2023シーズンのF1は当初24戦で行われる見通しだったが、新型コロナウイルスの影響で中国GPが開催見送りとなり、全23戦で実施すると発表された。第6戦エミリア・ロマーニャGPを控えた5月17日、現地イモラが洪水で被災したことから、中止とアナウンスされた。代替開催は見通しが立っておらず、直近2シーズンと同様に3年連続での年間22レースが開催される見通しとなっている。
F1第21戦サンパウロGP 概要
大波乱のメキシコGPを経て、さらなる混沌へと突入した順位争い。続くサンパウロGPでは、順位の変動は起きるのか。
相変わらずの強さでメキシコGPを制したマックス・フェルスタッペン。それ以外ではアメリカGPで失格となったルイス・ハミルトンとチャールズ・ルクレールが2位、3位に入り、しっかり挽回。予選を含め2戦連続の力強いパフォーマンスで、順位争いにおいて一歩も引かない姿勢を見せた。
残念な結果となったのは母国GPに臨んだセルジオ・ペレス。スタート直後、ターン1での接触により、リタイアを余儀なくされた。これによって2位以下の順位争いはますます混沌としている。
ドライバーズランキングで現在2位に立つのは依然ペレス(240点)だが、3位ハミルトン(220点)との差はわずか20ポイント。その後を追う4位のカルロス・サインツと5位のフェルナンド・アロンソは183ポイントで並んでいる。さらに6位169ポイントのランド・ノリスと7位チャールズ・ルクレールの差は3ポイント。8位のジョージ・ラッセルも151ポイントと、まだ十分に浮上を狙える。
コンストラクターズランキングでも2位メルセデス(371点)と3位フェラーリ(349点)の差は22ポイント。4位マクラーレン(256点)と5位アストンマーティン(236点)の差は20ポイントと接近している。
次回サンパウロGPはスプリントレースがあるため、獲得できる最大ポイントも増える。まだまだ、順位の変動はありえるだろう。
下位を見ると、予選4位・決勝7位と見事に結果を出したダニエル・リカルドの活躍で、アルファタウリはコンストラクターズ最下位から脱出。ただ、アルファロメオ(16点)とは現在同ポイント、最下位のハース(12点)とは4ポイント差とまだまだ気が抜けない。
上位のウィリアムズ(28点)ともわずか12ポイント差のため、メキシコで不完全燃焼に終わった角田裕毅とともにさらなる上位進出を期待したい。
サンパウロGPの舞台インテルラゴス・サーキットことアウトドローモ・ホセ・カルロス・パーチェは、1940年建造という長い歴史を持つ。改修を重ねた現在のレイアウトではツイスティでテクニカルなセクションに2つのストレートがあり、またアップダウンに富んでいる。
古き良きオールドスクールなサーキットだが、オーバーテイクのチャンスは多く、見る者を楽しませてくれるだろう。ふたつの湖に囲まれた地形のため局地的な天候に左右されることも多く、急な大雨や路面温度の変化など不確定要素がどのようにレースに絡んでくるかにも注目だ。
次戦を含め残り3レースとなった今シーズンのF1。佳境を迎えた順位争いはますます激化している。今週末も目の離せないレースとなるだろう。
ブラジルGP(サンパウロGP)の成り立ち
Getty Images
ブラジル最大の都市・サンパウロに位置するインテルラゴス・サーキット(正式名称はアウトドローモ・ホセ・カルロス・パーチェ)。1930年代にサーキットが建設され、1972年にエマーソン・フィッティパルディがブラジル人初のワールドチャンピオンに輝いたことで、翌年から正式に「ブラジルGP」としてF1カレンダーに組み込まれた。F1開催の大きなキッカケとなったフィッティパルディは、73年・74年と連勝。母国のファンを大いに喜ばせる走りを披露した。
1978年と1981~89年の期間は、別のサーキットで「ブラジルGP」が行われたが、1990年に再びインテルラゴス・サーキットでの開催が復活。91年には、アイルトン・セナが深刻なギアボックスのトラブルを抱えながらも母国での初優勝を飾り、ゴール後に歓喜のあまり泣き叫ぶ無線が印象的なシーンとして語られている。
