世界との差を体感した試合となった。
PSGはこの日、川崎フロンターレ戦とは異なる先発メンバーを並べたが、前半のうちにMFパブロ・サラビアとFWキリアン・エンバペの得点によりリードを奪うと、76分にはFWアルノー・カリムエンドの追加点で試合を締めた。敗れはしたが、浦和も防戦一方だったわけではない。ボール支配率こそ譲ったものの、シュート数はPSGの12本を上回る17本。幾度となくボールを奪い、ショートカウンターから決定機を作り出した。
ただ、そこで勝敗を分けた違いとは何なのか。選手たちの声から明らかになったのは「ゴール前のクオリティ」。最後の最後で勝負を譲らない“個人の差”を選手たちは感じていた。
前半に何度か惜しいシーンを迎えたMF松尾佑介は「最後のところで入る気がしないと感じたのは初めてのこと」と悔しさを吐露。「チームというよりも個人のところで最後の局面を守ってくる」と世界トップクラスの守備を体感した。
速さが持ち味の松尾が追いつかれ、止められるシーンもあった。松尾は「（PSGの選手はスピードの質が）ちょっと重いですね。速くて、最後の最後でバランスを崩されてシュートを打たせてくれない、キープさせてくれなかった」と振り返る。中盤で先発出場したMF伊藤敦樹も「攻守においてのゴール前のクオリティ。特に守備時のシュート時のシュートブロック、パスを出す時に足が出てくる感覚は、Jリーグとは全然違う」と続いた。
悔しい敗戦だったことは間違いない。それでも、この試合は選手たちにとって一様に経験値として蓄積されている。伊藤も「こういう相手にでも自分の良さは出せた」と一定の手応えを口にした。
後半から入ったDF馬渡和彰は「チャレンジの姿勢で45分間を戦おうと思っていた。普段はJリーグだったらいかないようなシーンでもトライしに行った。自分の現在地を知りたかった。自分のアジリティー、海外の選手のアジリティー、スピード感などそういうものを全部確かめたかったので出し切った」と話す。
馬渡は後半、FWリオネル・メッシからボールを奪おうとするも上手くかわされ、置き去りにされてしまった。そのシーンについて本人も「誘われました（笑）。タッチが細かくて、体の入れ方など、そういうところも含めて上手かったです。最後にボールを触りに行った時も、しっかりボールと僕の間に右足を入れられてブロックされて…。僕は触れると思ったんですけど」と苦笑いしたが、世界トップレベルのプレーを体感することもまた経験だ。
かつて、リーグアンでPSGと対戦経験のあるDF酒井宏樹は「相手のコンディションはあまり良くなかった。僕らはシーズン中なので、どういう試合になるかなと思っていましたけど、思ったよりしっかり相手がやってくれた」と話した。
酒井は世界でも有数のスピードと突破力を誇るエンバペとも対峙し、試合中には何度かボールを奪った一方で、待ち構えながらも突破されてしまうシーンもあった。酒井は「やはり率直に悔しいです。2～3回しっかりと対応した中で抜かれたので、DFにとってその回数は致命的」と表現しながら、この経験に大きな価値があると語った。
「こういう悔しさを未だに感じられるのは、自分がまだ選手として全力を尽くせている状況だと思います。そういうのを再確認できたことはすごく嬉しかった」
この日、浦和のベンチ入りしたメンバーはGKを含めほぼ全員が出場。それぞれが何らかの経験を積んだはずだ。これらの経験を残りのリーグ戦やカップ戦に生かしていきたい。
中断明け初戦は奇しくも同じくPSGと戦い、世界との差を体感した川崎Fが相手。この試合で感じたことを生かすには、これ以上の場もそうはないはずだ。
文・大川佑
現『DAZN News』日本語版編集長。10代を英国で過ごした影響からサッカーの仕事を志す。帰国後、某サッカーサイトの立ち上げや様々な企画に携わったのち、『Goal.com』日本語版編集長（2016～2020年）に。
関連記事
● 新国立最多6万4922人が詰めかけたPSGの日本ツアー初戦。ドンナルンマは、「多くの観客の前でとても美しい試合ができて嬉しかった」と振り返る | Jリーグ
DAZNについて
DAZNなら好きなスポーツをいつでも、どこでもライブ中継&見逃し配信！今すぐ下の記事をチェックしよう。
● 【番組表】直近の注目コンテンツは？
● 【お得】DAZNの料金・割引プランは？