選手として記憶されることになりそうだ。
2017年に史上最高額でPSGに移籍しなければ、最終的にメッシに代わるバルセロナの象徴になっていたかもしれない。世代を代表する特別な才能であり、バルセロナでの186試合で105ゴール76アシスト、8つのタイトルを獲得した。また、ブラジル代表としても史上最多79ゴールを奪っている。間違いなく歴史に名を残す選手である。
とはいえ、ピッチ外の派手な行動ばかりに注目が集まり、おそらく多くの人間が「全盛期を無駄にした」と考えているだろう。もし彼がより良い判断を下し、ピッチ内のことに集中できていれば……そう思わざるを得ない。
2017年、ロビー・サベージは『BBC』で「ウェイン・ルーニーはイングランド史上最も過小評価された選手」と評したが、これは当時も今も変わらない。16歳で衝撃的なデビューを飾った瞬間からスパイクを脱ぐその時まで、不運がありながらもイングランド・フットボールを象徴する存在であった。マンチェスター・ユナイテッドではプレミアリーグ通算5回優勝、歴代最多253ゴールに加えて142アシストも記録。チャンピオンズリーグ、FAカップ、ヨーロッパリーグと獲得できるタイトルのほぼすべてを手にしている。
しかし驚くべきことに、バロンドール投票では2011年の5位が最高位。理由はどうであれ、クラブや代表チームの結果が出ない時は常に最も批判される選手であり、それが受賞に影響したのかもしれない。とはいえ、イングランド出身選手として史上最高の存在である。
プレミアリーグの歴史には、アラン・シアラーやエリック・カントナ、ルーニーやクリスティアーノ・ロナウド、近年ではケヴィン・デ・ブライネやモハメド・サラーに至るまで、数多くの偉大な選手たちが名を刻んでいる。しかし、その中でもひときわ輝く存在が一人いる。そう、ティエリ・アンリだ。アーセナルの象徴的存在である彼は、まさに「Poetry in Motion(優雅な存在)」そのものであり、全盛期の彼を止めることは不可能だった。
1999年にユヴェントスからアーセナルに加わると、クラブ史上最多226ゴールを奪い、史上最多タイとなる4度のプレミアリーグ得点王を獲得。伝説的な“インビンシブルズ”のメンバーだ。UEFA年間ベストイレブンにも4シーズン連続で選出されており、現在に至るまでアーセナルの象徴である。
そんなアンリはゴールを奪うだけでなく、最も完成されたアタッカーとしてアシスト能力も傑出していた。2002-03シーズンには、プレミアリーグ最多タイ記録の20アシストを記録している。このシーズンは公式戦通算32ゴールも奪い、1選手としては史上最高のシーズンを送っていた。しかしバロンドール投票では、パヴェル・ネドヴェドに次ぐ2位に終わっている。
「メディアはいつも『メッシとC・ロナウド、どちらが最高?』と聞いてくるけど、アンドレス・イニエスタこそがNo.1だ。ピッチ上で最も難しいことを簡単にやってのける。あのボールコントロールは魔法のようだよ」。2012年、ダビド・シルバはこう語っている。当時は多くの人の共感を得なかった発言かもしれないが、同じ選手の目線から見れば彼がいかに異次元だったかを感じさせる言葉だ。
小柄で華奢な体ながらも、肩の動き1つだけで相手を翻弄し、完璧なコントロールでボールを収め、我々凡人では絶対に見つけられないパスコースを簡単に通してしまう。またファイナルサードでも決定的であり、2008-09シーズンのチャンピオンズリーグ準決勝チェルシー戦、2010年ワールドカップ決勝オランダ戦など、最も重要な瞬間にゴールを奪う力も兼ね備えていた。
2010年のイニエスタは、バロンドールを受賞すべき選手だった。しかし、やはりバルセロナのチームメイトであるメッシに次ぐ2位に終わっている。だが2018年、主催するフランス・フットボール誌はイニエスタに謝罪。バロンドールを与えなかったことを「民主主義の異常」としている。
だが、イニエスタが史上最高の選手の1人であるということを証明するのに、バロンドールは必要ない。ジョゼップ・グアルディオラのこの言葉が全てであるからだ。
「アンドレスが偉大な選手である理由は、空間と時間の関係を完璧に掌握しているからだ。無数の選手に囲まれた時でさえ、彼は常に正しい道を選ぶ。アンドレスは全てを見渡し、何をすべきか理解する能力だけでなく、それを実行する才能も兼ね備えている。彼はラインを突破できる。見抜いて、実行するのだ。それは彼にしかできないだろう」