2004年以降は、シーズン終盤戦にスケジュールが組み込まれたことで、何度もタイトル決定の舞台になった。なかでも劇的な展開となったのが2008年の最終戦となったレースだ。タイトル争いを繰り広げていたハミルトンは5位以上、マッサは優勝した上でハミルトンが6位以下になることがチャンピオン獲得の条件だった。
予選ではポールポジションを獲得し、母国GPで息巻くマッサは序盤からトップを快走するなか、ハミルトンはポイント圏内をキープ。最終ラップを迎えた時点でマッサが1位、ハミルトンが6位。そしてトップでチェッカーフラッグを受けたマッサはチャンピオン獲得を確信し、フェラーリのピット内も歓喜に包まれるなか、雨の降るセクター3では、失速した5位のティモ・グロックをハミルトンがオーバーテイク。その瞬間、タイトルの行方はハミルトンの手に渡り、史上最年少F1ワールドチャンピオン(当時)に輝くという、ドラマチックなレースとなった。
2020年は新型コロナウイルス感染症の流行により開催中止となったが、2021年は名称を「ブラジルGP」から「サンパウロGP」と変えて実施となった。2022年、2023年もサンパウロGPの冠での開催となる。
レース開催日程・DAZN配信予定
第21戦 サンパウロGP / インテルラゴス・サーキット
日時 | 内容 | 解説・実況 |
---|---|---|
11月3日(金)23:30 | フリー走行 | 実況:笹川裕昭 コメンテーター:浅木泰昭 |
11月4日(土)3:00 | 予選 | 実況:笹川裕昭 解説:小倉茂徳 |
11月4日(土)23:00 | スプリントシュートアウト | 解説:田中健一 柴田久仁夫 |
11月5日(日)3:30 | スプリントレース | 実況:笹川裕昭 解説:中野信治 |
11月6日(月)2:00(配信開始1:10) | 決勝 | 実況:サッシャ 解説:中野信治 |
サーキットの特徴(インテルラゴス・サーキット)
Getty Images|DAZN
1周4.309kmと比較的短いこのコースは、フルスロットルで駆け抜けるセクター1とセクター3と、左右の低速コーナーが続くセクター2で構成されている。また、数少ない左回りのサーキットでもある。
DRSが使用できるメインストレートの先にある1・2コーナーは、ブラジルの英雄の名が冠され「エス・ド・セナ」と呼ばれており、そこが最大のオーバーテイクポイントになる。そのためにも全開区間の始まりにあたる12コーナーの立ち上がりを制することが、勝負の大きなキーポイントとなるだろう。
ターン3~4のDRS区間の争いも大きな見どころ。ここではかつてセバスチャン・ベッテル&チャールズ・ルクレールが、フェラーリで同士討ちとなったことも。2021年はタイトルを争うルイス・ハミルトンvsマックス・フェルスタッペンがあわや接触の接近戦を行った。
また、現地サンパウロは急な天候の変化がレース展開を狂わせることもあるため、チームは状況に応じた迅速な対応が求められる。
2022年サンパウロGPの結果
Getty Images
現地インテルラゴスはドライコンディションで路面温度が50度近くとなり、タイヤへの負担が厳しい状況となった。なお、スプリントレース16位の角田裕毅は、マシンのコンポーネントを変更したことによって決勝ではピットレーンスタートとなっている。
タイヤはメルセデス&レッドブルがソフト、フェラーリ勢がミディアムを第1スティントに選んでいる。ピットスタートの角田はミディアムをチョイスした。
レースがブラックアウトとなり、ポールスタートのジョージ・ラッセルがトップでターン1に飛び込む。2番手ルイス・ハミルトン、3番手マックス・フェルスタッペン、4番手セルジオ・ペレスとグリッド順そのままとなった。
するとオープニングラップのターン8で、ケビン・マグヌッセンとダニエル・リカルドが接触し、すぐさまセーフティーカー導入となる。そしてマグヌッセン、リカルドは両者リタイアとなった。
