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「本当に愛されていた」元DeNA・三嶋一輝×吉井祥博アナウンサー クロストーク ~戦いを終えた男が磨く“言葉の力”~

DAZN

横浜DeNAベイスターズの投手として13年間の現役生活を終えて、この春から解説者・指導者へと転身を果たした三嶋一輝氏。その三嶋のことを実況アナウンサーとして長年見続けてきたのが、DAZNでも実況を務める吉井祥博氏だ。

今回はオープン戦で解説・実況として初めてDAZNでコンビを組んだ両氏に、現役時代のこと、引退のこと、そして3月14日(土)に予定されている引退セレモニーについて語ってもらった。

取材・文=林 龍也


■DAZNで解説・三嶋一輝&実況・吉井祥博が初コンビ

mishima kazuki

3月12日(水)、横浜スタジアムで行われたDeNA対広島戦で、三嶋がDAZN初解説、実況・吉井とのコンビが実現した。DeNAファンにとっては待望のコンビと言えるだろう。

吉井とのコンビについて「選手時代から一緒にやってきたので、非常にやりやすかったです」と三嶋が話せば、吉井も「初めてという感覚もなく。取材で試合終了後に駐車場で話してたときの感覚のままでした」というように、息の合ったデビュー戦だった。

「素敵なお話もしてくださるし、なんとなく察してもくださるので。特に問題なくという感じでした」と吉井が振り返るように、三嶋は終始落ち着いたトーンで、わかりやすく、優しい言葉遣いで解説を務め上げた。

解説としてのキャリアはまだ浅いものの、高い言語化能力を発揮していた三嶋は「引退してから勉強してるんですよ」と明かしてくれた。

選手のときは量をこなして感覚でやってきたが、「年齢を重ねると後輩に聞かれることもあるし、どう説明するかが難しい。やっぱり言葉にする力が大事。説明できなかったら分かっていないのと一緒」と三嶋。

口調は穏やかで優しいが、その言葉からは三嶋の本気を感じる。人の解説を聞いたり、言語化のための本を読んだりといった努力を重ねてきた。解説を聞く限り、早くもその成果が表れているのだろう。

「現場に近かったぶん、しっかりと選手目線で、選手に寄り添い、選手の思いとか取り組みとか、見られないところも伝えていきたい」という言葉どおり、真摯な姿勢で解説業に向き合っていることが伝わってくる。

■「1アウトを取ることをなめるなよ」

mishima kazuki(C)産経新聞社

三嶋はルーキーだった2013年、先発ローテーションに定着して規定投球回をクリアし、6勝を挙げたことで大きな期待をかけられる存在となった。2年目には開幕投手を務めたが、そこでプロの壁にぶち当たった。

当時について吉井は「エースだった三浦大輔さんが『自分よりすごい才能を持ったピッチャーがたくさんいる』と語るうちの一人が三嶋さんだったが、やっぱりプロって大変なんだなって」と話すとおり、三嶋は苦悩の時間を過ごしていた。

そんな三嶋に手を差し伸べたのが、当時二軍投手コーチを務めていた木塚敦志コーチだった。

「当時はどちらかというと『自分がやればいいんでしょ』というタイプの野球選手だったんですよね。『周りは関係ない、俺だ』って。だけど苦しんでいるときに木塚コーチから『1アウトを取ることをなめるなよ』と厳しい言葉をいただいて」

最初は反抗的な態度をとっていたというが、それでも見放さず、根気強く指導を続ける木塚に対し、いつしか「絶対的な信頼というか、なんでも相談しようかな」と思うまでになっていたという。

三嶋自身、木塚コーチについて「13年のプロ野球人生の分岐点」と語るほどの存在となった。その後、中継ぎへと転向した三嶋は、現役時代の木塚コーチと同じように中継ぎ・抑えで大車輪の活躍を見せた。

