ディリアン・ホワイトの軌跡　挫折を乗り越えモーゼス・イタウマとの対決へ | ボクシング

ディリアン・ホワイトは、サウジアラビアでモーゼス・イタウマを撃破できれば、夢見た世界王者への復活を果たすチャンスをつかむ。

ホワイトは約15年にわたるキャリアを経て、ボクシングのあらゆる局面を経験してきた。WBCヘビー級タイトルを目指してタイソン・フューリーに敗れ、さらにアンソニー・ジョシュアとの再戦も無念に終わったことから、多くの人々が彼の再起を諦めた。

しかし、今やボクシング界の未来を担う若手の一人と対峙するホワイトには、ただの試金石ではない、危険な実力者としての真価を示す機会がある。

では、ホワイトがどのようにしてこの舞台に戻ってきたのか。その波乱に満ちたキャリアを振り返る。

世界タイトル挑戦

WBCのナンバーワンコンテンダーとして1,000日以上待ち続けたホワイトに、ついに頂点への道が開かれた。

しかし、世界タイトルは簡単には手に入らない。相手はヘビー級の王者、タイソン・フューリーだった。

ウェンブリー・スタジアムで94,000人の観衆を前にしたホワイトはキャリア最大の試練に挑むも、敗れた。

体格や技術面でフューリーに劣るホワイトは、フューリーのジャブによってチャンスを徐々につぶされ、最終的には右アッパーで試合を終わらされた。

同年、ホワイトはジャーメイン・フランクリンを下すも、体調も万全ではなく、モチベーションも感じられなかった。

2023年にはアンソニー・ジョシュアとの再戦を前にしたドーピング検査の陽性反応により1年間のブランクを強いられたが、最終的には無実を証明した。

このように、ホワイトのこれまでのキャリアはたび重なる挫折で彩られてきた。

プロデビューと初期の論争

プロボクサーになる前から、ホワイトには論争がつきまとっていた。アマチュア時代、アンソニー・ジョシュアを下すなど有望な才能を示したが、『AJ』が英国オリンピックチームに加わったのに対し、ホワイトはプロのキックボクサーとしての経歴があったことからイングランド・ボクシングとの論争を経て、2011年にプロに転向した。

デビュー後、ホワイトは9連勝を飾り、そのうち6試合でノックアウト勝利を収めた。しかし2012年、シャーンドル・バローグ戦での禁止物質検出により２年の出場停止を受ける。

アンソニー・ジョシュアとの因縁

活動停止期間を終えたホワイトは、その後、5人の相手を次々とノックアウトしてゆく。2015年にはブライアン・ミントを下してWBCインターナショナル・シルバー・タイトルを獲得した。

ホワイトはWBCランキングで地位を回復し、ジョシュアとの因縁再びという形になった。

試合は英国、コモンウェルス、WBCインターナショナルのヘビー級タイトルを賭けたものだった。その意気込みと共にファンの注目を集めた試合は、期待以上に過激なものとなり、両者が7ラウンドにわたり激しい打撃戦を繰り広げた。最終的にジョシュアの右アッパーでホワイトは意識を失い、敗れ去った。

再起とペイ・パー・ビューのスターへの道

英国ヘビー級史に残る有望な若手と対峙する大胆な挑戦ののち、ホワイトは再び大舞台へと這い上がるための努力が必要だった。デイブ・アレン、デレック・チゾラ、ジョセフ・パーカーらに勝利してゆく。特に元世界王者パーカーを相手に第12ラウンドでのダウンを耐え抜いた試合では、ペイ・パー・ビューで初めてメインイベントを務めた。

続くデレック・チゾラとの二連戦では、11ラウンドでの強烈なノックアウト勝利で対戦を締めくくると、続くオスカル・リバス戦ではやや精彩を欠く形であったが勝利し、WBC暫定チャンピオンの称号を手にすることができた。

アレクサンダー・ポベトキン戦の敗北とリベンジ

ホワイトは念願のタイトル挑戦の一歩手前に見えたが、その前に2020年、COVID-19パンデミックのまっただ中、アレクサンダー・ポベトキンと対戦する必要があった。

快勝目前に見えた中、ポベトキンの左アッパーがホワイトにキャリア2度目の敗北をもたらし、タイトルへの道を阻んだ。

即座に再戦を求めたホワイトは、その決意と共にポベトキンを4ラウンドで下し、タイソン・フューリーのWBC王座への挑戦権を再び手中に収めた。

「最後の大舞台」への挑戦

ホワイトにとって慣れ親しんだ逆境を乗り越えることは、これまでも珍しいことではなかった。しかし、今回はイタウマ戦で勝利を収めるか少なくとも記憶に残る試合を行えば、ヘビー級での存在感を再び示すことができるだろう。

トレーナーのバディ・マクガートは、この試合がホワイトにとってキャリアの中で最も重要な戦いの一つだと指摘している。もしアップセットに失敗すれば、若手選手の踏み台となってしまうリスクがあるからだ。

マクガートは「ディリアンにとって、この試合の後に明日はない。このような試合に負ければ、若い選手の歩みを助ける役目を果たすだけだ。これが彼の王座戦だ」と語る。

再度の頂点を目指し、ホワイトはポルトガルでハードなトレーニングキャンプを敢行。スプリントやストレングス、パワーを駆使してキャリア最高の状態に仕上がり、「古い狼かもしれないが、まだ噛む力は残っている」と自信を見せる。

「彼らは古い狼を若い狼に食わせようとしている。自分は古い狼かもしれないが、まだ歯は鋭い。両手に力があるし、彼も同じだろうが、どうなるかはやってみないと分からない。勝つためには何でもやる」

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