7/71周目よりセーフティーカーエンドとなり、ローリングスタートでレース再開。ターン1の飛び込みでフェルスタッペンがハミルトンを抜きにかかるも、両者が軽く接触しパーツが飛んだ。フェルスタッペンはすぐさまピットインを行っている。ハミルトンは8番手でレース続行となった。後にフェルスタッペンには5秒のタイムペナルティが課されている。
そして7周目のターン7ではチャールズ・ルクレールがランド・ノリスと接触してコースアウト。バリアに軽く当たったものの、最後尾でレース復帰となっている。ノリスにも5秒のタイム加算が発表された。
11/71周目時点でトップはラッセル。以下ペレス、カルロス・サインツ、ノリス、セバスチャン・ベッテル、ハミルトン、ピエール・ガスリーという順番に。ハミルトンは接触によるダメージがほとんどなく、15周目には4番手まで順位を押し上げた。
3番手走行中のサインツは18/71周目にミディアムからソフトにスイッチし、第2スティントに入る。角田も22周目にソフトに変更した。
ラッセルがトップを快走し、23/71周目には2番手ペレスとの差を3秒まで広げる。ペレスの6秒後方で3番手ハミルトンが追うという状況となった。ペレスは24周目にミディアムへとつなぎ、次の25周にはラッセルもそれに合わせてミディアムへと変更している。
29周目の終わりまでソフトで粘ったハミルトンは、ここでようやくピットに。これで上位勢はすべて第2スティントに入り、トップはラッセル。2番手は5秒後方でペレス。そこから3秒差でサインツ、その7秒後ろの4番手でハミルトンはコースに復帰した。
タイヤのデグラデーションが大きい状況でもあり、37/71周目にはサインツがミディアム、ソフトからのミディアムとつなぎ、第3スティントに入った。
メルセデス勢はミディアムの第2スティントでロングランを行い、ラッセルは後方の僚友ハミルトンを意識して最後のスティントにソフトを選んで逃げ切るプランをチーム無線で伝える。
45周目のストレートエンドでハミルトンがペレスを抜き、2番手に浮上。これでメルセデスが1-2となった。
ハミルトンは49/71周目にソフトへと変更。ペレスのアンダーカットを防ぐ目的でピットインを行った。その次の50周目にはラッセルもソフトタイヤにチェンジし、これで上位勢は何かがない限り最後まで走り切る流れとなっている。
トップはラッセルで、2秒後方に2番手サインツ。その5秒後ろに3番手ハミルトン、さらに5秒差で4番手ペレスという順番になった。
52周目、ターン10過ぎでノリスがマシントラブルにより動けず、レースはここでバーチャルセーフティーカーとなった。このタイミングでタイヤ交換をするドライバーも続出。2番手走行中のサインツもソフトの第4スティントに切り替え、ペレスの後方9秒となる4番手でコースに戻った。
すると55周目、バーチャルセーフティーカーからセーフティーカーに切り替わり、これで隊列が一気に詰まる状況となった。
ラップダウンのマシンにはセーフティーカー追い抜きが許されたものの、対象はウィリアムズの2台のみで、角田には追い抜き許可がアナウンスされない事態となる。これで角田はセーフティーカーの状況下でラティフィに抜かれ、ラップダウンのまま最下位となった。
60周目からローリングスタートで、ラッセル、ハミルトン、ペレス、サインツ、ルクレールの順番で再開となった。
ミディアムのペレスはペースに伸び悩み、64周目にはルクレール、65周目にはフェルナンド・アロンソに抜かれて6番手までポジションを落としてしまった。これで1-2がメルセデス、3-4がフェラーリとなる。
優勝争いはラッセルvsハミルトン、事実上メルセデスのマッチレースとなり、ラッセルがハミルトンとの差を1秒離して周回を重ねていく。
結局レースはラッセルがハミルトンをDRS圏内の1秒以内に寄せ付けず71周のフィニッシュチェッカーを受け、キャリア81戦目で待望のF1初優勝を果たした。2位ハミルトンでメルセデスが1-2フィニッシュとなっている。メルセデスにとっては22レース中21戦目で2022年初Vとなった。
