エラーコード %{errorCode}

本当に欧州スーパーリーグ構想は「死んだ」のか?レアル・マドリー&バルセロナが進めるチャンピオンズリーグ改革

GOAL

カタルーニャのラジオ局『RAC1』の報道によると、バルセロナは欧州スーパーリーグ構想からら離脱する意向のようだ。これにより、この構想を推進するのはレアル・マドリーだけとなった。事実上の“死”を迎えたと言っていいかもしれない。

しかしその一方では、バルセロナとレアル・マドリーは欧州スーパーリーグ構想の支援団体である『A22スポーツマネジメント』と共同で、現チャンピオンズリーグのフォーマット変更に関して7回も協議を重ねていると報じられている。昨季に新フォーマットが採用されたばかりであるにもかかわらず、だ。

今、ヨーロッパ・フットボールの最前線では何が起きているのだろうか?

文=マーク・ドイル

欧州スーパーリーグ構想の脅威

images-v3-getty-1251753784-crop-MM5DEOJZGI5DCNRYGM5G433XMU5DAORRGM2Q====-GettyImages-1251753784

元UEFA最高経営責任者ゲルハルト・アイグナーは、かつて欧州スーパーリーグ構想を「幻想」と一蹴した。しかし、その影響力は常に現実のものだった。元ACミラン理事ウンベルト・ガンディーニが指摘したように、「1993年のチャンピオンズリーグ創設」は実質的にシルヴィオ・ベルルスコーニが欧州エリートクラブによる独立リーグ創設を試みたことに対するUEFA側の対応だった。

また1999年、ベルルスコーニが再びスーパーリーグ創設を画策したわずか2年後、UEFAがチャンピオンズリーグの参加チーム数と試合数を増やし、さらなる試合創出のためにグループステージ制を導入したのも決して偶然ではない。『ウォール・ストリート・ジャーナル』のジョシュ・ロビンソンは以前、『GOAL』の取材に対してこう語っている。

「欧州の主要クラブがフットボールの進む方向を気に入らない時は、常にスーパーリーグが切り札となる脅威だ。自分たちに有利なように事態を動かすための、非常に便利な手段なのだ」

したがって、コロナウイルスによってヨーロッパ・フットボールの荒唐無稽なビジネスモデルの財政的脆弱性が露呈した2020年に、ESL(欧州スーパーリーグ構想)の議論が活発化したのは全く驚くべきことではなかった。レアル・マドリーのフロレンティーノ・ペレス会長は、年次総会でこう語っていた。

「もはや以前と同じ状態に戻ることはない。そして、パンデミックが全てを変えた。我々全員がさらに弱まっているが、フットボールも同様なのだ」

要するに、おそらく前例のない不確実性の時代にあって、ペレスや欧州中のクラブ会長たちは財政的保証を求めた。だからこそ、彼らはESLを復活させたのだ。金融専門家のキーラン・マグワイアが『GOAL』に語ったように、「フットボールにおける真の金脈は、欧州カップ戦にある」からである。

構想の誕生

images-v3-getty-2161631659-crop-MM5DINJTHE5DENJVGM5G433XMU5DAORQ-GettyImages-2161631659

絶望と強欲が結びつき、2021年4月18日、JPモルガンが支援する欧州スーパーリーグ構想が恐ろしい早さで旗揚げされた。「欧州を代表する12のフットボールクラブは本日、創設クラブが運営する新たなミッドウィーク開催の大会『スーパーリーグ』を設立することで合意したことを発表する」と発表されている。

創設クラブとして参加したのは、ミラン、アーセナル、アトレティコ・マドリー、チェルシー、バルセロナ、インテル、ユヴェントス、リヴァプール、マンチェスター・シティ、マンチェスター・ユナイテッド、レアル・マドリー、トッテナム・ホットスパーである。シーズン開始前までにさらに3クラブが加わる見込みで、開幕は可能な限り早期に実施される予定だった。

「今後、創設クラブはUEFAおよびFIFAとの協議を進め、新たなリーグとフットボール全体にとって最善の結果をもたらすべく協力関係を構築していく所存だ。スーパーリーグの創設は、世界的なパンデミックが既存の欧州フットボール経済モデルの不安定さを加速させた時期に実現した。さらに、創設クラブは長年にわたり、各シーズンを通じた既存の欧州カップ戦のクオリティを向上させるとともに、トップクラブと選手が定期的に競い合う形式を創出することを目標としてきた」

