2021年に日本ハムからドラフト2位で指名された有薗直輝内野手は、高卒4年目の2025年シーズンに2軍で圧倒的な成績を残した。イースタン・リーグで首位打者、最多本塁打、最高出塁率の打撃3冠を獲得し、打率3割、15本塁打以上を同時に達成した。これはファーム全体でも6年ぶりの記録であり、直近10年間でも達成者は6人しかいない。
成績向上の背景にあるのが、入団当初の課題だったコンタクト力の改善である。プロ1、2年目は空振りの多さが目立ち、コンタクト率はファーム平均を10ポイント以上下回っていた。しかし、プロ3年目の昨季に大きく改善し、今季は76.3%まで上昇。ファーム平均に迫る水準まで到達し、打撃の安定感を大きく高めた。
選球眼の向上も顕著である。ボールゾーンスイング率は昨季まで30%前後で推移していたが、今季は22.6%まで低下した。特に低めのボール球へのスイング率は前年から9ポイント減少し、見極めの精度が飛躍的に向上した。今季はイースタン・リーグ3位の43四球を記録し、四球割合も7.2%から11.7%へ上昇。出塁率を押し上げる重要な要素となった。
持ち味である長打力も、数字の裏付けを伴って進化した。フライ割合はプロ1年目から50%以上を維持し、今季も例年と大きな差はなかったが、フライ打球が本塁打となる割合を示す「HR/FB」は14.1%まで上昇した。1軍で2ケタ本塁打を放った36選手の平均が9.6%であることを踏まえると、2軍成績とはいえ高水準である。フライ打球時の打率.480が示す通り、質の高い打球が増えていた。
打球方向にも明確な変化が見られた。昨季は9本塁打のうち7本が左方向だったが、今季はセンター、逆方向への長打が増加。本塁打はレフト9本、センター5本、ライト4本と、方向を問わず量産した。確実性の向上と広角への対応力が、打撃全体の安定感を支えた。
8月13日には1軍でプロ初安打を記録し、本人も「この4年間で一番いいシーズン」と振り返った。主に守る三塁と一塁には郡司裕也捕手、清宮幸太郎内野手、野村佑希内野手、アリエル・マルティネス内野手と競争相手が多いが、その中に割って入るだけの可能性を示した。プロ5年目を迎える2026年シーズン、二軍三冠で培った打撃を一軍の舞台で再現できるかが注目される。
※文章、表中の数字はすべて2025年シーズン終了時点(「パ・リーグ インサイト」データスタジアム編集部)
(記事提供:パ・リーグ インサイト)