平河悠がプロデビューを果たしたFC町田ゼルビアを離れ、イングランドへ渡ったのは2024年夏のことだ。ブリストル・シティでの2シーズン目を迎えた彼は今、何を思うのか。EFLチャンピオンシップに精通するジャーナリストが英国に飛び、話を聞いた。
取材・文=秋吉 圭
12月10日、寒空のアシュトン・ゲート・スタジアム。のらりくらりと前半に2点を奪ったレスターを相手に、後半のブリストル・シティが着火していた。
長い優勢にもかかわらず次々に選手交代で盤面を変え、アグレッシブに試合の主導権を握っていった。場内の雰囲気を変えた46分の1点目、攻勢の末に訪れた83分の同点弾。ホームのファンが完全にでき上がり、スタジアムが一体となって逆転を目指す中で、ピッチの外には1人黙々とウォームアップを続ける男の姿があった。
来るべき出番は追加タイムに訪れようとしていた。追加タイム6分、監督のゲルハルト・シュトルーバーが背番号7を呼び寄せたのはその3分頃のこと。しかしピッチ脇で投入の準備を済ませた彼の前で、勝ち越し点を狙う両チームの戦いぶりも相まって、ボールはなかなかピッチ外へと退かなかった。最終スコアは2ー2、平河の交代がアナウンスされることは最後までなかった。
「いつでも出場できるように準備をしてるのもありますし、試合を見ている中で『そろそろ誰か代えるべきなんじゃないかな』って思った時に少し(ペースを)上げたりはしてるんですけど。その時に違う選手が呼ばれたりとか、膠着してる時になかなか代えなかったりという印象が今のところあるので。監督の起用の特徴も自分で分かってきたかなという感じです」
風光明媚な大都市ブリストルのシティセンターからバスで15分ほど。実に近代的なブリストル・シティの練習場で、試合翌日の平河に話を聞いた。時はミッドウィークを挟んだ連戦の真っただ中。試合翌日の木曜日に練習メニューを設けられていたのは、前日の試合で出場機会がなかったか、出場時間が少なかった選手、そしてファーストチーム入り間近の若手選手だけだった。

「出場時間は一番今ストレスとして抱えているところではあるので、そのためにこのチームでアジャストしないといけないです」
イングランド初挑戦の昨シーズンはFC町田ゼルビアでのJ1前半戦から地続き、加えてパリ五輪での負傷明けというタフな条件にもかかわらず、公式戦39試合に出場。ちょうど1年前の12月10日までで見れば、17試合の公式戦で計979分間の出場時間を得ていた。しかし今シーズン、出場数だけで見れば公式戦出場は19試合と前年の同時期を上回るものの、その合計出場時間は429分。実に半分以下の数字になってしまった。
監督交代の影響を過小評価することはできない。昨シーズンに大方の予想を覆し、ブリストル・シティに17年ぶり2度目のプレミアリーグ昇格プレーオフ進出をもたらしたリアム・マニングが自身の生まれ故郷であるノリッジに引き抜かれた(そしてすでに解任された)夏、レッドブルグループで実績を積み上げた48歳のシュトルーバーが新監督として着任した。スタイル的には町田で育った平河にとってポジティブな変更になるようにも思えたが、現状の出場時間はその真逆の因果を指し示す。
「シーズン当初はウイングバックで出てましたけど、フィジカル的なものや戦術、このリーグの特徴のエアバトル(空中戦)のところとかもあって、監督とも話して「(3ー4ー2ー1の『2』に相当する)No.10のほうが、数字を出すためにも、チームのためにもいいんじゃないか」ということになって。それでもなかなか出場時間が得られなくて、監督ともコミュニケーションを取ったり、自分でも足りない部分が少しずつ分かってきたりしている中でも出られないので、もどかしい時期ですね」
もちろんポジションが存在するのであれば、本職のウイングとしてプレーしたい思いもある。ブリストル・シティの10番のポジションといえば、今季リーグ内でも屈指のスタッツ、アンダーラインデータを残すアニス・メーメティ、今や世界的なFKの名手として数えられるようになったスコット・トゥワインといった強力なライバルもいる。しかし与えられた環境の中で、とにかくベストを尽くす以外に出場機会を得るチャンスはない。