「パンデミックは、欧州フットボールのピラミッド全体に利益をもたらす価値と支援を高めるために戦略的ビジョンと持続可能な商業的アプローチが必要であることを示した」

「ここ数カ月、欧州カップ戦の将来的な形式について関係者との広範な対話が行われてきた。創設クラブは、これらの協議後に提案された解決策が、よりハイクオリティな試合の提供やフットボールピラミッド全体への追加資金供給といった根本的な課題を解決していないと確信している」

イングランド勢の撤退

images-v3-getty-1232482725-crop-MM5DIOJUHE5DENZYGQ5G433XMU5DAORSGU4A====-GettyImages-1232482725

ESLの当初のフォーマットは、バスケットボールのユーロリーグに着想を得たものだ。これは当然である。ペレスのレアル・マドリーが参戦していた大会であり、新たな大陸規模の大会を提唱する際に彼が度々言及していたものだからだ。合計20チーム(15の常設メンバーと、国内リーグの結果に基づいて毎年予選を通過する5チーム)が参加し、10チームずつに分かれて2つのリーグ戦を行い、決勝トーナメントを経て優勝チームを決定するというものだ。

しかしバイエルン・ミュンヘン、ボルシア・ドルトムント、パリ・サンジェルマンの3クラブが招待を即座に辞退したことは、この構想の行方を暗に示していた。その後、サポーター、選手、フットボール協会から猛反発を受けたイングランドの6つのクラブは、公式発表から3日後にこのプロジェクトから撤退することになる。リヴァプールとマンチェスター・ユナイテッドは「主要な利害関係者との協議が影響した」とし、トッテナムのダニエル・レヴィ会長は「ESLによって引き起こされた不安と動揺」を謝罪し、アーセナルは「過ちを犯した」と認めている。

「恐怖」

images-v3-getty-1232492484-crop-MM5DIMBQGA5DEMRVGA5G433XMU5DAORSGA3A====-GettyImages-1232492484

当然、ペレスはイングランド勢の撤退に激怒した。しかし、彼らに続いてアトレティコ、インテル、ミランも撤退を表明。当時レアル・マドリー会長は、『El Larguero』で具体的な名前を出さなかったものの、マンチェスター・シティを非難している。

「あるイングランドクラブが当初から乗り気でなく、それが他のクラブにも波及した。契約には署名したが、彼らが納得していないのは明らかだった」

「クラブ名は伏せるが、マンチェスターのクラブは『この計画はリーグを殺す』『スポーツとしての価値を損なう』『フットボールの終わりだ』と主張するキャンペーンを行っていた。特権階級の者たちは、たとえフットボールが崩壊しようともそれを失いたくない。火曜日にイングランド側から連絡があり、対応策を協議した。彼らは努力したが『これはやらない』と結論づけたのだ」

「なぜか? 彼らは場の空気を読んだのだ。UEFAがこれをショーに変えてしまった。まるで我々が原爆を落としたかのようだった。説明が不十分だったかもしれないが、彼らは機会すら与えなかった。なぜか? 彼らにそうさせなかったからだ。これほどの攻撃性は見たことがない。組織的なものだった。翌日には完全に潰された。待ち構えていたんだ。我々の行動を予見していたのだろう。脅迫や侮辱が浴びせられ、まるで我々がフットボールを殺したかのような扱いだった」

「プレミアリーグのクラブオーナーの大半はイギリス人ではない。彼らは金儲けが目的ではない。アメリカにチームを持ち、スポーツを愛している。しかし、予想外の立場に追い込まれた。年配者たちは恐怖に駆られたのだ」

ESL三大支持クラブ

images-v3-getty-2193294758-crop-MM5DIMBQGM5DEMRVGI5G433XMU5DINRXHIYA====-GettyImages-2193294758

レアル・マドリー、バルセロナ、ユヴェントスの「ESL三大支持クラブ」とイングランド勢の決定的な違いは、プレミアリーグの財政力にある。その巨額の放映権収入によって、もはやプレミアリーグ自体がスーパーリーグとも言える状況だ。これを考えると、イングランド勢は本当の意味で新たな大会を必要としていなかった。

