今夏、レギア・ワルシャワからブラックバーン・ローヴァーズへと活躍の場を移した森下龍矢。憧れの地イングランドで新たな歩みを始めた彼は今、何を思うのか。EFLチャンピオンシップに精通するジャーナリストが英国に飛び、話を聞いた。
取材・文=秋吉 圭
「一言で言うと、『行方不明』です(笑)。もう俺どこやねん!みたいな」
今、自身で思う「本職」のポジションはどこなのか――? 常々気になっていた質問をブラックバーン・ローヴァーズの森下龍矢にぶつけると、こんなパンチラインが明るい口調とともに返ってきた。いきなりの興味深い答えにワクワクしていると、彼はさらに続けた。
「正直、行方不明になってたんですよ。加入して幸先よく点は取りましたけど、その後は僕も(自分のパフォーマンスに)納得できないし、クラブもファンもそんなにいいと思ってなかったと思うんです。だからその時は行方不明でしたけど、自分の中で『よし、ブラックバーンの右の8番でしっかり結果を残すんだ。こうプレーするんだ』と腹を決めてからですかね。出られるようになったのは」
今年で28歳の彼が歩んできたキャリアは、控えめに言って極めてユニークなものだ。一般企業への就職目前からギリギリのところでのプロ入り、サガン鳥栖、名古屋グランパスと活躍の場を移す過程で日本代表に選出され、ポーランドの名門レギア・ワルシャワで何度もポジションを変えた末のシーズン14ゴール14アシスト。そしてこの夏、最大の夢であるプレミアリーグへと近づいたイングランドへの移籍。デニス・ベルカンプに憧れ、「育てて勝つ」アーセン・ヴェンゲルのアーセナルにカタルシスを見た少年は、また一つ新たな目標をかなえた。
「やっぱりうれしいですよ。まあ苦しいこともたくさんありますけど、でも楽しいですね。やっぱり」
こちらの一つひとつの質問にとにかく丁寧に、そして笑顔とほとばしる思いをあふれさせながら答える森下と話していると、なんだかこちらまで自分のフットボールに対する思いを語りたくなってしまう。そしてそんな快活な話しぶりの中には、彼がその労を惜しまないプロ選手としての努力の一端も垣間見える。
そもそも度重なるポジション変更でさえ、「どこでもできるからやってるんじゃなくて、使えないやつって違うポジションやらされるじゃないですか。だからネガティブなポジション変更です」と謙遜する彼に、イングランドに来て変わったことは何かと尋ねた。
「変えたことばかりです。一番はジムに行ってめちゃくちゃ走ってます。レギアは常に主導権を握っているチームだったのであまり走るサッカーではなくて、どちらかと言うとリカバリーのところに注力してたんですけど、イングランドに来てフィジカル能力も上げていかないとなかなかフィットできないなと思って。なのでリカバリーもやりつつ、思い切ってジムをがっつりやるようにしてます。あとは、おそらく『ヨーイドン』で走ったら相手の選手よりも僕のほうが速いので、そこの回数を増やしたいなと。ジムでパワー系を入れることで納得いくスプリントだったり、しっかり競り勝てる場面を作れるようになってきたと思います」
加入前、森下はクラブから、レギア時代にも起用されていた「4ー4ー2の右ウイング」での起用を想定していると伝えられたという。ただ、レギア時代には自ら仕掛けるワイドフォワードとしての役割を与えられていたのに対し、ここで要求されたのはインバーテッドとして中央でバランスを取る役割。さらにチームが3バックに移行したことに伴い、ウイングのポジション自体がなくなったため、今は最初から中央に配置される「右の8番」での起用に落ち着いた。
「右ウイングバックの(ライアン)アレビオーズっていう選手が、出し手というよりも走って使われるタイプなので、彼が思い切って上がれるようにウインガーが内側に入ってという戦術で。(取材3日前のイプスウィッチ戦では)彼があまり器用に受けられるタイプじゃないので、しっかり受けられるように僕がディフェンスラインまで落ちて時間を作って、というのを考えていました。まあ出てこなかったですけど(笑)」
レギア時代、同じ8番でのスタートでも攻撃時は最前線に近い位置取りを任せられることもあった。このシステムの中であっても、本当はより攻撃的なポジショニングを取りたいという気持ちもある。この日までの成績、13試合1ゴール2アシスト(その後1アシストを追加)は、やっぱり「ちょっと渋い」。チームプレイヤーとして勝利を最優先で目指す中で、与えられたバランサーとしての役割と、同時に求められる数字での貢献を両立させることが今の最重要課題だ。
