バルセロナの元助監督として知られるフアン・カルロス・ウンスエ氏(57)が、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の進行によって、スペイン『DAZN』の解説者を降板することになった。
GKだった現役時代にはバルセロナやセビージャでプレーし、指導者としてはバルセロナでGKコーチやルイス・エンリケ監督のアシスタント、さらにセルタの監督を務めたウンスエ氏。同氏は、2020年にALSと診断されている。この病気は運動神経が徐々に障害され、筋力が低下していく進行性の神経疾患だ。進行すると全身の筋肉が衰え、話す・食べる・動くことが難しくなり、最終的には呼吸筋も機能しなくなり、自発呼吸ができなくなる。
この難病にも屈することなく希望を持ち続け、ラ・リーガの選手たちも対象にして講演会を行ってきたウンスエ氏。昨季からは現地スペインでもラ・リーガの放映権を有する『DAZN』の解説者を務めてきたが、今季終了を待たずに降板することになった。同氏は『DAZN』とのインタビューにて、その理由を次のように説明している。
「呼吸をすることが難しくなり、話をするためにさらに頑張らないといけなくなった。そのために、非常に心苦しいことではあるが、『DAZN』の解説者を降板するタイミングになったと感じている」
「この病気は非常に個人差が激しく、誰のことも参照できない。私は5年前にALSと診断されたが、この病気にとって5年は長い期間となる。しかし、進行は遅くとも止まっていない。すでに4年間を車椅子で生活しているが、この冬に気管支炎を患って、呼吸が難しくなってきたというのが現状だ」
「精神的には良い状態だよ。落ち着いてるし、これから訪れることに対しての準備はできている。しかし身体的には、能力が衰えてきてしまった」
ウンスエ氏は解説を担当する試合で、旧知の仲であるバルセロナのチャビ・エルナンデス前監督らにインタビューを行い、インタビュー対象者の心を開かせることに成功してきた。
「テレビに出ながら、素晴らしい時間を過ごさせてもらったよ。ALSが私を解説者にしてくれた。以前は考えたこともない仕事だったがね。本当に楽しむことができた」
ALSと闘いながらも、生に対する幸福や希望を主張し続けてきたウンスエ氏は、スペインにおいて一つの模範的な存在として受け止められている(スペイン政府にALS患者のサポートを求めたり、その社会活動も称賛される)。これまでの発言を、ここにいくつか紹介する。
「悲しみは与えたくない。悲しみは横に置いておこう。私の力が続く限りは、妻とともにスペインの様々な場所を旅行したい」
「死は人生の一部だ。私たちは死ぬために生まれてきた。それに対する恐怖は取り除かなくてはいけない。私のような状況にいる人間は、そういった恐怖が少し薄れるのだと思う。それは今日を、今をもっと楽しむことの役に立つ。私は病気に元気づけられているんだ」
「私は笑顔を保ち続けたい。保ち続けて、恩恵を受けるのは私自身にほかならない。私が愛する人たちも、私に向けて愛情や敬意を示してくれるのだから。私は最後の日まで、ずっと笑顔でいたいと思う」
「衰弱してベッドで寝ているとしても、命は生きるに値するよ」
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