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なぜPSGはチャンピオンズリーグ決勝に進出できたのか?世界が抱く“PSG像”を破壊したルイス・エンリケの手腕

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パリ・サンジェルマン(PSG)の監督職は、長年“毒杯”とみなされてきた。カタール資本のオーナーは金に糸目をつけずに無制限の支援を約束するが、そのオーナーと世界的スーパースター、さらにサポーターやメディアから強烈なプレッシャーにさらされることが確実だからだ。

この重圧にカルロ・アンチェロッティ、ローラン・ブラン、ウナイ・エメリ、トーマス・トゥヘル、マウリシオ・ポチェッティーノ、クリストフ・ガルティエといった数々の名将が苦しんできた。全員がそれぞれタイトルを獲得したが、結局はクラブが何よりも望んでいるビッグイヤーに手が届かなかった。

こうした前任者たちが最重要ミッションに失敗する中で、ルイス・エンリケは悲願達成まであと一歩まで迫っている。では、なぜ彼はそこまでチームを導くことができたのだろうか? スペイン人指揮官がクラブにもたらした変化を読み解く。

初年度の失敗

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2023-24シーズン、PSGは3試合残してリーグ・アン制覇を達成した。12シーズンで10回目のリーグ優勝。しかし、これはいわば“当たり前”のことだった。ルイス・エンリケが初年度で求められていたのは、もちろんビッグイヤーの獲得だ。

しかし、その夢は準決勝で潰えることになる。2度の移籍市場で4億3000万ユーロに上る資金を投じたにも関わらず、ドルトムント相手に2試合合計0-2で敗退。確かに「死の組」を突破するほど欧州大会では勢いに乗っていた相手だったが、戦力・資金力の差を見ればPSGが圧倒的優位だった。その結果として、ルイス・エンリケも例に漏れず強烈な批判にさらされている。

だが今回ばかりは、ナセル・アル・ケライフィ会長は公の場で明確に擁護するコメントを残している。『レキップ』で「(解任説は)馬鹿げているし、信じられないね。これが我々に影響を与えることはない。短期、中期、長期の戦略を掲げており、今の監督や選手、チーム全体に完全な信頼を寄せているんだ」と明言していた。

転機

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そして昨夏、PSGの歴代最多得点記録保持者であり絶対的な中心だったキリアン・エンバペが退団することになる。契約満了に伴うフリー退団は、ビジネス的には痛手だった。だが、これがクラブにとって転機にもなった。

エンバペのシーズン開幕前の騒動やレアル・マドリーとの関係性は、常にルイス・エンリケにとってイライラの種になってきた。また、ピッチ内外での振る舞いも問題視され(途中交代直後にスタンドへ直行することも)、「クラブよりも大きな存在」になろうとする姿はチームに影を落としていた。いくらピッチ上でのパフォーマンスが世界屈指であろうと、ポジティブな面以外の影響が大きくなりすぎていたのである。

だが“スター軍団”時代の最後の大物が去ったことで、ルイス・エンリケとルイス・カンポスSDはより団結力と勤勉性を重視したチーム構築が可能になっている。確立されたスターよりも有望な若手選手をプロジェクトの軸に据えたことで、しっかりと「チーム」として機能することが可能になった。エンバペの退団がクラブを変えたいって過言ではない。

完璧だった補強活動

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そしてエンバペへ支払っていた巨額の資金を、ルイス・エンリケとカンポスSDは効果的に運用している。

欧州の列強たちが慎重になっている中、PSGは7000万ユーロという大金を即決で支払いジョアン・ネヴィスを獲得。さらにフランクフルトからウィリアン・パチョを4000万ユーロで、デジレ・ドゥエを5000万ユーロで獲得した。おそらく、どの選手も当時の市場では「適正価格」を上回る金額だっただろう。だが、今季の活躍を見て欲しい。全選手が「お買い得」だったと言えるはずだ。1月に獲得したフヴィチャ・クヴァラツヘリアにも同じことは言える。

ルイス・エンリケは「もちろんキリアンは残ってほしかった。みんな大好きだったからね」としつつも、「それでもチームは驚くべきレベルで、非常にポジティブに反応してくれた。昨季に『攻守両面でもっと良くなれる』と言った時は勇気が必要だったが、数字が証明しているよ。選手たちは挑戦と受け止めてくれたんだ」と語っていた。