「試合にさえ出られれば監督のイメージはガラリと変わると思ってるので、口だけじゃなくてピッチでそれを体現しないといけない。そのチャンスをまだ得られていないと思ってますし、今は練習でアピールするしかないですけど、チャンスクリエイトの仕方だったり、ドリブルのスピードやキレだったりは(メーメティとトゥワインに)ないものを持ってると思うので。それを監督に気づかせられる実力がないのかなと思っています」
さまざまな思いを含意した「もどかしい時期」。しかし一方で、こういった時間と経験は幼少期から「海外サッカーはほぼ見たことがなかった」という平河にとって、海外移籍を決断するうえで覚悟していた、あるいは必要とあらば求めてさえいたことでもあるという。
「自分のサッカーキャリアは何ごともそううまくいく人生でもなかったですし、試合に出られない、そういう難しい時期はいつか確実に来ると分かっていました。(プレーの)レベルが高いことも分かってたので。見てなかったですけど(笑)。海外で活躍する難しさを逆に感じたくてここに来ている面もあるので、いかにそこで自分の力を出せるかですね」
出場時間が少なくなったからこそ、普段の練習での立ち居振る舞い一つに新たな思考が生まれる。「何回怒られても全然トライする」、日本のそれとは完全に異なるメンタリティを持った17、8歳の選手を見て、自分をアピールすることの大切さを知る。今の時期だからこそ、平河の中にはいろいろな発見、気づきが生まれる。
コミュニケーション面での問題もない。メーメティ、トゥワインと比較して「ここを改善してほしい」というような具体的な課題を監督から提示されているわけでもない。どこかにあるはずの答えは、自分で見つけるしかない。それはまさに、彼が言うところの「海外で活躍する難しさ」に他ならないのだろう。
(C)Getty Images
だからこそ、彼には乗り越えなければならない壁がある。もともと憧れがあったわけではなく、J1でプレイするようになってから急激に増したという海外志向には、もちろんそれ相応の理由がある。今でこそ大幅にレベルアップしたが、当時は英語も一切話せず、「言語も違えば風土も違えば、全部違うところからのスタート」という中でも海外挑戦を決めた最大の理由――それはサッカー選手としての揺るぎない夢に起因している。
「今は正直、ワールドカップのことしか考えてないです。そのために何をするか、何ができるかなので。ピッチ上でアピールするために何をしないといけないのかは毎日考えてますし、逆算して今も動いています。まず3月の代表に入らないと間違いなく(本戦にも)入れないので。11月に入れなかったことに悔しい思いもあったので、しっかり自信を持って次は入れるようにやりたいなというのはあります」
今年ここまでの推移には、彼にとって多くの「思考のヒント」が挟まっていた。ある意味、彼にとってはむしろ生産的なシーズンとなっている側面もあるように思う。しかし間違いなく、それが「今シーズンでなければならない」理由はない。むしろこの2026年を直前にしたシーズンであるからこそ、平河はピッチ上での時間を勝ち取り、「試合に出る中での気づき」を得るフェーズに移らなければならない。
彼が一つのターゲットとする3月、日本代表は聖地ウェンブリーで大会前最後の代表ウィークに臨む。ブリストルからロンドンまでは電車にして約1時間半ほど。しかし現状の彼には、まずその“チケット”を購入するための何十時間にも及ぶ戦いが課せられている。
平河は今の状況を努めて前向きに消化し、自らの向上に役立てようとしているように見える。この1月で25歳、その姿勢は必ずや、彼の有望なキャリアに数知れぬポジティブな側面を加えるに違いない。
そしてもし、その努力がまず来年の6月に実を結ぶのだとすれば……。それは日本代表にとって、素晴らしい歓迎材料となるはずだ。
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