一方、前会長ジョセップ・マリア・バルトメウの下で深刻な財政管理不行き届きによって破綻寸前まで追い込まれたバルセロナは、ESLという約束された収入機会を逃すわけにはいかなかった。ジョアン・アポルタ会長は「必要不可欠」とし、創設メンバー入りを断れば「歴史的な過ちになった」とまで断言している。その結果、ペレスとラポルタ、そしてユヴェントスのアンドレア・アニェッリは、イングランド勢抜きでもプロジェクトは継続すると主張した。

ESLは声明で「欧州フットボールの現状は、変革を必要としている。現行システムが機能不全に陥っているため、新たな欧州カップ戦を提案する」と改めて訴えている。

「我々の提案は、パンデミックによりフットボール界全体が直面した財政難の克服を含め、フットボールピラミッド全体に資源と安定性をもたらしつつ、スポーツの発展を可能にすることを目的としている。また、全てのフットボール関係者に対し、実質的に増額された連帯金を提供するものである」

「イングランドのクラブが圧力を受けて離脱を発表したにもかかわらず、第三者の訴訟からスーパーリーグを保護する裁判所の決定が示す通り、我々の提案は欧州の法律と規制に完全に準拠していると確信している」

「現状を踏まえ、プロジェクトの再構築に向けた最適な措置を再検討する。常に念頭に置くのは、ファンに最高の体験を提供すると同時に、フットボールコミュニティ全体への連帯金の増額を図るという我々の目標である」

「歩く屍」と1つの「勝利」

images-v3-getty-2191063760-crop-MM5DINBSHA5DENBZGE5G433XMU5DAORRHE2Q====-GettyImages-2191063760

残る3クラブは『A22』との協力を継続しつつ、ESLの修正案を次々と提示したが、追加の支持は得られなかった。サポーターの多くがUEFAに対して疑念を持っているにも関わらず、ESLが真の解決策だと考える者はほとんどいなかった。

その結果、2023年2月に発表されたプロジェクト復活に向けた10項目のマニフェストは広く嘲笑されている。フットボールサポーター協会のケビン・マイルズ最高経営責任者は、「ESLという歩く屍が、ゾンビのように再び痙攣している。彼らの新たな案は、当初提案した閉鎖的なシステム(大規模なファン抗議を招いた)ではなく『オープンな競技会』を設けるというものだ。もちろん、欧州トップクラブのためのオープンな競技会は既に存在する。それがチャンピオンズリーグだ」と語っている。ラ・リーガのハビエル・テバス会長も、「フットボールを騙そうと老婆に化けた狼だ」と吐き捨てている。

しかしESL三大クラブは、2023年末に1つの「勝利」を掴んだ。欧州司法裁判所(ECJ)が「FIFAとUEFAが2021年に加盟クラブのESL参加を禁止した行為は違法」と判決したからでである。ペレスはその後、「今後数日でこの判決の範囲を慎重に検討するが、歴史的に極めて重要な二つの結論が導かれると確信している」と語った。

「第一に、欧州クラブフットボールは独占状態ではなく、今後再び独占されることはない。第二に、今日からクラブは自らの運命の主人となる。要するに、自由の欧州が再び勝利を収め、フットボールとそのファンも勝利した日だ」

「2年以上にわたり我々が受けた圧力に対し、今日、法と理性と自由が勝利した。このためレアル・マドリーは今後もフットボールのために尽力する」

ユニファイ・リーグ構想へ

images-v3-getty-1243990433-crop-MM5DKMBQGQ5DEOBRGU5G433XMU5DAORSGYYQ====-GettyImages-1243990433

だが、欧州司法裁判所での「勝利」は、ペレスが思い描いたほどESLを支持するものではなかった。UEFAはすでに欧州司法裁判所が「違法」と判断した規則を改正しており、UEFAやFIFAの支援なしに対抗リーグを設立することは依然として不可能だった。さらに、マンチェスター・ユナイテッドをはじめとする複数クラブが直ちに声明を発表。ESLへの再参加に「全く関心がない」ことを表明した。

