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【コラム】トーマス・トゥヘルは単なる戦略家にあらず。ヴェンゲルやグアルディオラとの類似点も | 粕谷秀樹のNOT忖度 | プレミアリーグ

読了時間 6分
2021-08-11-Thomas Tuchel-Chelsea-UEFA Super Cup (C)Getty Images

ルカクも心酔の「アイデアマン」

チェルシー を率いるトーマス・トゥヘルは戦略家として名高い。

ドルトムントでもパリ・サンジェルマン(PSG)でも綿密なゲームプランを練り上げ、数多くのタイトルに導いてきた。

「試合ごとのミーティングが楽しくて仕方がないんだ。監督はアイデアマンで、いろいろな場面を想定しながらレクチュアしてくれる。今週末はポゼッションだったり、一週間後はカウンターだったり、ね。そうそう、試合中でも選手の立ち位置を変えてくるから、いつも新鮮な感覚でいられるんだ」

ロメル・ルカクもトゥヘルに心酔していた。

その一方で、トゥヘルは一言居士としても知られていた。思ったことはオブラードに包み隠さず、はっきりと口にする。ドルトムントとPSGを追われた理由も、チーム創りに関して経営側と意見が一致しなかったからだ。

こうしたタイプを、チェルシーは最も嫌う。オーナーのロマン・アブラモヴィッチやマリアナ・グラノフスカイアCEOとうまくやっていくためには、従順でいることだ。アントニオ・コンテもグラノフスカイア主導の補強を公然と批判し、失脚している。

しかも、この女性CEOはアブラモヴィッチから全幅の信頼を得ており、「われわれと契約するのだから、タイトル獲得は当然の任務」と、上から目線で接してくる。トゥヘルにとって、好ましい環境ではない。

2021年1月、トゥヘルがチェルシーの監督に就任したとき、ムードは最低だった。不振の責任をとり、フランク・ランパードが解雇された。

レジェンド更迭のショックは大きく、多くのサポーターは怒り心頭に発していた。当然、後任に対する風当たりは強い。なぜならランパードは、チェルシーのレジェンドだからだ。

「何度も何度も励ましてくれた」

2021-10-16-Ruben Loftus-Cheek-Chelsea-Premier League

しかし、トゥヘルは冷静に対処した。ランパード体制下で構想外だったマルコス・アロンソ、アントニオ・リュディガー、アンドレアス・クリステンセンとも一対一で話し合い、丁寧に説得していったという。

「必ずチャンスはやって来るから、準備だけは怠るなよと激励してくれた」(M・アロンソ)

「退団を考えていたんだけれど、監督の熱意に感じるものがあった」(クリステンセン)

さらに、今シーズンはふたりのイングランド人を再生に導こうとしている。

プレミアリーグ第7節の サウサンプトン 戦、トゥヘルは1-1で迎えた83分に、ロス・バークリーを投入した。ベンチにハキム・シイェシュとカイ・ハヴァーツが控えていたにもかかわらず、だ。

2分後、バークリーはティモ・ヴェルナーの決勝ゴールに結びつくパスを、セサル・アスピリクエタに配した。背番号8から18に変わり、戦力外と考えられていた男が、復調のきっかけをつかもうとしている。

続く8節の ブレントフォード 戦では、ルーベン・ロフタス=チーク(上写真)を中盤の一角に起用。深い位置からボールを運び、パス成功率も90%を記録するなど、戦力として計算できるプレーを披露した。

プレーメーカーのジョルジーニョ、運動量豊富なエンゴロ・カンテ、球際に強いマテオ・コヴァチッチのローテーションに、ロフタス=チークの雄大なスケールが加味されると、チェルシーの中盤は質量ともにグレードアップするに違いない。

「チャンスをもらった。練習中も気を遣ってくれる。監督には感謝している」(バークリー)

「自分を信じ、絶対にクサるなよ、と何度も何度も励ましてくれた」(ロフタス=チーク)

チェルシーでの成功は約束されていた

2021-09-22-Thomas Tuchel-Chelsea-English League Cup

単なる戦略家ではなかった。トゥヘルは、モチベーターとしても超一流だったのだ。なにしろドイツ語、英語、フランス語、スペイン語を話せるため、通訳を介さずに自分の意思を伝えられる。いわゆる “コミュニケーション能力” だ。

かつての アーセナル 指揮官アルセーヌ・ヴェンゲルは英語、フランス語、ドイツ語を操った。 マンチェスター・シティ のペップ・グアルディオラ現監督もスペイン語、ドイツ語、英語、イタリア語のマルチリンガルだ。

この能力こそが、ボーダーレスとなったヨーロッパ・フットボールで成功を収める秘訣であり、なおかつトゥヘルはルカクも舌を巻いた柔軟なゲームプランナーでもある。チェルシーでの成功は約束されていた、といって差し支えない。

ジョゼ・モウリーニョもポルトガル語、英語、イタリア語、スペイン語を使いこなせるが、戦術的アプローチが古すぎで選手の顰蹙を買った。コンテは前述のとおり政治的闘争に敗れ、マウリツィオ・サッリは英語を会得する努力を怠った。そしてランパードは、チェルシーのようなメガクラブを率いる経験を欠いていた。

ここ数年の状況を整理すれば、チェルシー上層部からトゥヘルに白羽の矢が立ったのは、至極当然だったと考えられる。戦術的アプローチが柔軟、かつ新鮮で、いまのところは政治的闘争を好まず、経験豊富なマルチリンガル。うってつけの人材だった。

チェルシーの監督就任後、わずか5ヶ月でチャンピオンズリーグ(CL)を制した。今シーズンのターゲットはCL連覇、そして5シーズンぶりとなるプレミアリーグ優勝だ。二冠に向けて、トゥヘルの采配がキラリと光る。

文・ 粕谷秀樹

1994年、日本スポーツ企画出版社刊の『ワールドサッカーダイジェスト』編集長に就任。その後、同社の編集局次長を務め、01年に独立。以降、プレミアリーグやチャンピオンズリーグ、情報番組、さらに月平均15本のコラムでも、エッジの利いた発信を続ける。東京・下北沢生まれ。

配信情報

プレミアリーグ第9
チェルシー対ノリッジ

  • 配信: DAZN
  • 配信開始:日本時間10月23日(土)20:30
  • 解説:林陵平 実況:永田実
  • 会場:スタンフォード・ブリッジ

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