「思ったより得点が取れてないので。今はどちらかと言うと低いところで(プレーに)関わって、そこから出ていく感じで、物理的にゴールから遠いのでそこをどう自分で解決するか。一つの答えはミドルシュートだと思うので、練習の一環に入れてます」
「アシストでいえばかなり惜しいのがあと2つはあったんですけど、これはレギアで気づいたことで、アシストを狙うのってよくないんですよ。結局、味方次第じゃないですか。でもシュートは嘘つかないんで、自分次第。だから僕はゴールもしっかり狙っていきたい。それで低いところからどうゴールを取りにいくかとなると、ロングシュートですよね」
(C)Getty Images
ここで彼は、決して「でもチームが勝てればいい」という常套句を選ばない。もちろん最優先で考えているのはチームの勝利であって、「たとえ1ー0でも3ポイントを取ること」を目標として日々のプレーに励んでいるという。しかしその口ぶりが含むところに、かすかに、しかし確かに顔を覗かせる野心がある。このチームでポジションを勝ち取る、選手としてよりよい未来をつかむために必要なマインドは何か。私には、彼の中に確固たる答えがあるように見えた。
「うまいし速い」、そんなJリーグはレベルが高く、EFLチャンピオンシップやポーランドのトップ級が来たとしても、全員が全員成功できるわけではないと思う。そう前置きしたうえで、森下はこう続けた。
「逆に日本人選手がこっちで(成功)できるかって言ったら、できない選手もいるわけじゃないですか。言葉もカルチャーもサッカーも全部違うし、結局、最初はめっちゃ難しいんですよ。『いい選手』の基準も違う。そこでシンプルに『諦めない』とか、食らいついて自分の色を出すとか、そういうメンタルが大事ですよね。正直、根性です。日本だと『自分が向こうのことを理解しよう』だとか、『なじみにいこう』とか、そういうのを『適応』だと思ってる人が多いと思うんですけど、個人的には逆で。けっこう自分を出すというか、『お前らが俺に合わせろよ』っていう強硬な適応のほうが大事なんじゃないかと思う。別に好かれる必要はないですよ、仕事しに来てるわけじゃないですか。だからいい顔をする必要はなくて、もう自分らしさを出す。(その重要性は)こっちの人たちだってわかってますしね」
誤解のないようにつけ加えるが、スタジアムや練習場内部での姿を見る限り、もちろん森下はチームメイトやクラブスタッフとよく打ち解けているように感じられた。そもそもブラックバーンではクラブ上層部と選手のコミュニケーションが比較的多く、チーム内の雰囲気はかなりいいのだという。
それでも、それはそれ、これはこれ。森下にはここで確固たる地位を築き、「爆発的な結果」を残し、そこからかなえなければならない夢がある。
「僕はプレミアリーグ、ガチで行きたいです。本当に行きたい。そのためにレギアから来たんで。ラストチャンス。僕くらいの歳になると、(昇格するのは)若ければ若いほどいいじゃないですか。いつまでもピチピチでいたいですけど、でも早くクラブがプレミアに上がるためのヘルプをしないと、クラブだって上がるために次のいい選手を連れてくるし。結局、競争の世界なので、どれだけ早く、どれだけすごい成果を上げられたかっていうのが選手としてのバリューになるんじゃないですかね」
そのためにはもちろん、まずは「つかみどころのないチームが多い、ものすごいカオス」なEFLチャンピオンシップで輝きを放つ必要がある。直近の試合では10試合連続先発出場、ブラックバーンの中での存在感をみるみる増す中で、最前線に立つ大橋祐紀との連携も日を追うごとに深まっている。
日本での経験、ポーランドの最上層たるレギア・ワルシャワでの経験、そして現在進行形の “Underdog” ブラックバーンでの経験――。ピッチ内外を問わず様々な面に生かされているその豊富な引き出しこそが、満を持して全盛期に差し掛かろうとしているプロサッカー選手・森下龍矢の最大の強みであるように思う。彼のキャリアにおける最大のハイライトは、明らかに、まだこの先に待っているように思えてならない。
「僕のイメージでは、(ブラックバーンは)完全にチームワークが特徴だと思ってます。スーパーな選手がポツっといるんじゃなくて、11人がしっかり仕事をしてストライカーにボールを集める。ソリッドなチームだと思いますよ。そういうチーム、個人的には好きです」
そんなチームに「しっかり仕事をするスーパーな選手」が加われば、ブラックバーンは今すぐにでもプレミアリーグを目指せるかもしれない。加入1年目の背番号25は、そんな存在になることを目論んでいる。
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