そして2024年夏、ユヴェントスが支援を撤回したことでさらなる重大な打撃を受けている。アニェッリ体制のユヴェントスは独立リーグの熱狂的な支持者であり、アニェッリはESLの設立にあたって欧州クラブ協会(ECA)会長職の辞任、さらにはUEFA会長アレクサンデル・チェフェリンとの友情関係まで破棄した。しかしそのアニェッリは、2022年11月にクラブの財務慣行に関する複数の調査を受けて会長職を辞任。ESLは最大の支持者をまた1人失ったのである。

しかし、ESLの支持者たちはユヴェントスの離脱にも動じず、欧州フットボールを支配するUEFAに法廷で挑戦し続けた。そして昨年12月、改訂版フォーマットのES「ユニファイ・リーグ構想」を発表した。96チームが参加する4部制の新たな大会だ。

『A22』の共同創設者のジョン・ハーンは、「幅広いクラブ、リーグ、ファンの声に真摯に耳を傾け、これらの変更により多くの支持を得られると確信している。このリーグは、『Netflix』などのストリーミングサービスで配信される予定だ。現時点でクラブからの公的な支持は期待していません。だが論理的には、UEFAとFIFAによるユニファイ・リーグの正式承認後には得られるだろう」と期待を込めて語っている。

新生チャンピオンズリーグ?

images-v3-getty-2238611445-crop-MM5DGMBQGA5DCNRYHA5G433XMU5DAORRGAYQ====-GettyImages-2238611445

しかし、「ユニファイ・リーグ構想」も実現は困難になった。『RAC1』によると、バルセロナはUEFAがチャンピオンズリーグに施した財政面・構造面の変更に満足しており、独立リーグの必要性を認識していない模様。UEFAのチェフェリン会長は、バルセロナとパリ・サンジェルマンの一戦を観戦に訪れており、ラポルタや現ECA会長のナセル・アル=ケライフィとも握手を交わした。

だが、彼らはアプローチを変えただけかもしれない。『ムンド・デポルティーボ』によると、バルセロナ、レアル・マドリー、そして『A22』は、紛争集結に向けてUEFAと8カ月に渡って秘密裏に協議を重ねており、合意が目前に迫っているという。

同紙によれば、ESL推進派は要求するのは主に2点。1つは大会フォーマットで、ペレスらは2027年以降、36チームが1つのリーグを戦う「現リーグフェーズ形式」ではなく、18チームずつ2つのリーグに分けて戦う方式を求めている。そして重要なのは、グループ1がUEFAランキング上位18クラブで構成され、同グループ内でのみ対戦する点だ。これにより、欧州の伝統的強豪クラブ間での収益機会が増大する。上位8チームは直接決勝トーナメント進出、9~16位チームはグループ2上位8チームとのプレーオフラウンドに臨む。

そしてもう1つは、『A22』が求めるグローバル配信プラットフォームの導入。地域ターゲティング広告付きの無料版、または「少額」の広告なしサブスクリプション版の2つの選択肢を視聴者が選択可能な配信プラットフォームを求めている。

ビッグクラブに有利なフォーマットと新プラットフォームの導入、UEFAはこの要求を前向きに検討しているようだ。

欧州スーパーリーグ構想は「死んだ」のか?

では、最初の疑問に戻ろう。本当に欧州スーパーリーグ構想は「死んだ」のだろうか?

ある意味ではそうだろう。当初の構想は完全に破棄されようとしている。しかし、UEFAが昨季から開始したチャンピオンズリーグの新フォーマット、そして協議を重ねているさらなるフォーマット変更は、ESLがまさに要求していたものどおりではないのだろうか?欧州各国のクラブに平等な機会を与えるのではなく、ビッグクラブだけが“得をする”独立リーグと何が違うのだろうか?

これまでのフットボールの歴史で、欧州ビッグクラブたちはより大きな分け前を求め続けていた。そして、まさにそれが実現しようとしている。ビッグクラブ同士の試合数はさらに増大し、収益も増加するだろう。独立リーグの脅威は、再び目的を果たすことになりそうだ。

今や「チャンピオンズリーグ」はまやかしの名前だ。名実ともに「欧州スーパーリーグ」が誕生しようとしている。