3位サインツ、4位ルクレールとフェラーリ勢が続いた。5位アロンソ、6位フェルスタッペン、7位ペレス、8位エステバン・オコン、9位バルテリ・ボッタス、10位ランス・ストロールまでがポイントを手にしている。
角田は結局ラップダウンのままでセーフティーカー追い抜きがアナウンスされなかったことにより、唯一の周回遅れとなる最下位17位完走となった。
2022年第21戦サンパウロGP決勝結果
1/ジョージ・ラッセル/メルセデス
2/ルイス・ハミルトン/メルセデス
3/カルロス・サインツ/フェラーリ
4/シャルル・ルクレール/フェラーリ
5/フェルナンド・アロンソ/アルピーヌ
6/マックス・フェルスタッペン/レッドブル
7/セルジオ・ペレス/レッドブル
8/エステバン・オコン/アルピーヌ
9/バルテリ・ボッタス/アルファロメオ
10/ランス・ストロール/アストンマーティン
11/セバスチャン・ベッテル/アストンマーティン
12/チョウ・グァンユ/アルファロメオ
13/ミック・シューマッハ/ハース
14/ピエール・ガスリー/アルファタウリ
15/アレクサンダー・アルボン/ウィリアムズ
16/ニコラス・ラティフィ/ウィリアムズ
17/角田裕毅/アルファタウリ
-/ランド・ノリス/マクラーレン
-/ケビン・マグヌッセン/ハース
-/ダニエル・リカルド/マクラーレン
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チーム・ドライバー
日程・番組表
レース | フリー走行・予選 | 決勝 | |
---|---|---|---|
第1戦 | バーレーンGP | 3月3日(金) ~4日(土) | 3月5日(日) |
第2戦 | サウジアラビアGP | 3月17日(金) ~18日(土) | 3月19日(日) |
第3戦 | オーストラリアGP | 3月31日(金) ~ 4月1日(土) | 4月2日(日) |
第4戦 | アゼルバイジャンGP | 4月28日(金) ~ 29日(土) | 4月30日(日) |
第5戦 | マイアミGP | 5月5日(金) ~ 6日(土) | 5月7日(日) |
第6戦 | エミリア・ロマーニャGP | 5月19日(金) ~ 20日(土) | 5月21日(日) |
第7戦 | モナコGP | 5月26日(金) ~ 27日(土) | 5月28日(日) |
第8戦 | スペインGP | 6月2日(金) ~ 3日(土) | 6月4日(日) |
第9戦 | カナダGP | 6月16日(金) ~ 17日(土) | 6月18日(日) |
第10戦 | オーストリアGP | 6月30日(金) ~ 7月1日(土) | 7月2日(日) |
第11戦 | イギリスGP | 7月7日(金) ~ 8日(土) | 7月9日(日) |
第12戦 | ハンガリーGP | 7月21日(金) ~ 22日(土) | 7月23日(日) |
第13戦 | ベルギーGP | 7月28日(金) ~ 29日(土) | 7月30日(日) |
第14戦 | オランダGP | 8月25日(金) ~ 26日(土) | 8月27日(日) |
第15戦 | イタリアGP | 9月1日(金) ~ 2日(土) | 9月3日(日) |
第16戦 | シンガポールGP | 9月15日(金) ~ 16日(土) | 9月17日(日) |
第17戦 | 日本GP | 9月22日(金) ~ 23日(土) | 9月24日(日) |
第18戦 | カタールGP | 10月6日(金) ~ 7日(土) | 10月8日(日) |
第19戦 | アメリカGP | 10月20日(金) ~ 21日(土) | 10月22日(日) |
第20戦 | メキシコシティGP | 10月27日(金) ~ 28日(土) | 10月29日(日) |
第21戦 | サンパウロGP | 11月3日(金) ~ 4日(土) | 11月5日(日) |
第22戦 | ラスベガスGP | 11月16日(木) ~ 17日(金) | 11月18日(土) |
第23戦 | アブダビGP | 11月24日(金) ~ 25日(土) | 11月26日(日) |