■黄色靭帯骨化症からの復活

yoshii yoshihiro

「やっぱりご病気をされたあとですよね、駐車場で長く話すようになったのって」と振り返ったのは吉井だ。

病気というのは、指定難病でもある「黄色靭帯骨化症」のこと。この難病からの復活劇は、三嶋を語るうえで外せない要素の一つとなっている。

黄色靭帯骨化症とは、脊髄(神経)の後ろにある黄色靱帯が骨化してだんだん大きくなってしまい、神経を圧迫して主に足の麻痺を起こす病気だ(参照:難病情報センター)。

この難病により一時は歩行困難に陥るほどの状態に見舞われたが、のちに「MISHIMA手術」と呼ばれる新しい術式で手術を受け、見事に回復。リハビリの末に復活を果たした。

この経験が三嶋にもたらしたものは苦しみだけではなかった。吉井の問いに対して三嶋は「そうですね。病気を経験して、やっぱり人に伝えなきゃいけないこととか、言葉にするのはすごく大事なことだと、身をもって感じました」と、自らの思いや考えを言葉にすることの大切さを確認した。

「バリバリ一軍で投げているときは自分のことで精いっぱいだったけど、応援してくれている人に自分から感謝を伝えたり、相手のことを考えたりっていうのは大事なことなんだと学びました」

吉井は「当時の取材メモに『今投げているのは自分のためじゃない』という言葉があって、そうなんだなと感じながら放送で伝えていた覚えがあります」と振り返ってくれた。

■病気から始まった支援の輪

自身が病気からの復活を遂げたあと、三嶋は同じ病気で苦しむ後輩の力になった。同じく黄色靭帯骨化症を発症した福敬登(中日)に、自身の経験を伝え、励ましのメッセージを送ったのだ。そして復活を遂げた福が本拠地のお立ち台で見せた、驚きの行動が話題を呼んだ。

「ドラゴンズファンの皆さま、ちょっとすみません」と前置きし、レフトスタンドにいるDeNAファンに向かって「皆さまのおかげで、そして三嶋選手のおかげで僕はここまで投げられるようになりました」と感謝の気持ちを伝えたのだ。そのことについて三嶋に聞くと「しっかりと返されましたよね」とうれしそうに笑った。

現在、三嶋は「引退したらやりたかった」という、難病や障害への支援に乗り出している。「今、TikTokとかで(病気について)発信して、その収益を寄付したりということをやりたい。まずはSNSになっているけど、事業ではなく啓発活動というか、そういうのをやっていきたい」と話してくれた。

苦しみもがいてきた右腕から、新たな支援の輪が始まりつつある。

■新しいスターの誕生に期待

mishima kazuki

やはり気になるのは、今の後輩たちをどう見ているのかということ。今季のDeNAに期待することを聞いてみた。

「もう優勝しなきゃいけない、ここはまずマスト」と前置きし「新しいスターが出てきてほしい」と期待を口にした。

「DeNAと言ったら筒香嘉智選手、牧秀悟選手、山崎康晃選手、佐野恵太選手、東克樹選手のイメージがあるじゃないですか。そこに、DeNAでこの選手が出てきたよねっていう選手が出てきてほしいと思ってます。今年はそのチャンスがある」

そう語る三嶋の表情は、後輩を思う先輩そのものだった。具体的な名前こそ挙げなかったが、若い力への期待は大きいようだ。

続いて吉井に、今後の三嶋に期待することを聞いてみた。

「ずっと変わらずこのままでいてほしい。野球の深い話まで含めてずっとできる三嶋さんでいてくれれば、たぶんどの活動もうまくいくと思っています」と、やはり愛情にあふれた表情で答えてくれた。

「そしていつかユニフォームを着てほしいなと思ってるんです」と話したところで「だと思います、吉井さんのことだからね」と三嶋が笑う。

続けて「いつユニフォームを着てもいいように、それこそさっきの言語化能力とかは絶対必要なことだと思うし、こういう解説だったり、独立リーグでの指導はすごくいい時間ですよね」と、将来を見据える。

