日本時間10月27日の0時15分、今季一戦目のエル・クラシコが幕を開ける。バルセロナは直近4戦で4勝と最大のライバルに屈辱を与えてきたが、今対決に臨む彼らには危うさが漂う。
自らを「バルセロナの信奉者」と語るスペインのジャーナリストが、バルサの現状を綴る。
文=ルジェー・シュリアク/Roger Xuriach(スペイン『パネンカ』誌) 翻訳=江間慎一郎
私たちバルセロナの信奉者たちは、ハンジ・フリックのドイツ人らしい真面目さ、誠実さを称え続けてきた。だからこそ、エル・クラシコを目前にして彼が見せた振る舞いは、正直、目を疑うものだった。
先週末に行われたラ・リーガ第9節ジローナ戦(◯2ー1)で、フリックはずっと保ってきた節度を失っている。まず90分、審判に皮肉の拍手を送ったことで退席処分を命じられ、その3分後にロナルド・アラウホが逆転ゴールを決めると、「ざまあみろ」と言わんばかりにコルテ・デ・マンガス(片方の腕を曲げてもう片方の手で肘をたたく侮辱のジェスチャー)を行った。これは一体、どうしたことだろうか。
次のUEFAチャンピオンズリーグ・オリンピアコス戦(◯6ー1)でも同様だ。その試合には18歳のラミン・ヤマルの7歳上の恋人、アルゼンチン人歌手ニッキー・ニコールの姿があった。ヤマルがフリックに話題の恋人を紹介すると、フリックは弾けるような笑顔で彼女のことを歓迎している。その様子がカメラに撮られていることも分かっていながら……。フリックは“世界最高の選手”を目指すうえで大事な時期にいるヤマルを、公の場ではそう簡単に称賛せず、必要とあらば厳しい態度も取ってきた。これは一体、どうしたことなのだろうか。
私たちは今、ドイツの頑固親父が、カタルーニャで態度を軟化させ始めた瞬間を目撃しているのかもしれない。それはフリック本人が認めていることでもある。
「今の自分はもっと感情的な人間になっている。バルセロナが私を完璧に変えてしまったんだ。私はこのクラブとこの街を、ここにいる人たちを愛している」
もちろん「何も偶然ではない」と考える人たちもいるだろう。あのコルテ・デ・マンガスも、ヤマルに優しい父親のような眼差しを向けることも、上記のような発言も、じつは「ドイツ人らしい周到な計算の一部なのではないか」と考える人たちも……。
だが一つ言えることがあるとすれば、バルサが昨季の姿を取り戻せずにいることだ。チーム最高の選手に君臨するヤマルも、昨季とは様子が異なっている。バルセロナのエコシステム(生態系)は確実に変化しており、今、それに対するリアクションが求められているのだ。フリックはもちろん、そのことを理解している。
日曜に行われるレアル・マドリード vs バルセロナは、フリックが臨む5回目のエル・クラシコとなる。ここまでの成績はまさに圧倒的だ。フリック・バルサは合計16ゴールをたたき込んで、4試合全勝を果たしている。ジョゼップ・グアルディオラがバルサを率いていた時代を含め、マドリーにここまで屈辱を味わわせたことはなかった。
だがバルサとマドリーの宿命のライバル関係は、自然と均衡を取り戻すものなのかもしれない。言い方を変えれば、今回はマドリーが勝ったとしても誰も驚くことはないだろう。今季のマドリーは、無冠で終わった昨季と比べて確実に良くなっている。対してバルサは……正直に言って、現状維持どころか悪くなっている。
フットボールはサイクルごとに勢いを手にするものでもあるが、マドリーは新たなそれをスタートさせたばかりだ。彼らのベンチには野心と情熱にあふれるシャビ・アロンソが座っている。今世紀最高の監督たち(グアルディオラ、ラファエル・ベニテス、ジョゼ・モウリーニョ、ビセンテ・デル・ボスケ、カルロ・アンチェロッティ)から薫陶を受け、レヴァークーゼンにクラブ史上最大の黄金期をもたらした若手監督は、マドリー首脳陣からも大きな期待を寄せられており、DFを中心として素晴らしい新戦力を与えられている。
