日本から唯一、FIFAクラブワールドカップ2025に参加している浦和レッズは、初戦のリーベル・プレート戦を1-3で落とした。スペインのジャーナリストはこの試合を、そして浦和レッズというチームをどう見たのか。
文=ハビエル・シジェス(スペイン紙『as』副編集長) 翻訳=江間慎一郎
前提として記しておかなければならないことがある。浦和レッズは、現在の日本で“最も強いチーム”ではない。
彼らがFIFAクラブワールドカップ2025に参加しているのは、2022年にAFCチャンピオンズリーグで優勝したためだ。“今、この時だけしかない”フットボールにおいて、3年という月日は長い。
32チームが参加する今大会において、浦和は世界中から視線が集まる存在ではない。だがリーベル・プレートとの初戦、サポーターの熱烈な応援に背中を押された彼らは、とても印象的なプレーを見せている。レアル・マドリードが獲得したアルゼンチンの新たな宝石、フランコ・マスタントゥオノに世界中が注目するなか、浦和は真っ向からリーベルに挑みかかり、彼らを十分に苦しめた。
浦和はリーベルに引けを取っていたわけではない。次節のインテル戦でも、きっといい戦いを見せるだろう。彼らがどこまでたどり着けるかは分からない。しかし少なくともリーベル戦は、決して悲観的になるような内容ではなかった。
(C)Getty Images
浦和がリーベルに敗れたのは、日本のフットボールにいまだはびこっている“風土病”のせいだった。すなわち、ペナルティーエリア内での脆弱な守備である。
リーベルの3得点はいずれもヘディングシュートから決まったが、その原因は浦和の守備組織および集中力の欠如にあった。日本のチームはまるで縮こまってしまうかのように、決まってエリア内の守りが緩くなる。確かに、浦和の両センターバック(ダニーロ・ボザ、マリウス・ホイブラーテン)は日本人ではない。だが問題を解決するのは国籍や選手名ではなく、チームとして長期的に取り組む仕事にほかならない。
浦和の弱点は、押し込まれたときの守備以外にも存在する。1-4-4-2(スペインではフォーメーションをGKから表記する)を使用する彼らは、中盤で守備ブロックを形成する際にサイドの守りが甘く、リーベルにしてみれば“高速道路”を走っていたようなものだった。
浦和にとって、リーベル戦の前半は課題が残る内容だった。しかし後半のプレーはとてもポジティブで、彼らがこれから臨む試合を見届けたいという気にもさせてくれた。リーベル、インテルがいるグループの突破には大きな困難を伴うだろう。それでもリーベル戦の後半に見せたプレーを継続できるならば、浦和はどんな相手にとっても厄介なチームだ。
リーベル戦の後半、浦和はアルゼンチンの雄を食らおうとしていた。彼らは勇敢かつ献身的な一枚岩のチームだった。ハイプレスによってリーベルを圧迫しつつ、速攻からポジショニングの崩れたところを狙う。中央、サイドの両方で機動性、連係力、インテリジェンスを見せつけて、彼らのフットボールがどんな相手にも通用し得ることを示していた。惜しむらくは、最後の局面での判断だ。浦和のプレーは始まりが素晴らしく、しかし終わりが惜しい。マテウス・サヴィオの奮起に期待したいところではあった。
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一方、松尾佑介は素晴らしかった。彼を見ていると心が躍る。初期ポジションは1トップだが、左サイドに流れながら見せるプレーはダイナミズムにあふれ、リーベルの守備組織を混乱に陥れていた。職人技のようなPKキック含め、攻撃のプレーは文句のつけようがない。まさに電光石火という表現がふさわしい選手で、一対一の場面では果敢に勝負を挑み、勝てるだけの速さとテクニックを兼ね備えている。現在27歳と、最盛期はここからだ。その存在は、浦和の試合を見る価値を引き上げている。
リーベル戦での彼のプレーレベルが、浦和サポーターの応援に呼応する水準であったことは間違いない。……そう、たとえこの記事のテーマが浦和のチーム分析であるとしても、サポーターについて触れないわけにはいかない。ゴール裏のスタンドを真っ赤に染め、何があろうとも決して応援を止めないサポーターの姿勢と、試合後そんな彼らに深く感謝をする選手たちの姿は、世界中のフットボールファンの心を打った。
ビジネスの手垢にまみれたフットボール界で、浦和とそのサポーターはこのスポーツにおいて本当に大切なものをあらためて示してくれた。すべてを数量化してしまうような人間が何を言おうとも、「センチメント(感情)の勝利」以上に大きな勝利はないのだ。
本題に戻ろう。現代のフットボール界では、選手たちが国境を越えて実力と金のあるリーグやクラブに集中する。そのためクラブ間の差は代表チームの比ではなくなる。今回のFIFAクラブワールドカップにおいて、浦和は「差をつけられている側」として見られていたが、リーベル戦でそうした見方に疑問を投げかけた。日本のクラブと、伝統に裏打ちされた欧州や南米のクラブの間に距離があるのは当然と言えるが、それを恥じる必要は全くない。浦和の印象はとてもポジティブであり、日本のフットボールの価値を損なうことなどない。
さあ、次はインテル戦だ。浦和は初戦で黒星をつけられたが、どれだけ苦しい状況でも、求められるパフォーマンスの水準を保たなくてはならない。スクデットとビッグイヤーを逃し、直後に指揮官シモーネ・インザーギが退任したインテルは、困難な状況のなかで再起を懸けている。初戦のモンテレイ戦を引き分けで終えた彼らは、全力で勝利を狙ってくるだろう。
だが、浦和にはインテル相手にも競えるだけの力がある。試合から脱落することなく戦い抜く力がある。選手たちはサポーターの応援に報いなければならない。彼らにはそれができるはずだ。