この日の放送ではデータの扱いについての話題も出た。吉井は「今取り入れている数値化では一定の評価をされる人と、本当はすごいのに評価されない人が出てくる。そのバランスはだんだん磨かれていくと思うし、三嶋さんがそのバランスが取れる存在になってくれるんじゃないか」と期待を込める。

三嶋も「そうなりたいと思います。行き詰まったときに、結局ものを言うのは基礎・基本なんです。そこがいかに大事かを伝えたいし、そのうえでデータとか様々なものを活用していく」と見据える先は一緒だ。

野球界ではデータ偏重が叫ばれるが、現場のすぐ近くにこういう考えの人間がいるのなら、きっと近い将来、いい塩梅にミックスされていくのだろうと感じた。

■「全神経を集中させて思いっきりやりますよ」

mishima kazuki

3月14日(土)のソフトバンク戦で、三嶋の引退セレモニーが予定されている。そこで三嶋は「1球だけ」の引退ピッチングをするという。

「キャッチボールは全然やれていないです」と笑う三嶋は、引退発表後も精力的に活動を続けている。岩村明憲氏が総監督兼球団代表取締役会長を務めるBCリーグの福島レッドホープスでのコーチ業もその一つだ。

非常勤コーチ契約を結び、3月にはさっそく指導に行ったものの大雪に見舞われ、「雪かきから始めて。岩村さんに『福島の洗礼を浴びたな』とか言われて」と語る表情は楽しそうだ。

「2020年(10月16日)の巨人戦で無死三塁を三者三振で抑えたとき、最後に吉川尚輝選手に投げたインコース低めの真っすぐの軌道を想像してます」と吉井が言えば、すかさず三嶋が「あのクオリティが出たら、僕やめてないです」とツッコミ。放送を終えても二人の軽妙な掛け合いは健在だった。

「でもラストピッチ1球だけなんで、もう全神経を集中させて思いっきりやりますよ。もちろんフワッとなんて投げないです」と三嶋らしい投球を約束してくれた。

■「本当に愛されていたんだなって」

「ファンあってのプロ野球」

よく言われる言葉だが、若き日の三嶋は「まず自分が結果を出さなければ」という気持ちが強かった。明日の仕事が保証されていない厳しい世界なのだから、仕方のないことだ。

しかし「でもやっぱり徐々に、それこそ病気を経験したあたりで応援してくれていた人のありがたみだったり、本当に愛されていたんだなって本気で感じることができて」と変わってきた。

「戦力外になったときも、球団の方もファンの方も、僕に対してすごく優しかったと思います。愛情をすごく感じました」と語る一方で、うまく伝えられない歯がゆさもあった。引退セレモニーはそんな思いをファンに伝える場となる。

「言葉は全然考えてないんです。やっぱり思ってることって勝手に出てくるだろうから。そうやって皆さんに感謝を伝えられればいいなと、そういう日になればいいなと思います」

そう語る三嶋の顔には、DeNAファンや野球ファンへの感謝、そして愛情が満ちあふれていた。

2026年3月14日、一人のプロ野球選手が現役生活に別れを告げる。その最後の雄姿をしっかりと見届け、前途を祝したい。

【三嶋一輝プロフィール】

福岡工業高から法政大を経て、2012年ドラフト2位でプロ入りを果たした三嶋は、13年間で通算373試合登板、37勝34敗、42セーブ、56ホールド、防御率4.47、554奪三振。先発・中継ぎ・抑えとしてチームを支えてきた。クールで落ち着いた見た目とは裏腹に、荒々しく、強気に打者をねじ伏せる投球でファンの心をつかんだ。

【吉井祥博プロフィール】

早稲田大からIBC岩手放送に入社。1995年からテレビ神奈川へ移り、プロ野球中継や高校野球中継などを担当。現在はフリーアナウンサーとして、古巣の仕事を続けつつDAZNなどの媒体でも活躍中。落ち着いた口調の中に熱い思いを秘め、ベイスターズ愛、高校野球愛あふれる実況から、神奈川の野球ファンに愛される名物アナウンサー。


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