トーマス・トゥヘル監督就任後、チェルシーは上記のメンバーで2試合に挑んだ。
ウルヴス戦の先発は平均年齢27.54歳。バーンリー戦は26.9歳。フランク・ランパード前監督が最後に指揮したルートン・タウン戦の23・63歳から、アダルト化している。
センターバックのレギュラーだったクルト・ズーマは先発から外れ(2試合ともにベンチ入り)、コンディションが整っているにもかかわらず、20人の枠からも外されたビリー・ギルモアはローン移籍を検討しているという。
一方、アスピリクエタとM・アロンソのゴールでバーンリーに勝利を収めたのだから、トゥヘルの用兵がまんまと的中したことは間違いない。
また、前体制でCBの5番手にまで序列を落としていたリュディガー(下写真右端)が2試合とも先発出場するなど、ランパードのカラーを意識的に排除したようにもうかがえる。

しかし、リュディガーはフランス語が苦手だ。ズーマとT・シウヴァ、メンディはフランス語で分かり合えていた。徐々に築いてきた信頼関係を崩していいものだろうか。
さて、ウルヴスもバーンリーもカウンターのチームだ。チェルシーはボールを保持しながら、攻撃に多くの時間を費やした。
では、マンチェスター・シティやリヴァプール、さらに攻撃陣に多くのタレントを要するエヴァートン、運動量豊富なリーズと対戦したとき、同じような陣形で無事に終わるだろうか。
コヴァチッチは守りが巧くない。ジョルジーニョはオープンスペースの埋め方に大きすぎる疑問符がつく。
「中盤センターを二枚にする場合は、エンゴロ・カンテが絶対に必要だ。彼の守備意識、守備能力は依然として世界のトップランク」
トゥヘルが絶賛したように、カンテは必要不可欠な戦力である(編集部・注/カンテはウルヴス戦を負傷欠場、バーンリー戦でベンチ入り)。さらに守備力を重視するなら、右サイドバックにジェイムズ、左にチルウェルを配置する4-2-3-1も考えられるのではないだろうか。
コヴァチッチ、ジョルジーニョ、M・アロンソの中盤は耐性が低すぎる。強豪との対戦では使えない。
就任後2試合を1勝1分で乗り切ったため、安堵のため息をつく関係者も少なくないという。「さすが名将。早くも戦術を落とし込んだ」との声も聞こえてきた。
わずか2試合でなにが分かるのだろうか。2月20日からサウサンプトン、マンチェスター・ユナイテッド、エヴァートン、リーズ、リヴァプールと難敵が続き、2月23日と3月17日には、アトレティコ・マドリードとのUEFAチャンピオンズリーグ(CL)が控えている。
喜ぶのはまだ早い、早すぎる。トゥヘル本人も、「ここに来てから数日しか経っていない」と、周囲の期待に困惑していた。
トゥヘルは戦術的に柔軟だ。対戦相手ごとに、あるいは試合状況に応じて陣形を変え、ドルトムントでもパリ・サンジェルマンでも成功を収めてきた。ポゼッションでじっくり攻めたり、激しいプレッシングからのショートカウンターを重視したり、ゲームプランの幅も非常に広い。

こうした特徴は就任後の2試合でも垣間見え、ゲームプランよりもパッションを特化したような印象が強いランパードよりは、優れているように映った。しかし、トゥヘルは20年、ランパードは3年。監督キャリアが違いすぎるため、比較対象にならない。
いずれにせよ、新体制は始まったばかりだ。トゥヘルは試合、練習を通してベストメンバーを模索する。
1つ消化試合が少ない首位シティとは11ポイント差。少し離された。CL圏内までは6ポイント差。まだまだ十分に追いつける。
いまはひとつひとつ、丁寧に闘うしかない。
文・粕谷秀樹
1994年、日本スポーツ企画出版社刊の『ワールドサッカーダイジェスト』編集長に就任。その後、同社の編集局次長を務め、01年に独立。以降、プレミアリーグやチャンピオンズリーグ、情報番組、さらに月平均15本のコラムでも、エッジの利いた発信を続ける。東京・下北沢生まれ。
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