ディーン・ハウセン、アルバロ・カレーラス、トレント・アレクサンダー=アーノルドの加入によって、マドリーのディフェンスラインのクオリティは飛躍的に向上した。そして彼らの前線には、ついに覚醒したキリアン・エンバペがいる。別れを告げたパリ・サンジェルマンがあらゆるものを勝ち取った一方、マドリーが無冠に終わった昨季の屈辱を乗り越えた後、この猛獣はかつてないほど飢餓感を募らせている。今季11試合で15得点を決めても、まだまだ物足りないといった具合に。
翻って、バルサはどうか? フリックにとってイニゴ・マルティネスのサウジアラビア移籍はあまりに大きな痛手だったと言わざるを得ない。バルセロナは昨季、リスク上等のハイライン戦術を機能させて世界中の度肝を抜いたが、絶妙なラインコントロールを可能にしていたイニゴがいなくなった今季は、ただの無謀な戦術になりつつある。
イニゴ移籍の影響はロッカールームにも及んだ。その類いまれな人柄とリーダーシップは、若手選手たちに対してポジティブな影響を与えていたからだ。そんな若手の一人であるヤマルは、昨季のような力強いスタートを切れず(もちろん恥骨のケガの影響もあるのだろうが)、ユニフォーム姿ではなく私服での登場回数を増やしている。物議を醸したあの大規模な誕生日パーティから、回復に専念すべき日に行ったヘリコプターでの小旅行まで……証拠はInstagramとTik Tokに無数に存在する。
“世界最高のMF”と言っても差し支えなくなったぺドリは、各試合でそのすべての力を出し切っており、いつだって疲労困憊となっている(ピッチのあらゆる場所に顔を出すのだから無理もない)。その一方で、一部の選手たちは昨季のバルサがなぜ唯一無二のチームだったのかを忘れてしまったようだ。イニゴ・マルティネスというリーダーが去り、組織的かつ強度のあるプレッシングを見せられない現在のバルサが、限界を感じさせているのは当然のこととも言える
リスク↔︎無謀、縦への速さ↔︎主導権の放棄、エネルギッシュなプレー↔︎フィジカルの無駄づかい……フリックのバルサはピーキーなハイライン戦術を駆使しているのだから、すべてが紙一重だ。全員がチームのためにプレーしなければ、無謀、主導権の放棄、フィジカルの無駄づかいと、彼らのプレーはすべて後者に傾いてしまう。同様に、負傷者の続出もチームに重くのしかかる。ジョアン・ガルシア、ダニ・オルモ、ガビに加えて、昨季合計で105ゴールに絡んだアタッカー2人(34得点26アシストのハフィーニャ、42ゴール3アシストのロベルト・レヴァンドフスキ)まで離脱。彼らの不在はあまりに痛い。だが負傷者のエクスキューズより、チームの歯車が噛み合っていないという印象のほうが勝るのも、また確かだ。
(C)Getty Images
フリックがコルテ・デ・マンガスをして、ヤマルの恋人と親しげにしていたのは、そのような状況下だった。ヤマルはそのオリンピアコス戦で、チームの歯車の一つになることではなく、自分の個性を出すことに執心していた。昨季のクラシコ4戦全勝は、調和の取れているチームがつかんだ成功だったが、果たして今回はどうか。アラウホの闘志、フェルミン・ロペスの激情、ペドリのファンタジーと献身があれば、現在最もさえているアタッカー(マーカス・ラッシュフォード)がいれば、勝利にまで届くのだろうか。相対するマドリーは、昨季にプライドを大きく傷つけられ、復活を果たそうと息巻くチームだ。“最高のエンバペ”はまるで、舌なめずりをしているサバンナの虎である。
マドリーがチームを構築中であることを含めて、今回のクラシコはお互い最高の状態でぶつかり合うわけではない。だが、ピッチに立つスター2人については別だ。ヤマル vs エンバペの5ラウンド目。ヤマルはバロンドール2位となった昨季、今回と同じくサンチャゴ・ベルナベウでのエル・クラシコで、バルサカラーのブラケット(歯の矯正器)を見せつけてゴールを祝っている。彼は私生活と同様に、ピッチでも大胆さと勇敢さを併せ持つ。それは規律を重んじるフリックにとって最も危うさを感じるもので、それと同時に、最も魅力的なものだ。
ドイツ人指揮官は先週末、熱くなりすぎた代償として、このエル・クラシコをスタンドから見守ることになった。愛はときに、人を狂わせてしまうのだ。
(C)DMM
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