FIFAクラブワールドカップ2025で順調にベスト8まで勝ち上がったレアル・マドリードは、明日5:00に準々決勝ドルトムント戦を迎える。母国スペインのジャーナリストは、新指揮官によって変化を遂げた新生マドリーをどう見ているのか。
文=ハビエル・シジェス(スペイン紙『as』副編集長) 翻訳=江間慎一郎
物事は時に、見かけとは異なるものだ。しかし、現在のレアル・マドリードが見せる兆しには、明るい期待が感じられる。クラブワールドカップでの前進とともに、何よりも注目すべきはサッカー内容の向上であり、これは大会の結果以上に重要な意味を持っている。
限られた時間と特殊な状況の中で、シャビ・アロンソはレアル・マドリードに見事な変革をもたらした。チームは機能し始め、ピッチ上では新監督の理念が明確に表れている。それだけでも、前任のアンチェロッティ体制下で迷走した昨シーズンから一歩抜け出した証といえる。今のチームには、明るい材料が数多く揃っている。
シャビ・アロンソはこれまでに臨んだ4試合で、その手腕が確かなものであることを証明した。勝ち点1を分け合ったグループステージ第1節アル・ヒラル戦(△1-1)、開始早々にラウール・アセンシオが退場した第2節パチューカ戦(◯3-1)は難しい試合だったが、バスク出身指揮官が戦術的に見事な対応を見せて、チームの成長の糧としている。
マドリーを率いるシャビ・アロンソも、これまでと同じシャビ・アロンソのままだった。マドリーは選手の自主性と個人技に任せる“放任型”の監督とともに成功をつかんできたが、前レヴァークーゼン監督はどちらかと言えば“介入型”の監督である。彼はこのわずかな期間でいくつもの決定を下してきたが、そのどれもがマドリーのこれまでの伝統や気質からは一線を画す、革新的なものと言えた。
急性胃腸炎のキリアン・エンバペに代わって下部組織のゴンサロ・ガルシアをスタメンとして登用する。マドリーの歴史でほぼ使われてこなかった3バックをメインシステムとして採用する。アルダ・ギュレルにゲームメイクの責任を背負わせる……。いずれの決定も監督としての才能、知識、何より並々ならぬ胆力があったからこそ下すことができた。マドリーはシャビ・アロンソとともにクラブの文化を変容させつつある。そう記したとしても、間違いではない。
マドリーはこれまで、一度としてスタイルにこだわったことがなかった。唯一こだわってきたのは“勝つ”ことであり、“どう勝つか”はどうでもよかった。これからも勝利至上主義は変わらないだろうが、しかしシャビ・アロンソが率いる彼らは、戦術的根拠を伴う勝利を増やしていくはずだ。
事実として、マドリーのコレクティブなプレーは大きく向上している。とりわけグループステージ第3節ザルツブルク戦(◯3-0)の前半、決勝トーナメント1回戦ユヴェントス戦(◯1-0)の後半のパフォーマンスは素晴らしかった。シャビ・アロンソはレヴァークーゼン時代から愛用してきた1-3-4-1-2(スペインのフォーメーションはGKから表記)をマドリーでも用い、頭脳的かつ組織的なプレーを実現。DF、MF、FWのライン間をしっかりと狭め、攻撃では流動性を増し、守備ではハイプレスを植えつけようとしている。ハイプレスを実行するためにはスプリントを繰り返し行う必要があるが、現時点ではヴィニシウス・ジュニオールを含めて全員がハードワークを見せている。
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シャビ・アロンソは明確なゲームプランを立てて試合に臨むが、それ以上に際立つのは試合中に見せる柔軟性、修正能力だ。テクニカルエリアに立つ彼は、チームの何が機能していて何が機能していないのかを即座に見抜き、修正を施す力がある。試合中にマドリーを別のチームに変えてしまうのだ。
数的不利となったパチューカ戦では1-4-4-1を用い、ゴンサロを左サイドハーフとして守備に奔走させ、フェデリコ・バルベルデを中央に配置して攻守のバランスを整えた。そうしてリードを得ると後半途中からルカ・モドリッチ、ダニ・セバージョスを投入。ポゼッション率を引き上げて、パチューカからボールと攻撃の機会を奪っている。そして、シャビの明敏さが最も表れていたのは、ユヴェントス戦だ。
あの試合の前半、マドリーはケナン・ユルディズにトレント・アレクサンダー=アーノルドとギュレルの間のスペースを突かれ、ユーヴェの縦に速い攻撃を捕まえ切れなかった。劣勢に陥ったシャビ・アロンソは、ボール保持時のシステムを1-4-2-3-1に変更。3バック中央に位置していたオーレリアン・チュアメニを1列上げて攻守のバランスを取り、ポゼッション率を高めると、左サイドに開かせたヴィニシウスを起点としてユーヴェの守備を切り崩した。シャビ・アロンソの試合中の介入と修正が、マドリーを勝利に導いたのである。
マドリーとその選手たちは、シャビ・アロンソが持ち込んだ新たなメソッドをうまく消化しているようだ。新監督はマドリーをチームとして機能させているが、それは歯車となる選手たちに個性と強みを発揮させるためでもある。
両足でパスを出せるディーン・ハイセンは、後方からのビルドアップの全権を担い、まるで“DFのトニ・クロース”のように振る舞う。またギュレルはアンチェロッティ時代の終盤から始まっていたゲームメーカーへのコンバートが継続され、そのプレービジョンと高精度の左足がより生きるボランチとしてプレー。加えて2ボランチのもう一角バルベルデは、すべての枷が外れたような暴れっぷり、ボックス・トゥ・ボックスっぷりを見せ、相手のペナルティエリア内にもより頻繁に侵入するようになった。
チュアメニは状況に応じてDF、MFのラインを行き来して攻守のバランスを取り、ジュード・ベリンガムはより自由に動き回る。そしてトレントとフラン・ガルシアの両ウイングバックは、守備面では不安が残るものの、攻撃においては前者がデイヴィッド・ベッカムさながらのクロスやパスで、後者が疲れ知らずのオーバーラップで猛威を振るう。ラウール・ゴンサレスとカリム・ベンゼマとホセル・マトを足して割ったようなゴンサロは、このチームがまさに必要としていたFWで、ヴィニシウスも不完全ながら調子を上げつつあるなど、ピッチ上の全員が汗と個人の力を輝かせている。
まだ4試合しか戦っていない状況で結論を出すのは時期尚早だろう。とはいえ、彼らのプレーは目に見えて良くなっている。これまでは攻守両面で個人の裁量に任せる部分も多く、現代フットボールの流れから取り残されつつあることは否めなかった(現代では1人が守備をしないだけでも致命的だ)。しかしシャビ・アロンソのマドリーは、チームとして攻守両面でダイナミズムを生み出せる。彼らは今、これまでとは異なる羅針盤を持って進んでいる。
シャビ・アロンソは存在そのものが革命だ。もちろん、マドリーで唯一価値を持つのは“勝つ”ことであり、それだけは永遠に変わらない。しかし、そのことを誰よりも理解しているのも、シャビ・アロンソなのである。