彼の発言通り、今シーズンの総得点数は「147」。これはエンバペ、リオネル・メッシ、ネイマールが並んでいた“MMN”時代(120)を大きく上回る結果である。

明確なメッセージ

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とはいえ、すべてが順調だったわけではない。特にチャンピオンズリーグでは、2戦目でアーセナルに0-2と完敗。その後もPSVと1-1、アトレティコ・マドリーに1-2、バイエルンに0-1と4試合勝利がなく、敗退危機にまで追い込まれている。

ルイス・エンリケはアーセナル戦後、選手たちへ不満を隠そうとはしなかった。要求するレベルに達していないことはっきりと指摘。また「期待に応えていなかった」ウスマン・デンベレをメンバーからも外している。

「この種の試合で必要な基準から遠く離れていた。アーセナルはプレッシャーと強度においてはるかに優れていた。ピッチ上でデュエルを一つも勝てない状況では、ポジティブな結果を期待するのは不可能だ」

スペイン人指揮官は、もうこのチームに特別扱いは存在せず、また彼の求める基準に達しなければプレーできないことを明確にしている。これが後の結束力と献身性につながったのは間違いない。

ウスマン・デンベレの覚醒

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そして彼の姿勢は、デンベレがようやく自分を見つめ直すキッカケにもなった。ドルトムント、バルセロナでは規律面の問題がパフォーマンスに直結、奔放な振る舞いが悪影響を及ぼしていたが、ルイス・エンリケの下でようやくチームワークの重要性を理解している。

「ここでは全員が攻撃し、守備もする。フォワードが守備をしないなら、スタメンでは出られない。監督は僕らに、最後まで信じ続けるよう言い聞かせている。それがアイデンティティを形作ったんだ。最年少から最年長のまで、誰も最後の笛がなるまで諦めないんだよ」

またルイス・エンリケの功績は、デンベレのメンタル面だけに及ばない。爆発的なスピードと技術からウイングを主な主戦場としていた彼を前線中央に配置。常にライン間でスペースを探しながら神出鬼没に顔を出し、フィニッシュまで絡むことを求め、それがリヴァプール、アーセナルといった強豪撃破の鍵となった。

2025年に入ってから欧州5大リーグで最多のゴール関与数を誇るデンベレは、「これが僕がプレーした最高のチームかはわからない。バルセロナではメッシというGOAT(史上最高の選手)もいたからね。でも、今が一番楽しいチームなんだ」と手応えを感じているようだ。

悲願達成へ

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そして、ルイス・エンリケの下で開花したのはデンベレだけではない。指揮官を「天才」と仰ぐアクラフ・ハキミは「これまで想像できなかったレベルに達したよ。より完成された選手になることができた。彼はたった1年で素晴らしいチームを作ったよね」と絶賛。またネヴィスも「シンプルだけど効果的で、これまで経験したことがなかったよ」と称えている。

さらにチームの根幹を担うヴィティーニャも、「開幕時からチームの原則をみんなが十分に理解していた。監督はそこに流動性を加えようとしていたんだ。今は6番、8番、10番をどの選手が務めるかわからないし、3トップも誰がどのポジションにいるかもわからないはずだ。監督が確立したこのシステムが鍵だったと思う。相手は本当に嫌だろうね」と指揮官のが徹底したプランこそが躍進の鍵だったと認めている。

だがルイス・エンリケ最大の功績は、チームの団結と勝者のメンタリティを植え付けたこと。主将マルキーニョスは「彼は選手に対してとても厳格だけど、指示は明確だ。そして常にプラスアルファをもたらしてくれる。試合中もそのパーソナリティと経験でを活かして、僕らに迷いを与えない。それが偉大な監督たらしめていると思うよ」とし、選手と裏表なく接することで信頼と安心がチームに広がっていったことを明かしている。これこそ、今のPSGが“チーム”になれた最大の要因だ。

これまでアンチェロッティやトゥヘル、ポチェッティーノといった名将でさえ、PSGでのビッグイヤー獲得を成し遂げることはできなかった。しかし、これまでのPSGのイメージを破壊したルイス・エンリケこそ、悲願のビッグイヤーを掲げるにふさわしい指揮官なのかもしれない。